一日目-10
「せんぱ~い!」
コンビニへ戻るとすでに先輩は縁石に座って待っていた。
僕は手を振りながら帰還を伝える。
「おう、戻ったか!遅いから心配したぞ」
「はい、ちょっと色々ありまして…」
「収穫は…っておぉ?」
僕が自転車から降りて背後に居た唯の姿を見ると、先輩は驚きの声を上げる。
「一人見つけたのか!凄いじゃないか浩人!」
「はい、なんとかギリギリで見つけられたんですよ」
唯は自転車から降りたものの、何故か僕の背後に隠れるようにして先輩の姿を見ている。
「先輩の方は…」
周囲を見渡すが誰も居ない。どうやら先輩の方は失敗だったのか…。
「ああ、俺も一人見つけたよ」
「えっ?どこに…」
「今コンビニの中だ。腹が減っていたようだから食べ物を物色している」
ちょうどそんな会話をしていると、手に弁当などをたくさん詰めた袋を持っているおじいさんが出てきた。
「出てきたか。紹介するよ、こちらは山下康三さん」
「おぉ、この学生さんが仁君の仲間か。よろしくの。それとそっちのお嬢ちゃんは?」
軽く手を上げて挨拶を交わしてくれる山下さん。どうやら明るい人のようだ。
「僕は柏木浩人と言います。それでこっちは…厚川唯…さん」
未だ僕の背後からまともに姿を出そうとしない唯。
「少しばかり人見知りな子なのかもな。俺は瀬上仁だ、以後よろしく頼むよ」
「あなたが…せのうえせん…ぱい」
「そう、山下さんも明るくて良い人みたいだし、唯も早く馴染めるようにしないとね」
「なんだ、やけに仲が良いんだな」
先輩は勘繰るようにニヤニヤと薄ら笑いを浮かべている。
明らかな冷やかしの目だ。
「そんなんじゃないですよ!まったく…えっとそれで山下さん、あなたも僕たちと一緒に行動してくれるってことでいいんでしょうか?」
「うむ、構わんよ。そっちの仁君には世話になったしの。こんな老いぼれが居ても迷惑じゃないのなら喜んで居させて貰うよ」
山下さんは皺をたくさん作った満面の笑みで返答を返してくれた。
物分りもいい人みたいだし、年配の貫禄がある。
こんなことを言っては失礼だけど唯とは豪い違いだ。
「さて、腹も減ったしの。飯でも食おうじゃないか」
山下さんは地べたに座り込むと、弁当の包みを開けた。
よっぽどお腹が空いていたのかがっつくように物を口に運んでいる。
「山下さんは今朝から何も食べてなかったみたいだからな。どうせ誰も居ないんだ、たくさん食べちゃってくださいよ」
「うむ、なんだか夢のようじゃな!はっはっは!」
先輩とはすでに打ち解けているらしく仲は凄く良さそうだ。
年齢があんなに離れているというのに、先輩はやっぱり凄い人だよ。
「唯、大丈夫かい?」
「…うん、平気」
じっと二人の様子を見ている唯に声をかける。
「どうだい?みんな明るくて良い人だろう?」
「うん…」
相変わらず言葉にキレはないけれど、我慢しているような感じでもないし一安心だ。
「僕らもご飯にしようか?お腹空いてるでしょ?」
「私は…大丈夫。浩人が食べたい…なら、どうぞ」
「そ…そう?じゃあ先輩!僕らも何か食べましょう」
「ん、そうだな。じゃあちょっと早いけど俺らも夕食にするか」
僕は先輩と共にコンビニに入る。
少しだけ気になってガラス越しに唯の様子を見てみた。
どうやら山下さんに話かけているようだ。
弁当を食べる目前しちょこんとしゃがみ込んでいる。
「なんだ?私のようなじじいがそんなに珍しいのかの?」
「……………」
「う~む、そうまで見つめられると食い辛いんだがのぅ」
「そのお弁当…おいしい?」
「たかがコンビニ弁当だがそりゃあ美味いぞ!空腹に勝るスパイスはなし、とは良く言うくらいだからの!はっはっは!」
「私、厚川…唯」
「お?おお、そうじゃな。唯ちゃん」
「山下…さん」
「なんじゃ?」
「私…唯ちゃん」
「………。何やらちょっと変わった子なんじゃのぅ…」
何やら楽しそうだ。
山下さんは会話に苦労しているみたいだけど、あの様子ならきっと大丈夫だろう。
僕らは弁当を選び、レンジへと向かった。




