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三日目-5


「みんなで…助け合って、昨日みたいな楽しかった日常を取り戻したい」


「……………」


「バーベキュー、楽しくなかったかい?」


「…ううん。凄く…楽しかった」


彼女はゆっくりと首を横に振る。


「そっか、良かった。でもあれは先輩が企画してくれた。山下さんも豊富な話で場を盛り上げてくれた…そしてまみこちゃんも持ち前の元気さで場を和ませてくれた。そして唯も…一生懸命みんなのために動いてくれた」


そうだよ。簡単な事なんだ。


「みんながそれぞれ役割を果たしてくれて、その場に居たから…楽しかったんだよ。そして協力したから料理もおいしかったんだと思う」


「…うん」


「あの場に誰か一人でも欠けてたら、きっと楽しさも少なかったはずだよ。そこに唯が居なかったら…僕は多分つまらなかったと思う」


「私も…浩人が居てくれたから…凄く楽しかった」


思い出しているのだろうか昨日の光景を。

険しかった唯の表情は砕かれている。


「こんな事をさ、人に強く言えるような身分じゃないけれど…もう自分に嘘は吐かないで欲しい」


「…浩人」


「今唯が言った言葉、僕は信じてるから。みんなと居て楽しかったって言葉」


「うん」


唯は僕の言いたかった事を自分なりにでも理解してくれたようだ。

意見は強要するつもりはないけれど、唯は多分怖がってる。

人と馴れ合うという事に。

だからああやって言う事で、人を遠ざけようとしているんだ。

けど根は素直だから本音が無意識にでも言葉となって出ることが多い。

楽しかった。確かに彼女はそう言ってくれた。

そう口にした彼女の顔は虚言なんかじゃない。

だから僕は信じる。唯の言葉を。

…けど、さっきは僕が居たからって…え?


「ごめんね…浩人」


「う!ああ、いや!僕の方こそいきなり声上げて怒鳴っちゃったみたいで…ゴメン」


「ううん。浩人はちゃんと…私の事も考えてくれていた…それが嬉しい」


駄目だ。何でこんなにも僕は意識してしまうんだろう。

あれはその場の勢いなんだよ…多分。深い意味はない…はず。

唯は時折子供みたいな発言をするし、単純に純粋なんだと思う。

そうだよ、他意なんてあるはずがない。


「浩人」


「うぇぇい!?」


名前を呼ばれると自分ながらにおかしな声を上げてしまった。

動揺しすぎだよ…僕ってば。


「声…瀬上先輩の声が聴こえる…」


「え!…本当だ」


何やら叫んでいるようにも聴こえる。

僕を捜しているのだろうか?ちらほらと自分の名前を呼んでいるのが分かった。


「唯ゴメン、ちょっと行って来る!」


「うん」


「せんぱーい!僕はここに居ますよー!!」


先輩の声がする方向へ走りながら大声を張り上げて居場所を伝える。

やがて自転車に乗った先輩が姿を現した。

僕の存在を見つけると、凄い勢いで走り寄り急ブレーキをかけた。


「せん…ぱい?」


顔色がおかしい。

いつもの先輩らしくなく、精気すら宿っていないようにも見えた。

明らかに変だ。


「どう…したんですか?顔…真っ青ですよ」


「浩人…はぁはぁ…大変だ!まみこちゃん…が!!」


「え…?まみこちゃんがどうしたんですか!?」


「とにかく乗れ!話は走りながら話す!今は一刻の猶予もないんだ」


「分かりました!あ…唯」


「厚川も…居るのか!?くそ…三人は乗れない、厚川!俺たちは先にあのコンビニに戻ってる!お前もすぐに来てくれ!」


先輩は僕が後部座席に座るなり、凄い勢いで走り出した。

唯にはちゃんと伝わっただろうか。

しかし先輩の焦りよう…只事じゃあない。

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