四日目-7
待たせて結構な時間が経ったのだろう。先輩が激しくドアを叩く。
「浩人!もういいだろ、さっさと説明…って、お前どうしたんだ!」
ようやく部室から出てきた僕の顔色を見たのか、心配そうに先輩が駆け寄ってくる。
フラフラとした足取りだってのは自分でよく分かっている。
脱力とはこういう事を言うのだろうと、僕はそんなくだらない事を考えていた。
「…すみません。先輩…僕と一緒に部室に入って貰えますか?」
「そりゃそんなの構わないけど、お前大丈夫なのか?顔色が悪いぞ」
「大丈夫…です。でもこれだけはハッキリさせないと…」
「分かったよ。お前がそう言うなら。入ろう」
「はい…」
僕は先輩を引き連れ、再び部室の中へ。
「先輩、今度は自分で自分のロッカーを開けて見せてください。それで全てがハッキリとします」
「ロッカーね。本当にこんなもの開いただけでこの町の異変が分かるってのか…?」
「ええ、間違いなくそれで全てが分かります。それで全ての答えが…」
僕の雰囲気を感じ取ったのだろうか。先輩の顔も少しだけ強張ったものに変化する。
そう、これで不可解だと思っていたこの世界の全貌が暴かれる。
「じゃあ…開けるぞ」
「はい、お願いします」
先輩はロッカーの取っ手に手を伸ばす。
そしてその扉を、開いた――
「何だ…」
中身を見た先輩の口からは唖然とした声。
それは緊張感からは掛け離れた気の抜けた声。
「おい浩人!何が全て分かるって言うんだ?こんなもの、本当に俺の私物があるだけじゃないか。そんな神妙な顔するから何が出てくるのかと思ったら…」
ロッカーの中身。そこには確かに先輩の私物であろう、陸上用のシューズとユニフォームなどが数点入っていた。
小奇麗に折り畳まれ清潔感さえ感じられる。それは何の変哲もない。
おかしなものは何もないし、先輩には変わった事もないように思えるだろう。
しかし僕は違っていた。
やはり推測は間違っていなかったのだ。
僕は絶句して言葉を出せなかった。
力が抜けたのか、目眩がしたかのように背後のロッカーに背中をぶつけてしまう。
心のどこかでずっと認めたくなかった。否定していた。
どれだけ不可思議なことがあっても深く考えないようにして心を保っていた。
あるわけない。きっと何か裏があるだけなのだと。
正直勘違いであって欲しい。そう願っていたけど現実は残酷だ。
けどこの現状を目の当たりにしてしまったら、もう認めるしかない…。
「お…おい浩人!!しっかりしろ!」
目眩がして倒れこみそうになる体を先輩が支えてくれる。
「すみません…」
「大丈夫なのか?あんまり無理するな」
「ええ、でも…やっぱり僕の推測は当たっていました」
「俺にはサッパリ分からないよ。説明…してくれるか?」
「はい…全部話します」
僕たちは一度部室から出て、そのまま部室前で座り込んだ。
「僕たちの今居るこの町…いや、この世界はやはり現実のものじゃなかったんですよ…」
「あんなもので確証を得たってのか?でも現実じゃないって…じゃあこれは本当に全部夢だとでも?」
「夢ともまた違うと思います。これは…記憶だけで作られた世界…」
「記憶…?なんだそれ、じゃあ今ここに居る俺たちは何だって言うんだ?」
「正確には『僕たちの記憶だけで創られた世界』。僕たちは多分、精神だけがここに居るようなものだと、僕はそう解釈してます」
僕は推測した全てを先輩に話した。




