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三日目-20


「浩人?」


「すいません、少し考え事を…」


「ならいいが、いきなり黙り込むからどうしちまったのかと」


「大丈夫です。ちょっと引っかかる事が浮かんだので」


「何かヒントでも見つかったのか!?」


「いえ…多分僕の気のせい…だと思います。お騒がせしてすみません」


今はまだ確証もない。

だから先輩には言わない事にした。

唯は…やはり何か知っているのか?


「人が人為的にやってると説明が付く事も多いけど、まみこちゃんの件だけは説明が付きません。僕はそこが少し引っかかります」


「まみこちゃんは実はロボットか何かで、俺たちをこうやって陥れるために送り込まれたって線はどうだ?」


「はは…例えそうだったとしても、存在自体が消えるなんて事は不可能ですし、さすがにそれは…」


「無理…か?くっそ、無理矢理こじつけるには不可能な話か…」


実際の現場を見た先輩しか分からない事だけれど、現実離れしたものは多分先輩は気付いていない。

空に浮かぶ雲の事、吹き抜けない止まった風の事。

隣町の件は町全体に不思議な現象は起こったけれど、僕らが歩くための地面だけはそれがなかった。

これは現実的に考える事は可能だ。

テレビが映らない、電波がない。これらも同様に操作する側の人間が居ないから僕らが使えないとも言える。

けど、最初に先輩に言ったように不思議な出来事でも無意味な事だらけで、肝心の意図が読み取れない。


「山下さんの事だって現実的にはありえない話ですよ」


「それなんだが、やっぱりあの人が嘘を吐いている可能性は…?」


「僕は今日山下さんを自宅に送って、そこで話をしたんです。けど、とてもじゃないけど嘘を吐いている様子はなかったです」


「…そうか。お前がそう見えたのなら、間違いはないんだろうな」


「僕は…山下さんを信じます」


先輩が持ってる山下さんへの疑念はまだ晴れていないんだろう。

僕だって未だに信じられない。けど、あの時話してくれた山下さんの顔に嘘は見えなかった。

先輩にも信じて貰いたいけど、僕にだってあの人の事を証明するだけのものを持ち合わせてなんていない。


「ただ、そういえば僕が家を出るとき何かおかしな事を言ってました」


「…どんな事だ?」


「何があっても強く行きなさいって。あれってどういう事だったんだろう…思い詰めたような顔もしていたし」


「あの人は…俺たちを騙してるんじゃなくて何かを知っている…そう言う事なのか?」


考え込むようにして先輩は顎に手を当てた。


「まさか!」


「けどそう言ったんだろう?強く困難に立ち向かえって」


「そんな意味…だったのかなぁ」


どうにもそうだとは思えなかった。

僕にそんな暗号めいたメッセージを送るくらいなら、あの人はきちんと言葉で話してくれてたはずだ。


「あの時の山下さんは背中の痛みが酷かったみたいだし、それじゃあまるで自分が…」


「何だ?どうした…」


まさかあの言葉の意味って…。

あの時隠してはいたけどかなり辛そうではあった。

まみこちゃんも変調は訴えていたんだ…。


「先輩…山下さんが…山下さんが!!」


「落ち着け!いきなりどうしたんだ、そんなに興奮して…」


「嫌な予感がしてならない…先輩、いますぐ山下さんの家に行きましょう!」


「今からって…もう十二時近いぞ…。それにどうしたんだよ、そんなに焦って」


「説明は後です!僕に付いて来てください!」


「あ…おいっ浩人!」


杞憂ならそれでいい。

けどあの時の言葉がもしそうだったとしたら…山下さんは…。

僕は先輩の家を飛び出す。


神経質になっている僕の勘違いだったならそれでいいんだ。

ただまみこちゃんの件を考えるなら、こんな予測だって間違っちゃいない。


「浩人!待てよ!」


背後から先輩の声が聞こえる。

ちゃんと追って来てくれているようだ。

僕は山下さんの自宅の場所を思い出して全速力で走った。

先輩は陸上部だ、僕が全力を出したところですぐに追いついてくるだろう。

だから遠慮はしない。

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