四日目-11
(…疑いたくない。けど…今の僕にはそうとしか思えないんだ)
フェンスを掴む指に力がこもった。
「もう一つだけ分かった事…。それはこの世界を創ったであろう人物の事…です」
「人物…だと?聞かせてくれ!」
「これはまだ僕の想像の域を抜け出ていません。だから本当に不確定なことです。この世界から抜け出るための鍵…」
息を飲む音が聴こえる。
聞く側の先輩も緊張しているんだろう。
僕だって今喉がカラカラだ。
「それは唯が握っているんだと僕は思ってます」
「厚川唯だって!?あいつがどうして…」
予想通りの反応。
推測だけで唯を疑うなんてしたくはなかった。
けれどもうそんな事を言っていられる状況でもない。
「唯は時折おかしな言動を繰り返していました。この前のだってそうだ、先輩も覚えているでしょう。コンビニ弁当の件、思い出してください」
「コンビニ?確かあいつは…弁当が毎日補充されてるって言ってたな」
「ええ、唯は『毎日』って言葉を使ってしました。あの時は気にもしませんでしたけど、今思えばおかしな言葉なんですよ」
「あいつは事前に補充されるって知っていたって事なんだな!?」
「そうですね。けどそれよりも注目しなきゃいけないのは、僕らはあの時この世界に来て何日経過していましたか?」
「俺たちはあの時ここに迷い込んでまだ二日目だったな。あ…そういう事か!」
「そういう事…です。てっきり唯も僕らと同じだと思っていました。多分唯は…僕らが来る以前からここに居る…」
あの時は有耶無耶になったし、僕も気にも留めなかった。
けれどやはりあの言葉は不自然でしかない。
出逢ったときの様子もどこか不自然だった。僕を見たとき信じられないといった顔を今でも思い出す。
あれは多分自分以外の他人が居たことに対する驚きだったんじゃないかと僕は思えた。
「って事は…あいつ、一人だけ俺たちとは別の時間帯にここに来たって事だよな?」
「ええ、僕もまさかとは思いました。けどあの話がそう言う事だと仮定して進めるなら、どうして唯だけがそんな前からここに居られたんでしょうか?」
「俺たちは全員が同じ三日前の早朝にここに連れてこられたはず。つまり厚川だけもっと以前からここに居た。それはあいつがこの世界を創った張本人だからだってのか!?」
「察しがいいですね。そうなのかもしれない…けれど不可解な部分も多いんです。唯はこの世界の事、それに法則について未だに知らないことが多い。それに彼女に出会ったとき、僕を見て本当に驚いていた…あれは演技なんかじゃなく本気でありえないことと思っていたはず。だってずっと一人だった世界にいきなり人が現れた…だから怯えた」
「つまり彼女からしてみれば、俺たちがこの世界に来たことが異常だってのか…?」
「そういう事だったんだと思います。だから分からない…ベースとなる世界を創ったのは間違いなく唯自身。けどどうやって世界を創り上げたのかは不明。しかも僕らを呼んだのも彼女じゃない。ひょっとしてその事実すら本人も気付いていないんじゃないでしょうか。…じゃあ一体僕らはどうしてここに来てしまったんだ」




