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三日目-11




「唯、次はどこを曲がる?」


「そこの…駄菓子屋さんを…曲がって…二番目の…家」


「分かった」


僕は消沈した唯の手を引き、彼女の家まで送っている。

しかしそこでも容赦なくおかしな現象に遭遇した。

駄菓子…屋?

確かに曲がり角はあるけど駄菓子屋なんてものが見当たらない。

その角らしき場所にあるのは『カレー屋』だ。

他に商店らしきものはないし、曲がれる道なんてこの先相当行かないとないはずだ。


「唯…ここを曲がればいいのかい?」


「…うん。ここ」


唯にはこのカレー屋が駄菓子屋に見えているというのか。

違和感は拭えない。けど今はそれを敢えて口には出さない。

僕は言われるがまま、『駄菓子屋』の角を曲がって二番目の家へと辿り着いた。

表札には厚川と貼られている。間違いなくこの家だ。


「浩人…ごめん…ね」


「何を言っているんだい、心配するのは当たり前だよ。今日はゆっくり休んで」


「…うん」


唯はゆっくりとした足取りで玄関のドアを開き、中へと消えていった。


「唯はこれで大丈夫だろう。後は…」


僕には考えなければならないことが山積みだった。

多分…もう逃避している場合じゃない。

この二日間、僕らは様々な体験をしてきた。

理屈では考えられない不思議な事、小さな事だけど違和感が拭えない出来事の数々。

間違いなくこの町全体…いや、世界規模で何かが起きている。

人が消えてしまったことなんて、もはや氷山の一角に過ぎないのかもしれない。

こんな現実…認められるはずがない。

けど…もう…もうそうやって逃げ続けていられないんだ。

怖いから深く考えないようにしていた。

気付かないフリでみんなの前では平然を装っていた。


先輩が言ったようにまみこちゃんが消えてしまったのだと言うのなら、それを誤魔化したままではいられない。

人を一人…大切な仲間を失ったんだ。


「よし」


僕は気持ちを引き締めてコンビニへと戻った。






二人は同じ体勢のままそこに居た。

微動だにしていなかったのだろう、重苦しい雰囲気がこの一角には漂っている。

僕は塞ぎ込む山下さんの元に行き、同じように腰を下ろす。


「少しは落ち着きましたか?」


「…ああ」


擦れたような枯れた声。

気持ちも沈みきっている。


「自宅まで送ります。今日は帰りましょう」


「……………」


山下さんは答えない。

それでも僕は問い掛けを止めない。


「僕が肩を貸しますよ。…この場に居たってまみこちゃんはもう…戻ってきません」


「……ああ、分かっとる」


先輩の様子を見る。

まだ眠っているようだ。


「山下さんには元気で居て貰わないと困りますよ。だから…立ってください」


「うむ…」


僕は山下さんの腕を掴むと、肩を組んで立ち上がる。

大の大人だと言うのにその体は凄く軽いように感じた。


「背中…痛くありませんか?」


「大丈夫じゃ…すまないな、君にも迷惑をかけてしまって」


「気にしないでください。山下さんだって大事な仲間なんですから」


「…君は強い子じゃな」


「そんなんじゃないです。痩せ我慢してるだけですよ」


僕は肩で支えたまま歩き出す。

方向は山下さんが自分の足で示してくれることだろう。


「自宅までは歩けますね?」


「うむ、大丈夫じゃ」


「では行きましょう」


僕は山下さんの自宅へと向かった。

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