四日目-12
どうしても解けないパズル。
彼女自身この事態を把握していないなら僕たちはもうお手上げなのかもしれない。
けれど間違いなくこの町の事を一番知っているのも唯だけだ。
この世界に最初に降り立った人物は彼女で間違いはない。
だからこそ唯がこの世界の創造主として仮定する。
コンビニの弁当。唯は『毎日補充される』と言った。翌日、確かにその通りに日付が変わっている弁当が並べられていた。
それも毎日との事だ。
つまり唯が考えたことが反映されたということになる。
それが意識したものなのか、はたまた無意識から生まれたものなのか。
事実弁当だけで飲料なんかはそのままの状態だった。
彼女が僕らに言った『弁当』だけが補充されていたのだ。
けど僕らの場合は勝手違う。お互いに映像として共有しなければ見る事も叶わない。
しかし唯の場合でも例外があって、どうやら有機物だけしか生み出す事が出来ないようにも思えた。
空き地の件では唯は一人だけ昔の記憶のまま。
けど現実ではそこに不動産屋が建っている。今の町並みを知っている僕はそれが当たり前のことだと、無意識にその場所に建物の映像を創り上げた。
しかしその映像は唯にも見えて、彼女はそれが『あるはずのない事』だと否定していたはずなのに消えることがなかった。
その時点で僕らと同じように映像を共有してしまったんだろう。
つまり僕たちと同じように自分でも融通の利かない部分もあるという事だ。
これは何か法則のようなものがあるのかもしれない。
彼女でも一度具現化してしまったものを都合良く消す事は出来ないらしい。
無意識にでも『当たり前』と思っていたものが反映されていたのなら、どうしてテレビなんかも映らなかったんだろうと今では考えられる。
最初は僕らも映って当たり前だと決め付けていたはず。それなのにテレビは映らなかった。否定はしていないのに…だ。
つまり他者の意識が介入するものは唯にだって想像では生み出せないのだと思う。
何故ならここには他に人が居ない。操作する側の人間が居ないのだ。
例え楽曲だったとしても正確に覚えてないないメロディなんかを流せるはずもない。
一番安易な考え方をするならば、唯自身がテレビというものを不要と考えていれば分かりやすい。
それならばテレビというものはただの箱になってしまうし、映らないのも納得が行く。
僕がプレイヤーで音楽を流せたのは、自分でメロディや歌詞を正確に記憶していたから流すことが出来たんだろうと今なら思う。
僕自身の記憶に残っているものなら、プレイヤーを通じて他人にも聴かせる事は可能…という事だ。
この世界では唯の意思だけは反映されている…すなわち唯が作った世界だと認識する事が出来るのだ。
僕らには出来ないことが、彼女には出来る。
制限があるとはいえ、記憶の共有以外で物を生み出せるのは厚川唯の意識だけ。
それが世界を構築した時にルールとして成り立ったかは不明ではあるが。
「仮に…だ。もしそれが本当だとして、あいつは何の目的でこの世界を創ったんだ?」
「そんなの、僕にだって分かりませんよ…」
「確かにあいつは変わったやつだ。掴み所もないし、どこか余所余所しい」
「けど…僕は唯が悪い人間だとは思えないんです」
まだそう言い切れるほど話し合った訳じゃない。
けど唯は…少なくとも僕らに悪意を持ってこの世界に閉じ込めたんじゃないと思ってる。




