四日目-6
「そうですか。なら僕は先輩の陸上部の部室に行ってみます。先輩も付いて来てください」
「分かった、行こう」
僕が先導するようにして、部室が並ぶ校舎の東側へと向かう。
そしてすぐに部室煉に辿り着く。
陸上部の部室前。その扉の前で僕は足を止めて先輩に向き直った。
「先輩のロッカーはどこでしょう?」
「左側の奥から三番目だ。名札は付いていないが、間違いなくそこだ」
「そうですか、ありがとうございます。あ、先輩はここに居てください。僕が出てくるまで決して入らないで」
「うん?ああ…なんだか良く分からんが了解した」
僕の意図が分からない先輩は生返事ながらも了承してくれる。
後は…確かめるのみだ。
僕は一つ唾を飲み込み、部室の中へと足を踏み入れる。
「浩人…」
「…じゃあ行ってきます」
僕のただならぬ雰囲気に先輩も不安そうな顔をしている。
けど今の僕には取り繕う余裕すらないのだ。
正直、怖い。
怖くてたまらない。
勘違いならそうであって欲しいと思える自分もいる。
けど真実がこれで見えてくるのならば…逃げるわけには行かない。
中に入り扉を閉める。
運動部の部室。
本当なら汗なんかの臭いが立ちこめていても不思議じゃない。
けどここにはそんなものは存在しなかった。
僕は内側から鍵を掛ける。
今だけはこの部屋に先輩を入れるわけにはいかない。これは一度きりしか試せない事なのだから。
光が射しにくい作りなためか中は薄暗かった。
それが余計に僕の不安感を煽る。
「落ち着け…落ち着け…」
震える手を必死で抑え込みながら、僕は奥から三番目のロッカーの前に立つ。
ネームプレートを差し込む場所には何も入っていない。先輩が言ったとおり名前は書いていなかった。
僕は深呼吸をする。
一回、二回。三回目でようやく決意が固まった。
「ふぅ…はぁ…ふぅ~…」
僕は息を止め、目を大きく見開いて先輩のロッカーの扉を開いた。




