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四日目-14



考えなきゃいけない事は山ほどある。

唯に会って問い質すのが一番早いのだろうけど、まずは自分たちが置かれた状況を明確にしておくのが先決だと思った。

もう一度この世界の事を考えてみる。


隣町には水仙寺晴香という女性が居た。

僕らには隣町の記憶なんてそんなに持ち合わせてはいなかった。

普通ならまともに町を創り上げることすら不可能だっただろう。なにせよく知らない町。

けれど彼女という存在が僕らに町の情景を映像として見せ、僕らは町の映像を一部とはいえ共有してしまった。

町を去ったと言っていたが、彼女は僕らの見知らぬところでこの世界から姿を消した…んだと思う。

その現象で同時に不安定な世界となり、町のビジョンは揺らめいた。

僕らは映像を共有したとはいえ、その一角を見たに過ぎない存在だったから。あんな短時間で刷り込めるほど僕らは町をしっかり見てはいない。

彼女が町から去っただけならば、町が急激に不安定な様を見せる事はなかっただろう。

他にはあの町に住んでいたというまみこちゃんという子。

あの子はまだ幼かった。

それだけに記憶が不十分だったのだろう。

鮮明に残せるほど町の情景を把握していなかったんだ。

思えば取り乱していた僕らを尻目に、あの子だけは正常だった。

唯の駄菓子屋の件と同じ理屈で、まみこちゃんの目だけは町に変化はなかったんだと思える。


この世界は記憶の連鎖。

人と人が映像を共有していくことによって、どんどん世界が構築されていく仕組み。

他者が一度見ればそれはどんな形であれ映像として頭に焼き付き、固定化されてゆく。

逆に僕らのように世界を多く知らない人間ばかりだったのだとしたら、限られた範囲の小さな世界となるのだろう。

記憶を持った人間が現れ町を作ってくれない限り、その先には進めないということなのだ。

例えば海を見たという記憶はあっても、そこに至るまでの道程が分からなければ辿り着くことは出来ない。

過程をすっ飛ばしてその先に進めるのなら、あの住居の奥に潜む『無』という闇なんて存在しないだろう。

何故なら意思の反映があるのなら、都合の良い様にどこかとどこかで道が繋がっていなければならないからだ。

しかしそれがない。

現実でないくせに融通が利かないリアリティのある世界。

この法則も唯自身が望んだからなのだろうか?


水仙寺さんは何かの理由で僕らの知らぬ場所でこの世界から消えた。原因はまったくもって不明。

まみこちゃんは病気?で先輩の目の前で消えた。

そして山下さんは僕らの目の前で光となって消えた。

消えた=亡くなったと仮定するのは早計だけど、肉体は当然この世界には残らない。

彼らは現実世界に回帰していったのか?

水仙寺さんは僕らには何が起き、そして居なくなってしまったのかの理由が分からない。何か得体の知れないことが身に降りかかったのか…。

単純に町を離れた事による影響だったのかもしれないが…。

ただまみこちゃんと山下さんは共に変調を訴えていた。

いくら精神体だとしても身体に不調が起きるなんてのは考えられない。

僕らは多分現実世界で眠っている状態なのだろうと考える。それしか説明が付かないからだ。

ならば何故眠っているはずの人間が変調を訴える?

まみこちゃんだけは明らかに病気による症状に似ていた。

考えたくはないけれど、まみこちゃんは…。

山下さんは自分の体が限界だと言っていた。

変調を自分で認識し、そして言った通りこの世界から消えた。

山下さんの最期は…衰弱しきった様子だった。

どちらにしてもこの二人は現実世界の肉体に何かが起きたと仮定するしかないんだ。

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