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三日目-21




山下さんの自宅に着くと、僕は呼吸を整える暇もなく扉を叩く。

扉には夕方出てきた時には掛かっていなかった鍵が掛かっていた。


「山下さん!山下さん!居るなら返事してください!」


「おい浩人何やってんだよ!山下さんならこの時間寝てるに決まってるだろう!っ…」


先輩が強引に肩を掴んで僕を引き剥がそうとするが、僕はそれを振り払いすぐに庭へと回る。


「山下さん!!」


庭の窓は鍵が掛けられていなかった。

僕は戸を開けるとすぐに山下さんの寝室へ入る。

明かりは灯っていないためか室内は薄暗かった。


「山…下さん…」


闇の中目を凝らすとそこには布団で眠る山下さんの姿があった。

僕らに気付いた様子もない。

額からは脂汗のようなものが浮き出ている。

良かった…まだ無事だ。


「浩人!お前おかしいぞ!幾ら何でもこんな夜中に…」


「先輩、静かに…」


山下さんは確かにここに居てくれた。

けど様子は明らかにおかしい。

これだけ枕元で会話しているというのに気付いた素振りがないんだ。


「どうしたんだよ?山下さん…眠ってるのか?」


「…山下さん、目を…目を開けてください!」


体を揺すろうとしたが、少しだけ呻き声のようなものを上げる。

意識はまだある!


「山下さん、しっかりしてください!」


「おい浩人。これって…」


「ええ、そうですよ!まみこちゃんと同じなんだ!山下さんは何かの病気なんです!このままじゃ…」


「そんな…そんなのって…嘘だろ!?」


僕は辛そうな山下さんの様子を見て、体を揺するのを止めた。

けどどうすればいい?

やっぱりあの時僕に心配かけまいと誤魔化していたんだ。


「…ん」


「おい、山下さんが!」


微かに動く唇。

山下さんは意識を取り戻したのか、少しだけ目を開いた。


「僕です!浩人ですよ!分かりますか!?先輩も…先輩も居ます!」


「…その声は…浩人…君か」


山下さんは僕らを見ない。体を動かせないのか天井を見上げたままだ。

僕はすぐに灯りを点けた。


「そうです、僕ですよ!大丈夫なんですか…!?」


「何故…ここに来た…」


「…だって山下さんの様子がおかしかったから」


「君は…本当に目利きの才能が…あるようじゃ…の」


擦れた弱々しい声。

昼間までとは打って変わり、息も絶え絶えのような気さえする。


「そんな事はどうでもいいんです。しっかりしてください!僕らに…僕らには何が出来ますか!?」


「…もう手遅れじゃよ。自分の体の事は…自分でよく…分かる」


「何を言ってんだ!アンタ…今日は普通に元気だったじゃないか!何でそんないきなり…」


黙っていた先輩が堪えきれずに身を乗り出してきた。


「私にだって…分からんよ。たが…今ではもう…動く事もままならん…」


「まさか…山下さん、僕らの事が見えてない…んですか?」


「何だと!?」


先輩が顔を覗き込んでいても、山下さんの視線は変わらない。

明後日の方向を見据えたままだ。

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