四日目-2
どこからどこまでが現実なのか。
知りたくもあり知りたくないのが正直なところ。
僕らは無意識に恐怖していた。
気付かないフリをしていれば、そんな感覚に囚われる事もない。
人って逃避をするときはみんな自分に都合の良い事ばかりを考えてしまうものなんだ。
山下さんはヒントとやらを残してくれた。
灯台下暗し。
確かに僕らは知らない人の家なんかに今まで上がりこんだ事がなかった。
それはまだ僕らがここが現実だと思い込んでいたから。
いくら人が居なくなったからとはいえ、見知らぬ家に土足で上がりこむような真似が出来なかったんだ。
まだ人が戻ってくる。だからさすがに他人の家には入れない。
都合の良い解釈。
現実を否定出来なかった僕らだからこそ、事実に気付けなかったんだ。
こんな身近に、常識を覆すようなモノが潜んでいた事に…。
「先輩、僕はこれをどう表現していいのか…分かりません」
「俺だって同じだよ。何がどうなっているんだ」
僕らはすでに近くの民家に上がりこんでいた。
正確には庭先まで、だ。
その体は玄関口で固まったまま。
それ以上先を見ることも、足を進ませることも出来なかった。
「こんな…こんな近くに現実を否定出来てしまうようなものがあったなんて…」
「山下さんはこれを俺たちに伝えてくれたのか。しかし…何て気味の悪い光景だよ…」
目の前に広がる黒。
それは色で表現すればいいのか、はたまた闇と言い表してしまって良いのか。
僕らがその眼で視ているものは、何もないただの『無』としか言い様がないものだった。
一面に広がる闇。
玄関を開き中に入ると、それはすでに足下から伸びているのだ。
先には何もない。
一寸の闇。
「何もない空間。これが意味するものって…」
「気を付けろよ浩人。落ちたら…これはヤバイ。見ているだけで吸い込まれちまいそうな闇だ…足を踏み外したら確実に死んじまう」
「ええ、分かってます。ただ…何でこんなものが家の中に」
「山下さんの言い方からすると、多分他所の家も同じってことなんだろう。俺たちが知っている利用出来そうな施設だけはちゃんと中身が存在している…不可解すぎてもう俺には何が何だか分からない」
そのまま見ていると本当にその闇に吸い込まれてしまいそうで危険を感じ、僕らはそっと玄関の扉を閉めた。
念のために他の家も見て回ったが、先輩が言ったようにやはり同じ闇が広がっていただけだった。
こんなにも不可解で気味の悪いものが目と鼻の先に広がっていた事を知ると、僕は寒気を感じ鳥肌が立ってしまった。
家の外観だけはハリボテのようなもので中身は空っぽ。
それはまるで『闇』を隠すようにしていたんじゃないかとも思えてくる。
僕らは知らないうちに映画の撮影に混じってしまったかのよう。
作られた家。作られた町。作られた世界。
誰が?一体何のために?
現実的に考えるなと頭では思っていても、どうしてもそんな疑問だけが浮かんでしまう。
この町は一部の建物を除いて見かけだけ真似ただけに過ぎない。
僕らは重い空気を引きずったまま学校に足を運んでいた。




