三日目-14
再度コンビニへと僕は戻った。
あれからかなりの時間が経過した。けど先輩は変わらぬ姿でそこに居る。
広い駐車場で一人膝を抱えるような格好で座り込んでいる。
「先輩、起きてますか?」
返事がないから僕は肩を少しだけ揺すってみた。
するとそれを振り払うような力が反発となって返って来る。
「起きているんですね」
「…浩人か」
膝と腕の隙間から少しだけ目を覗かせてこちらを見た。
そこからは詳しく顔色は窺えないけれど、やはりまだ思わしくないようだ。
僕は先輩の隣に同じような格好で座った。
「先輩は頑張ったと思います」
「慰めなんていらねえよ…」
「そんな事ないですよ。それに慰めなんかじゃないです」
「実際俺は何も出来なかったんだ。苦しんでるあの子を助けてやりたかった…けど、無力だったと思い知らされた」
「先輩は医者じゃない。それにそんな役回りを先輩一人だけに押し付けてしまったのは僕らの責任だ」
「………………」
「仮に僕が行っていたとしても結果は同じだったと…そう思います」
僕は感情的にならないように、ゆっくりとした口調で語りかけていく。
「先輩のその様子を見れば、どれだけ必死で頑張ってくれていたか…僕にだって分かりますよ」
「けど、俺はあの子の苦しさを少しも和らげてやる事が出来なかった。ただ…病院内を悪戯に駆け回って、あの子の体に負担をかけてしまっただけだ…」
「そんなに自分を責めるのはよしましょう。そんな事でまみこちゃんが喜ぶはずもない」
「お前には分からないから言えるんだろ…!人が…死んだんだぞ…俺が抱いている手の中で…だっ…」
「…先輩」
先輩が抱えているものはまみこちゃんを救えなかった事もそうだけど、人が死んだという事実からなのだろうか。
僕はまだ人の死というものをリアルで体験した事はない。
…でも遅かれ早かれ、いずれは体験する事になるだろう。
けど先輩はまだ僕と同じ高校生だ。
ここまで自分を追い込む必要はないはず…。
身内の死ならいざ知らず、ここまで精神的に追い詰められてしまうなんて本当に責任感が強い証拠なのだと思えた。
「俺は…救えたかもしれないまみこちゃんを見殺しにした…」
今の先輩には優しい言葉を掛けても駄目…なのかもしれない。
正直先輩に立ち直って貰う術を僕は持ち合わせていない。
掛けるべき言葉も労るべき正しい言葉も分からない。
だから、僕は僕の言葉で先輩に語りかける。
それが正しいかなんて知らない。けれど、伝えないことには先輩はずっとこのままだ。
「じゃあ、先輩はどうする気なんですか?」
「…何ぃ?」
「まみこちゃんを見殺しにしてしまった…その自分が許せないんでしょう?だったらどうするつもりかって聞いているんです」
「それは…」
「先輩自身、その答えなんて見つかってないんでしょう。だったら…そこまで自分を責めたところで意味はないですよ」
「お前…そんなに冷たいやつだったのか…?」
「冷たいも何も、今は先輩の話をしているんですよ?質問を誤魔化さないでください」
「浩人…お前ッ!」
先輩は僕に掴みかかった。掴まれた襟首に凄い力が入っている。
正直本音を言えば怖い。こんなふうに人に怒鳴られることなんて好きなわけがない。
けどその先輩の表情は迷いに迷っている。
何をどうしていいのか、答えが見つからない。
それを僕に求めているんだ。
だから動じない。動揺した様子を悟られないようにして無表情を取り繕う。




