二日目-6
「しかし、こうして大勢で集まったとしてもやる事がなくて暇だよな」
僕らは食事の後もこのコンビニ前に居た。
先輩が愚痴を零している通り、僕らにはやる事がない。
人捜しは一時中断というか実質終了したに等しい。
正直なところ、これからどう動けばいいかというものが分からなくなっていた。
僕らが動ける範囲なんてたかが知れているし、隣町にはもう行くことが出来ない。
将棋やチェスで例えるなら所謂『詰み』状態と言ったところか。
まゆこちゃんはこの駐車場にお絵かきをしているのか、さっきからずっとチョークを握って何かを描いている。
唯はそれを無言で眺めているだけだ。
更にその唯とまみこちゃんを僕らが眺めるといった構図。
考えることは幾らでもあるのだけれど、正直今はそんな気分にもなれなかった。
「山下さんもまだ戻ってくる気配もないし、どうしましょうか」
「う~ん…」
先輩はあぐらをかいたまま、腕組みして瞑想するような姿勢を取る。
つまり思考中だ。
「先輩?」
「よし!」
「うわ!びっくりした!急に驚かせないでくださいよ…」
「ははは、スマンスマン。けど面白い催しを考えたぞ」
「催し?どんなです?」
「それは後のお楽しみってやつだ。悪いけど浩人、そんな訳で俺は少し出掛けることにするよ」
「えっ…ちょっと先輩!」
先輩は間髪入れずに自転車に乗り込んだ。
「浩人たちは夕方まで好きに過ごしていてくれ!俺はそのくらいになったら戻るから!」
言いたいことだけ言って走り去る瀬上先輩。
一体何を思いついたのやら…。
訳が分からずに僕が嘆息していると、唯がまみこちゃんをおぶってこちらに向かって来ていた。
「まみこちゃん、寝ちゃったの?」
「うん…さすがに疲れたみたい…」
「そっか。しかし体調が悪そうだったのに元気な子だよね、まみこちゃんって」
「うん。遊んで寝て、すぐまた遊ぶ…凄く、元気」
唯はまみこちゃんを壁際に寝かせると、店内から大きめのスポーツタオルを手に戻ってくる。
それをシーツ代わりにしてまみこちゃんに被せた。
「そういえばさ、まだ返答聞いてなかったよね?」
「…何のこと?」
「僕らの仲間になるってことだよ。まだ唯からはちゃんと返事を貰ってなかったからね」
「……………」
「唯の様子を見させて貰ったけど、大丈夫ってことで良いのかな?」
「うん、大丈夫…だと思う」
相変わらず言葉に力強さがなかったけど、やっぱり悪い気はしていなかったようだ。
見てても分かったけど他のみんなとも十分上手くやれてる。
「そっか、良かった」
「浩人…嬉しい…の?」
「そりゃあ嬉しいよ。唯とこれで本当の友達になれた気がするし」
そう僕が伝えると、彼女は目尻を下げて嬉しそうな顔をした。
こんな笑い方も出来るんだ…。
「みんな良い…人。私はみんな好き…だよ」
「えっ!」
「どうした…の?」
「いやっ!何でもないんだ、うん何でもない!」
「変な浩人…」
唯に見とれていたからか、好きって言葉に一瞬焦ってしまった。
何でこんなに僕は意識をしてしまうんだろう…。
二人きりだからなんだろうか。
「浩人?」
「なっ…何だい?」
「先輩…どこに行ったの?」
「ああ、僕にもよく分からないんだ。何か思いついた事があったらしくて、何も言わずにどこかへ行っちゃった」
「ふ~ん…そう」
「楽しみしていろ!なんて言ってたし、一応期待はしておこうか?」
「浩人にも…分からない事あるんだ?」
「そりゃあるってば。先輩とはまだ出会って二日しか経ってないんだし、正直そこまで理解はしてはいないと思う」
「二日…なんだ」
「けどね、話してみて思ったけど、先輩みたいに他人の事も考えてくれる人…絶対悪い人じゃないと思えるんだ」
唯は真剣に話を聞いている様子だった。
それは先輩の話だからか僕が話しているからなのかは分からないけど、じっと僕の目を見て逸らそうとはしない。
「ねえ、唯って家族…兄弟とかっているの?」
「私は…居たよ」
「居…た?」
「長い事会ってない…だけ。心配…しないで」
「そっか、ゴメンなんか勝手な想像しちゃったみたいで」
「私は一人っ子…兄弟は居ないよ。けど…私は一人が好き」
そう言うと彼女は立ち上がった。
僕に背を向けたまま歩き出す。
「どこへ行くの?」
「散歩…浩人も一緒に来て欲しい」
「あっと…うん、行こう!」
散歩とは思いも寄らなかった。
唯は本当に何を考えているのか分からない。
こうして話をするのは悪くないと思い、僕は彼女の隣に並んで歩き出した。




