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四日目-1
午前三時。
僕らは先輩の家に戻っていた。
お互い一言も会話をしないまま、ただ時間だけが過ぎている。
電気は消していない。ただお互い両側の壁に背を付けたまま座っている。
何を話せばいいのかそんな言葉が思い浮かばない。
話す気力も正直湧かない。
ただ、山下さんが居なくなってしまったという現実。
僕らはその事実に打ちひしがれていた。
午前七時。
気付かないうちに眠っていたのだろう、朝陽が眩しくて目が覚めた。
ふと顔を正面へと向けると、同じように先輩も眠っていた。
僕は顔を洗いに洗面所へと向かう。
そこで何度も顔を水で流し、気合を入れる。
このままじゃ駄目だ。
僕らがこのまま沈んでいても何も変わらない。
悲しい事を忘れるなんて出来ない。けれど現実と向き合うって決めたんだ。
僕は先輩を起こす。
目の下にクマを作り疲れきった風貌だけど、今は躊躇ってなんていられない。
「先輩、悲しいのは僕だって同じです。けど…山下さんの意思を無駄にしないためにも、頑張りましょう。…このおかしな世界から抜け出すために」
「…ああ、分かってる」
か細い声ではあるが先輩はしっかりとその言葉を口にしてくれた。
先輩はよろよろと覚束ない足取りだったが、身支度をするために洗面所へと歩いて行った。




