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四日目-8




この世界は作られた存在。

僕たちは何かが原因でこの世界にへと誘われた。

そこの部分はまだ僕にもわからない。

けれど、この世界で起きていた幾つものおかしな現象。

それが記憶によるものだと推測するなら全て説明が付く。


「もっと具体的に言うなら幽体離脱みたいな感じなのかもしれません」


「夢じゃなく、幽体離脱か。夢は眠っていてほとんどが曖昧だが、幽体離脱と言うことならこうやって意識があるから全部が全部覚えてられるし、記憶として残るってことなのか?」


「多分…意識はハッキリとしてますし、何より僕らは痛みや味も覚えている」


痛みは精神と同一ってのを本で読んだ事があった。肉体と精神は繋がっている。心の病気で身体に病が出るとも言われているくらいだし。

味覚なんかも僕らは『味』というものを脳が記憶している。

ここで食べたものは全部僕らの記憶から味覚が引き出されただけで、実際には食べてなんていないんだ。

気分が満たされていただけで、食べても食べても満たされてなんてない。

これは単純に毎日の習慣によるもので、この時間だからもう昼食だ、食べないと。

お腹に物を入れたから満足だ、と。

僕らはずっと『そういった気分』に浸っていただけだ。

思い起こしてみればこの現象以来、満腹感というものを体験していなかった。


「僕らが食べたものは一度は口にしたことのあるものばかり。だからそれを脳が覚えていたんでしょう、味覚として…ね」


「……………」


「僕だってこんなこと信じたくはない。けど、もうそうとしか考えられないんです」


「だったら記憶の世界ってのはどうなんだ?確かに今まで色々おかしなことがあった。それはもう理屈では説明しきれないものばかりだ。それと今やった実験のようなものには何の意味があったんだ?」


「それは僕が先に先輩のロッカーを開けましたよね?そして次に先輩が自分で開けた」


「ああ…」


「先に開けた僕…先輩のロッカーの中には何が入っていたと思いますか?」


「それは…さっきお前も見たように同じ私物が入っていたんじゃないのか?それ以外に考えようなんてないだろ」


「いえ、違ったんですよ。僕の予想していた通り、先輩のロッカーの中身は空っぽだったんです…」


「何だと!?そんな馬鹿な、だって実際に今見たばかりだろう!?」


「あのロッカーの中身を僕は一度も見たことがなかった。…一度でも先輩と一緒に見ていたのなら中身は入っていたでしょうね」


「……………」


「開けたのが『先輩』だから中身があったんですよ。自分のロッカーなだけに『こういうものが入っていて当たり前』だとか、記憶と映像が残っている。僕には例え中身が入っていると知らされていても、その中身がどういうものか知らなかった…それに僕はその中身の映像が脳に記憶されていない。だから空っぽだった」


「じゃあ今は!?今ならどうなるんだ?」


「僕は先輩の記憶を通してその映像を見て、僕自身が記憶として蓄積したはずです。だから今僕が開けてもさっき見たものと同じ物が入っているはず。あの時点で僕らは同じ映像を記憶として『共有』したんですよ。先輩、思い出してください。初日の教室の私物の件を」


「あ…まさかあれも!そんな法則があったってのか…」


「そういうことだったんだと思います。だから覚えている…お互い記憶しているものだけしか出てこなかった。他の人の私物…ましてや学校の物なんて見ていなきゃ…記憶に残っていないのだから出てくるはずがなかったんだ」


語れば語るほど見えてくる全貌。記憶の世界。


「水仙寺さんのとき…あの時町が揺らいでいたのも、きっと水仙寺さんがあの町かこの世界から消えたってことなんでしょう…。かろうじて残っていたのはあの人が見せてくれた町の映像を僕らが共有した事実と、幼いまみこちゃんが残した記憶…」


「なんてことだ…」


「この世界が正常じゃないってことは山下さんの件でもすでに明白ですし。現実の肉体じゃないからあの人は歩く事が出来た。最初から歩けなかった訳じゃない、歩いていたときの感覚が残っていたから歩けたんじゃないかって。風が吹かない…いや、空気がないように感じるのもこの世界では呼吸が必要ないし『見えない』からです。空気は映像として作り出せないし、見えないものを生み出す事が出来ない」


先輩は絶句して言葉を失った。


「僕らがいるこの世界は…やはり偽物で紛い物だったんですよ…」

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