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after25





最初は山下さん。

同じ病院内だったのもあり、僕らはすぐに取り掛かった。

山下さんの面影はすでに消え、そこには変わり果てた姿だけがそこにはあった。

無残な姿なまま息を引き取った山下康三さん。

けれど最後に見たとても幸せそうな表情が印象的だった。

本来なら奥さんが眠る場所に埋葬してあげたかったけど、僕にはその場所も分からない。

苦汁を飲む思いだったけど、僕らは病院内にスコップで穴を掘り、そこに山下さんの亡骸を埋葬した。

唯は一言も口を開かなかったが、悲しみというより慈しむような顔をしていた。

山下さんには最後まで勇気付けられた。

僕らはそれを絶対に忘れないでいようと思う。


埋葬を終えた後、僕らはしばらくの間黙祷した。











そして僕の家族も埋葬に取り掛かった。

涙ぐむ僕を唯は支えながら手伝ってくれた。

何も分からないまま別れることになった僕の家族。

後悔と悔しさで、思い起こすだけでやはり涙は溢れてくる。

もっと感謝の言葉を口にしておくべきだったんじゃないか?

もっと親孝行しておくべきだったんじゃないか?

今何を言い、何を思ったところでそれはもう叶わぬ夢だ。

面影はもうないけれど、それでも僕を生み、そして育ててくれた大事な家族。

涙を拭いながらも別れを告げ、僕は一つ一つ丁寧に土を掛けた。

思い出を噛み締めるように。


父さん、母さん、美佳。

――さようなら。








僕らはその後、知人の家を回った。

友達だった眞也と武治。

彼らは僕の良き親友だった。

こんなことにならなければ、今頃普通に学校でくだらない話をしていただろうに。

丁寧に埋め、そして手を合わせる。

唯も見ず知らずの僕の友達のために手を合わせてくれた。

ありがとう、唯。












最後に僕らは先輩が眠るアパート跡地へと向かった。

先輩は「行け!」と自分よりも僕を気遣って送り出してくれた。

けどすみません、戻ってきてしまいました。

でも、生きることを放棄したわけじゃないんです。

「親友」である先輩を、このままにしておきたくはないんです。

だから僕は最後にしっかりとお別れをしたい。

もう僕は大丈夫ですから。

涙で視界が満足に開けなかったけれど、僕は笑顔を絶やさないようにして先輩を埋葬した。

さすがの唯も泣いていた。

良かった。

先輩、唯は先輩のこと、やっぱり赦してくれたようですよ。

僕は唯の涙を浮かべる姿を見て、嬉しかった。


僕らは先輩を埋葬した後、長く長く、黙祷した。










僕らは事を終え家に帰った。

お互い言うべき言葉も掛ける言葉も浮かばなかった。

だけど言わなくても気持ちは同じ。

それはもう分かっている。

だから、僕らはこの日寄り添うようにして眠った。

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