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after24







春分を過ぎた。

肌寒さはようやく消えてきたが、それでもまだ夜は十分冷え込む。

よくもあんな厳しい冬を乗り越えられたと僕は思えた。

降り積もった雪は気温を下げ体温を容赦なく奪い、何度震えたことだろうか…。

そんな季節とももうじきオサラバだ。

もうすぐ…一年が経つ。

この国には四季が存在しているから体感出来ている部分がある。

もしそんなものが無ければ、当の昔に日付などの感覚は無くなっていたことだろう。

町の光景もガラリと形を変えていた。

変化など訪れないと思っていたのに…。

凄まじかった臭いは大分消え失せ、人々の遺体も姿を変えていた。

雨や風、雪や熱気の影響で瓦礫に包まれた町も随分と平らになった印象だ。

全ては土に還って行く。

これがそうなんだと僕は思った。


食料が尽きてきた。

もう…底が見えている。

身近な場所で食べられるものなどほとんど無くなっていた。

どうすればいいのだろう。

野ざらしにされた食料品。

日光に当てられた缶詰でさえ、中身はもう変色してしまっているものばかりだ。

真夏の熱気に晒されたのはどこへ行っても変わらない。

つまり、僕らが場所を変えても意味はない…ということになる。

傷んだものを食べて体調を崩すことを考えると、怖くて口に運べなくなった。


…この場を離れた方がいいのだろうか。

新しい場所へ行けば、まだ多少は食べられるものも残っているはずだ。

けれど僕には一抹の不安があった。

それは唯の体力だ。

歩けるようになったからといって、線も細く、ましてや病み上がりのような体。

新天地へ行くには不安だけが募る…。

車もなければ…いや、例えあったとしても僕は運転出来ないし満足な燃料もない。

結局徒歩しかないんだ。

舗装された道なんて、今や瓦礫で埋め尽くされ、でこぼこだらけ。

こんな道を長時間歩くなんて、山歩きよりも大変なんじゃないかと思った。

僕らはその日、歪にへこんだ果物の缶詰を一つ、二人で分け合って食べた。





大分陽は長くなり、日照時間も寒い季節とは比べ物にならなくなってきた。

僕らは食べ物も満足に得られなくなり、幾分か痩せ細った。

それでも何とか生き繋いでいる。

寒さもあり体力を使いたくないからと出歩く事は余り無かったけれど、今ならもう平気なように思える。

ある日僕は提案を出した。


先輩たちを埋葬しに行こう――と。


唯は快く承諾してくれた。

いつまでも先輩たちを酷い姿のままにしておくなんて出来ない。

せめて、自分の知りうる人間だけでも、埋葬という形で弔ってあげたかった。

しかしあれから相当な月日が経つ。

変わり果てたその姿を見て耐えられるだろうか。

唯は…大丈夫だろうか。

けれど唯は意思は固いようで、自分一人でも行くと力強く答えた。

…むしろ心配なのは僕自身のほうかもしれないな。


だけど、僕らはあの人たちのお陰で今でも生きていられる。

それは絶対に忘れてはならない。

そしてこれからもそれは続くんだ。


僕らは病気などを防ぐために、病院から医療用の服を持ち出し着用した。

そして亡骸が眠る跡地へと向かった。

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