四日目-10
「ああ…俺は隣だから何度も見ているし、なんとなく部屋の配置は分かる。けど明らかに物が少ない」
先輩は素直に認めた。
サッカー部は滅多に掃除もしていない部室なのに、綺麗すぎるらしい。
目に付くものでもボールやコーンくらいしか確認出来ない。散らかっていて当然なのに注意して見れば明らかに不自然さが際立つ。
僕は籠に入ってるボールを一つ掴むと、先輩に向けて投げた。
「おっと…」
「ボールも新品のように綺麗…ですよね」
「ああ。使い込まれた形跡もない。まるで新品同様だよこれじゃ」
先輩はボールをバウンドさせると誰も居ないグラウンドに向けてシュートを放った。
「…っ」
「大丈夫ですか!?」
蹴った瞬間いきなりわき腹を押えて蹲る先輩。
駆け寄ろうとした僕に大丈夫と知らせるために手のひらをかざす。
「心配ない」
「そう…ですか」
「寝てない身体で慣れない事したからだな」
些細な事で心配かけまいと笑顔でそう言った。
けれど心なしか顔色が優れないようにも見えた。
僕は部室のドアを閉め同じ場所に再び座る。
「浩人のおかげでこの世界の事は分かった。それでこれからどうしたらいい」
「…どうしたら…か」
「他に気付いた事はないのか?こんな馬鹿げた事実に気付けたお前だ、そこから見えてくるものが他にもあるんじゃないか?」
確かに僕はもう一つ気付いた事がある。
けどそれはまだ推測だけで確証を得る事が怖かった。
…それは人を疑わなくてはならない事実だから。
「先輩、少し歩きませんか?」
「あ?ああ構わないが」
僕は屋上に行こうと伝え、校舎に入った。
静まり返った校舎内。
休日の学校は似たような雰囲気だったが、やはりそれとは違った不気味な静けさ。
僕ら二人の足音だけが妙に廊下中に響き渡る。
階段をゆっくり上り、そして屋上への扉を開いた。
風の抵抗もなくすんなりと開く鋼鉄製の扉。
そこには紛い物の青空が広がっていた。
僕はフェンス際まで歩くと金網を掴み町の風景を眺めた。
「浩人?」
僕の様子がおかしいと感じているのだろうか、先輩は不安げに声をかけた。
背中越しでもそれが分かる。




