三日目-3
「落ち着いた…浩人?」
「うん。…あのさ、なんか…ゴメンねいきなりあんな事しちゃって…」
冷静さを取り戻した僕は、唯と芝生の上に座っていた。
自分のやった事を今更ながらに思い出して、唯の顔をまともに見ることが出来ない。
幾ら嬉しかったとはいえ、僕は女の子になんて事を…。
普通の女の子だったら引っ叩かれているだろう。
返事をしない唯の言葉がもどかしい。
きっと怒っているんじゃないか…。
「あの…本当にゴメン」
「…ううん、浩人が元気になったなら…全然気にしてない…よ」
唯の返事に重かった首を上げると、見えた表情は凄く柔らかなものだった。
「えっと…その…ありがとう」
「うん…。でもいきなりだからビックリした…どうしたの?」
「そのさ…コンビニ行ったら誰も居なくて、僕が寝ている間にみんな消えてしまったんじゃないかって…そう思ったら急に怖くなったんだ」
「浩人が…怖い?」
何故だか唯は驚いた表情をしていた。
いや、不思議と言った方がこの場合良いのだろうか。
「怖いよ。だってもし一人になったら、この先どうしていけばいいんだい?そう考えたら不安で不安で…たまらなくなった」
「浩人は…一人が怖い…」
「そういえば唯は一人が好きって言ってたよね?本当に怖くないの?不安になったり…しないの?」
唯への問い掛け。僕はどうしてもこの場でその返事を聞きたかった。
「私は…怖く…ない。ずっと一人だったし…一人が好きだった」
「そっか…。詳しくは聞いてなかったけど、唯はひょっとして一人暮らしでもしているのかな?」
「…そう。私はずっと一人で暮らしてる…もう四年間ずっと一人」
「四年!?凄いな…」
四年前と言えば唯は下手したら小学生じゃないか。
いや、まさかそれは…。
ひょっとして物凄く複雑な家庭環境なのかもしれない。
「一人で居るときって何を考えたりしてる?」
「…多分何も考えてない…と思う。その時間が…凄く落ち着くから…好き」
「落ち着く、か」
僕の場合は逆で一人で居るときだけ物事を考える。
雑音が入らないから集中も出来るし。
「あのさ、唯は確か両親はまだ居るんだよね?」
「…居るよ。けど…その話は…したくない」
「そっか、ゴメン。ならこの話はやめておこう」
「…ありがとう」
やはり両親の話には触れられたくないようだ。
唯がこんな性格になり、一人を好むようになったのもそれが原因なのかもしれない。
気まずい雰囲気になったと思った矢先、彼女の口から意外な事が滑り出た。
「…いつか浩人には…話すよ。ううん…話したい」
「唯…。うん、僕で良かったらいつでも話して」
「うん」
短い返事だったけど、唯はとても満足そうだった。
出逢ったときは凄い剣幕で人を拒絶した感じだったけど、今では本当に落ち着いているし僕ともちゃんと話をしてくれている。
こんな唯を今見ているからこそ、本当は一人が好きなんて事が嘘なんじゃないかって気がしてならなかった。




