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流れの先

第91回 流れの先


深部から戻る途中、何度か足を止めた


戦闘でも、崩落でも、俺の進化でもない


単純に、帰り道を確認するためだった


前へ進む時は、どうしても奥ばかりを見る


魔力反応や魔物の痕跡、足場、分岐を確認しながら、まだ見ていない先へ意識を向ける


でも帰る時は逆だ


行きに分かりやすかった目印が、反対側から見るとほとんど見えないこともある


ローデンが岩壁の脇に立ち、前に付けた布を見た


「これは変える」


「見えないか」


「帰り側からだと遅い」


俺も振り返ってみる


確かに、曲がり角を越えてからでないと分からない


「もう少し手前」


「うん」


ローデンが位置を変える間、ルッカは床を確認していた


俺たちが通った跡、浅い側へ向かう魔物の跡、奥へ戻ったらしいものがいくつか混ざっている


「新しいのある」


「俺たちが進んでる間に通った?」


「たぶん」


「向きは」


ルッカが少し先へ歩く


「外」


また浅い側だった


俺は奥を振り返った


大きな裂け目状の通路の向こうには、まだ見ていない深い場所が続いている


《魔力探査》を使えば、あの大きな反応は今でも拾える


でも使わなかった


帰ると決めたなら、帰ることに集中する


エナにも止められている


今の俺に必要なのは、奥をもう一度見ることじゃない


六人で戻ることだ


「セイジ」


ルッカが呼ぶ


「行くよ」


「ああ」


俺たちはまた歩き出した


途中、魔物を二度見つけた


一度目は小型で、こちらを見るなり逃げた


二度目は中型だったが、少し距離を取ったまま、互いに進む方向が違うことを確認して終わった


どちらも追わない


帰りに戦闘を増やす理由はない


前なら、素材になるかもしれないとか、経験になるかもしれないとか考えたかもしれない


今は違う


必要のない戦いはしない


強くなるために大迷宮へ来ているわけでもない


森から続いている異変を追ってきた結果、ここまで来て、その途中で強くなった


順番はそこだ


袋状の安全確保地点へ着いた時、全員かなり疲れていた


倒れるほどではないが、足取りに差が出ている


エナがそれを見逃さない


「ここで休む」


ダリオも反対しなかった


「長めに取る」


俺たちは中へ入った


入口が狭く、奥は少し広い


ここを見つけた時と同じで、周囲の魔力は濃いが流れは比較的静かだった


俺は壁際へ座り、ルッカも近くへ座る


ローデンは入口の目印を確認し、ミラは記録を広げる


ダリオは座る前に通路を一度見て、エナは全員の状態を順番に確認していく


俺の番が来た


「手」


差し出す


震えなし


「頭」


「平気」


「魔力」


「減ってるけど、まだある」


「どのくらい」


「帰る分なら問題ないと思う」


エナは俺を見る


「思うじゃなくて」


「魔法を連続で使わなければ大丈夫」


「戦闘が続いたら」


「その時は休む」


「先に休む」


「分かった」


最近、エナの言葉がどんどん短くなっている気がする


俺が同じことを何度も聞かれるからかもしれない


隣でルッカが水を飲んでいる


「何笑ってる」


「笑ってない」


「口が笑ってる」


「セイジ、怒られてる」


「お前もさっき匂い追って前出ただろ」


「出てない」


「半歩出た」


「半歩は出てない」


「出た」


「出てない」


「そこまで」


エナに止められた


俺たちは黙る


ダリオがこちらを見て、小さく息を吐いた


「深部まで来て何してるんだ」


「休憩」


「それは知ってる」


少しだけ空気が緩んだ


こういう時間があると助かる


大迷宮の奥は、ずっと緊張していると疲れる


戦っている時だけじゃない


何もいない時も、何も起きていない時も、次に何かあるかもしれないと思い続ける


それが積み重なる


ミラが記録を見ながら言った


「今までの流れを整理したい」


「魔力?」


「全部」


ミラは紙を何枚か並べた


俺には読める文字と読めない文字が混ざっている


線や記号、簡単な絵、経路の形


そこへ魔力が強かった場所、薄かった場所、魔物の痕跡が多かったところ、外向きの移動、大きな反応を感じた方向が重ねられている


「最初に変だと思ったのは、浅い側」


ミラが指す


「魔物の動き」


ルッカがうなずく


「森も」


「それから中層」


ダリオが別の印を見る


「大型の縄張りが空いてた」


「深い方へ来るほど、外向きが増えた」


ミラが言う


俺も紙を見る


「魔力の変化も大きくなった」


「濃さだけじゃない」


「流れも」


「同じ場所で時間によって変わるのもあった」


「うん」


ミラはさらに奥側の記録を指した


「最近の区域では、下方向、奥方向へ流れる魔力が増えた」


「全部じゃないけどな」


「分かってる」


「戻ってくる流れもあった」


「それも書いてる」


紙に描かれた線は一方向ではない


奥へ向かうものもあれば、戻るものもある


横へ流れるもの、薄くなる場所、濃くなる場所もある


「きれいじゃないな」


「だから分からない」


ミラが言った


「何か一つの方向へ流れてるだけなら簡単だった」


「でも違う」


「ただ」


ミラが一枚を中央へ置く


「深い方で変化が強いことは、かなり重なってる」


誰も反対しない


ここまで実際に見てきた


魔物の移動、魔力の濃淡、大きな変動、奥から逃げてくる大型魔物、そして今までで一番近くまで感じた大きな魔力反応


「原因が一つとは限らない」


ダリオが言う


「そうだな」


俺も同意する


「魔物が動く原因と、魔力が乱れる原因が同じとも限らない」


「でも場所は近づいてる」


ミラが言った


それも事実だ


深く進むほど、別々に見えていた情報が近い場所へ集まり始めている


「次、どうする」


ルッカが聞いた


ダリオはすぐ答えず、俺を見る


「進化は」


「しない」


「ここでは」


「うん」


答えは決まっている


LEVEL30


《アークホブゴブリンメイジ》


進化候補は出ている


でも大迷宮の深部で進化するつもりはない


身体や魔力感覚が変わった状態で、今の探索を続ける理由もない


「このまま戻る」


「その後」


「休む」


「次の探索は」


「進化してからにするのか」


ダリオの質問に、俺はすぐ答えられなかった


安全な場所で進化すること自体はできる


ただ、これまでと同じなら、進化後にLEVELが下がる可能性がある


身体や魔力感覚が変わる可能性もあり、次に大迷宮へ来るなら、それなりに間を空けることになるかもしれない


一方で、異変は今も続いている


魔物が動き、魔力も変化している


「進化を先にしたら、次に来るまで時間が必要になるかもしれない」


「そうなる可能性はある」


「今の状態なら」


「まだ動ける」


エナが口を挟む


「今の状態なら、今日は帰れる」


「次の探索は別」


「分かってる」


また釘を刺された


でもその通りだ


今日帰れるから、次も行けるとは限らない


「一度戻ってから決める」


俺は言った


「深部で決めることじゃない」


ダリオがうなずく


それで話は終わった


今は帰る


次のことは帰ってからだ


休息を終え、再び浅い側へ向かう


袋状の空間を出て、横道、崩れた床、岩柱、大空洞下部、縄を使う段差、割れ目、目印を一つずつ逆にたどっていく


途中、前に《土成形》で整えた足場が少し崩れていた


ローデンが止まる


「直す」


俺も手伝う


「どこ」


「右端だけ」


《土成形》


必要な分だけ動かし、岩を寄せて崩れた端の形を整える


大きく作らない


戻るために使えればいい


「これで」


ローデンが踏む


「大丈夫」


全員が通る


少し先でルッカが止まった


床に新しい跡がある


「大きい」


「向き」


「外」


まただ


俺たちが奥にいた間にも、何か大型が浅い側へ移動している


「近い時間?」


「うん」


「何体」


「一つ」


それだけ確認して進む


大空洞へ入る


広い


最初にここへ入った時より慣れた


だからこそ、気を抜かない


目印を一つずつ確認し、割れ目を迂回する


ローデンが先、ルッカが周囲、俺は魔力を見る


近くに大きな反応はない


小型が遠くに一つ


問題ない


入口まで戻った時、全員少し安心した


まだ大迷宮を出たわけじゃない


でも、深部の未確認区域からはかなり離れた


ここから先は、何度も通った経路が増える


「休むか」


ダリオが聞く


エナが全員を見る


「短く」


岩壁近くに座り、俺は水を飲んでから魔力を探る


ここまで戻ると濃さが違う


奥よりかなり薄い


それでも浅層よりは濃い


「戻ると分かるな」


俺が言う


ミラが顔を上げる


「何が」


「奥がどれだけ濃かったか」


奥へ進む途中では、場所ごとの濃さの変化にも少しずつ慣れていく


でも戻ってくると差が大きい


「身体に残ってる感じは」


エナが聞く


「今はない」


「魔力の違和感」


「少し」


「どんな」


「奥でずっと探査してたから、こっちが軽く感じる」


エナには分からない感覚だと思う


でも記録しておく


「帰ってからも変なら言って」


「分かった」


少し休んで再び歩く


中層の深い区域へ戻り、さらに上へ向かう


途中で何度か戦闘になった


最初は小型二体


別の場所で中型一体


どちらも長くはかからない


最初の小型二体は狭い場所で向かってきた


一体を《土締め》で遅らせ、もう一体をダリオとルッカが処理する


残った一体は俺の《風圧》で向きをずらし、そのままダリオが仕留めた


中型は背中が硬いタイプだった


以前なら攻撃魔法を何発か当てていたかもしれない


今回はルッカが動きを見て、左後脚の古い傷を見つけた


ダリオがそこへ体勢を向けさせる


俺は《水槍》を一発


動きが崩れたところで終わった


「また小さい魔法だけ」


ミラが言う


「《水槍》は小さくないだろ」


「前より使い方が小さい」


「意味分からない」


「威力の話じゃない」


ミラが少し考える


「必要な分だけ」


「ああ」


それなら分かる


強く撃てる


でも強く撃つ必要がない


前に考えたことが、もう戦闘の中へ入っている


何が必要かを考え、止める


ずらす


弱い場所を作る


そこへ通す


それだけ


「これも資料にある考え方なのかな」


俺が聞く


ミラは首を振った


「そこまで同じか分からない」


「だよな」


古い資料に似た言葉があった


だからといって、俺がやっていること全部をそこへ結びつける必要はない


俺が今そう考えている


まずはそれだけだ


さらに戻る


大型魔物の空いた縄張り跡は、今も変わらない


新しい大型が居着いた痕跡もない


ルッカが一周確認する


「通った跡だけ」


「住んでない」


「うん」


最初にこの空白を見た時、妙だと思った


今なら、奥から大型まで動いてきていることを知っている


でも、この縄張りが空いた直接の理由まではまだ分からない


同じ異変の影響かもしれない


別の理由かもしれない


そのままにしておく


大迷宮の入口まで戻った頃には、かなり時間が経っていた


外の光が見える


少し眩しい


森の空気が入ってくる


湿った土、葉、木


大迷宮の中とは違う匂いだ


ルッカの足が少し速くなる


「走るなよ」


「走ってない」


「速い」


「外だから」


理由になっているようでなっていない


俺たちは大迷宮を出た


そこで一度立ち止まる


全員いる


負傷なし


ルッカの前の擦り傷も問題ない


エナが見ている


ローデンの荷物、ミラの記録、ダリオの装備、俺の空間収納も全部確認する


「帰る」


ダリオが言う


今度こそ、本当に帰る


ガルディア側へ向かう道を進む


大迷宮へ入る時とは空気が違った


奥に何かを残してきた感覚はある


でも逃げてきたわけではない


必要なところまで見た


戻ると決めて戻った


それでいい


ガルディアへ着いた後、俺たちは深部探索で確認した内容を共有した


全部ではない


俺の感覚をそのまま説明しても伝わらないものもある


ミラが記録を整理し、ダリオが探索経路を説明する


ルッカが魔物の移動について補足し、ローデンが崩落や通路の状態を話す


エナは探索中の負傷や継続可否について必要なところだけ伝え、俺は魔力の変化を説明した


「深くなるほど濃くなるだけじゃない」


聞き手を前に、俺は言葉を選ぶ


「薄い場所と濃い場所があって、同じ場所でも時間で変わるところがある」


「流れも一定じゃない」


ミラが横から補う


「奥方向、下方向へ向かう流れが増える一方、逆向きの流れも一部確認しています」


「大きな魔力反応も」


「さらに深い側」


俺はうなずく


「前より近くまで行ったけど、まだ正体は分からない」


そこははっきり言う


魔物なのか、場所なのか、何か別のものなのか


見ていない以上、決められない


「大型の魔物も浅い側へ移動している」


ダリオが言う


「実際に複数確認した」


「逃走したものもある」


ルッカが続ける


ミラが記録を示す


「異変方向が深い側である可能性はかなり高いと考えていますが、直接原因は未確認です」


これが今の結論だった


方向は見えてきた


原因はまだ分からない


報告が終わる頃には、身体の疲れが一気に出てきた


緊張が抜けたせいだと思う


エナに見つかった


「今日は休む」


「分かってる」


「魔法研究もしない」


「まだ何も言ってないだろ」


「する顔」


「どんな顔だよ」


「する顔」


反論できない


少し考えていた


深部で見た魔力の流れ


必要な作用から考えるという話


戻ったら試せることがあるかもしれない


でも今日はやめた方がいい


「分かった、何もしない」


「本当に」


「寝る」


エナはようやく納得した


ガルディアを出て、第二水場へ戻る


今日は全員が一緒ではない


途中で別れる


それぞれ戻る場所がある


俺とルッカは森へ


ダリオたちは人間側へ戻る


また必要な時に合流する


それが普通になっている


別れる前、ダリオが言った


「次に行く前に、一度話す」


「進化のことも」


「それも」


俺はうなずく


進化を忘れていたわけじゃない


《アークホブゴブリンメイジ》


いつでも選べる


たぶん


少なくとも表示された時は選択できた


でも今すぐ選ぶつもりはない


「帰って考える」


「そうしろ」


第二水場へ着いた時には、かなり疲れていた


水の音、木材、道具小屋、棚、排水の溝


見慣れたものが並んでいる


大迷宮の深部から戻ったあとだと、全部が妙に明るく見える


そこにいた何人かが俺たちを見る


人間もいる


ゴブリンもいる


大げさな出迎えはない


それでいい


「戻った」


俺が言うと、近くにいた一体のゴブリンがこちらを見た


以前見た個体かどうかは分からない


軽く手を上げる


向こうも同じように手を上げた


それだけ


別の場所では道具を片づけている人がいる


水を汲んでいる者も、試験栽培の区画を見ている者もいる


俺たちがいなくても、ここは動いていた


「変わってない」


ルッカが言った


「何が」


「ここ」


「まあ、数日で全部変わったら困る」


「そうじゃない」


ルッカは水場を見る


「いつも」


少しだけ分かった気がした


俺たちが深い場所へ行って、知らない魔物を見て、大きな魔力を感じて、LEVEL30になり、進化候補まで出ても、戻れば第二水場は第二水場だ


誰かが道具を使い、誰かが水を汲み、誰かが片づける


俺がいなくても、それは続いている


「セイジ」


ローデンの声がした気がして振り返りかける


いない


もう別れた


疲れてるな


俺は頭を振った


「今日は帰ろう」


ルッカが言う


「岩陰拠点」


「うん」


第二水場で最低限の確認だけする


持ち出した物、減った救護用品、壊れた道具、次に補充が必要なもの


全部今日やる必要はない


空間収納から預けるものだけ出し、持ち帰るものはそのまま


それで終わり


岩陰拠点へ向かう


森の道には、知っている匂い、知っている木、知っている音がある


大迷宮と違って空も見える


少し暗くなり始めている


一日の終わりだ


ルッカが前、俺が後ろ


いつもの形


岩陰拠点が見えた時、身体の力が抜けた


「帰った」


誰に言うでもなく口に出る


ルッカが入口へ入る


俺も続く


棚、寝床、調理場所


何も変わっていない


少し埃があるくらい


俺は荷物を置き、座った


本当なら、ここでSTATUSを開いて進化候補を見ることもできる


安全な場所


自分の家


大迷宮の深部よりは、進化を選ぶ場所としてずっと落ち着いている


でも今日はしない


疲れている


進化した後に何が変わるか分からない


なら、体調を整えてからの方がいい


急ぐ理由はない


ルッカが簡単な食事を準備し始める


俺も手伝う


火と水が必要になる


魔法を使えば早い


でも今日は最低限にする


《火弾》なんて使わなくても火は起こせるし、水は持ち帰っている


身体を休める方が先だ


食べて、少し話す


大迷宮のことはあまり話さなかった


ルッカも疲れている


途中で何度かあくびをしている


「耳は起きてる」


俺が言う


ルッカが睨んだ


「まだ言う」


「朝の話思い出した」


「いつの」


「前の」


「覚えてない」


絶対覚えている


でも追及しない


食事を終え、片づける


寝床へ入ると身体が沈んだ


外から水の音と森の音が聞こえる


いつもの岩陰拠点


目を閉じる


進化候補がある


LEVEL30


大迷宮の奥


大きな魔力反応


深部へ集まる流れ


考えることはいくらでもある


でも今日は考えない


エナにも言われた


休む


それが今必要なことだ


翌朝、目を覚ました時には身体がかなり軽くなっていた


ルッカはまだ寝ている


今度は本当に寝ているらしい


耳も動かない


俺は静かに起きて外へ出た


森の朝


冷たい空気


《魔力探査》は使わない


ただ立って身体を伸ばす


肩、腕、脚に問題はない


昨日までの疲れは残っているが、動けないほどではない


進化のことが頭に浮かぶ


岩陰拠点へ戻り、休んだ


今のところ周囲に危険な気配もない


それでも、すぐには選ばなかった


理由がある


次の探索だ


大迷宮深部


俺たちはかなり近づいている


次に何があるか分からない


進化すれば、これまでと同じようにLEVELが下がる可能性がある


強い種族になるとしても、今の戦闘力をそのまま維持できる保証はない


身体感覚や魔力感覚がどこまで変わるかも分からない


その状態で、再び深部へ行けるまで何日かかるのかも分からない


一方で、今の俺はLEVEL30


深部から帰ってきた


大きな負傷はなく、魔力も回復すれば使える


なら、今のままもう少し奥を見る


その選択もある


「起きてた」


後ろから声


振り返ると、ルッカが入口にいる


「今起きた」


「耳も」


「今日は全部」


「そっか」


ルッカが俺の隣へ来る


「進化する?」


いきなり聞かれた


「まだしない」


「まだ?」


「次の探索が終わってから考える」


「決めた?」


「今のところ」


ルッカは特に反対しない


「分かった」


「怖くないのか」


「何が」


「俺が進化するの」


ルッカは少し考える


「大きくなる」


「前はな」


「もっと」


「それは困る」


岩陰拠点がまた狭くなる


ローデンに改修してもらうことになる


ルッカが笑う


「入り口また直す」


「進化したら絶対大きくなるって決まってないぞ」


「でも大きくなった」


「前は」


「その前も」


「そうだったけど」


反論が弱い


「まあ、それも帰ってからでいい」


俺は言った


「家壊したら困るし」


「壊さない」


「進化して起きたら頭ぶつけるかもしれない」


「外でする」


「それはそれで寒い」


くだらない話だけど、それで少し気が楽になった


進化候補が今後も残るかは分からない


少なくとも表示された時には選べた


今すぐ選ばなくても表示が消えないかどうかは、まだ確認していない


なら、必要ならあとでSTATUSを見ればいい


今は朝だ


まず食べる


第二水場へ行き、皆と話す


次に深部へ入るか、それを決める


朝食後、俺たちは第二水場へ向かった


昨日より身体が軽い


道も森も、今のところ普段と大きく変わらない


それだけで安心する


第二水場へ着くと、ミラが先に来ていた


珍しい


人間側からここまで来る時間を考えれば、かなり早く出たはずだ


紙を抱えている


「おはよう」


「早いな」


「見せたいのがある」


「何」


「昨日の記録」


もう整理したらしい


俺とルッカが近づく


ミラが紙を広げる


正確な地図ではなく、俺たちが通った範囲だけを記した大迷宮の経路だ


そこへ魔力の流れが線で描かれている


「これ」


ミラが深部側を指す


「セイジが確認した魔力流」


「うん」


「全部じゃない」


「分かってる」


「観測できたところだけ」


線は複数ある


奥や下へ向かうものがあり、一部は戻り、横へ流れてまた合流している


「これだけだと、まだ何も断定できない」


「うん」


「でも」


ミラが別の紙を置く


今度は魔物の移動方向だ


浅い側へ向かう外向きの線が多く、特に深部に近いところで目立っている


「魔力は奥側へ集まる流れが増えてる」


俺が言う


「魔物は逆」


「浅い側へ」


ルッカが答える


三人で紙を見る


片方は深い側へ


片方は浅い側へ


反対だ


「何かから離れてるみたいだな」


俺は言った


ルッカもうなずく


「魔物は」


「魔力は逆に寄ってる」


ミラが言う


俺はその言葉に引っかかった


魔物は離れる


魔力は寄る


同じ場所へ


もしそうなら


「奥で何かが魔力を集めてる」


言いかけて止める


違う


そこまで分からない


「奥側へ魔力が集まって見える」


言い直した


「うん」


ミラもそれ以上は言わない


「その近くに大きな反応がある」


「そう」


「次はそこ」


俺が言った


ルッカが紙の一番奥を見る


「行く」


「うん」


その時、ダリオの声がした


「勝手に決めるな」


振り返ると、ダリオ、ローデン、エナの三人も来ていた


「決めたっていうか」


「顔が決めてる」


「そんな顔あるのか」


「ある」


また顔で判断される


エナまでうなずいている


「まず状態」


「昨日休んだ」


「今を見る」


分かっている


俺は腕を出す


エナが手、目、呼吸、疲れを確認する


ルッカも、他の皆も同じだ


「問題ない」


ようやく言われた


ダリオはミラの記録を見る


「これで次は奥」


「そうしたい」


「進化は」


「保留」


「理由は同じ?」


「今の状態で深部へもう一度入る」


ダリオは少し黙った


反対されるかと思った


「俺もそれがいいと思う」


意外だった


「進化しろって言うかと思った」


「強くなるならな」


「じゃあ」


「戻るのが遅くなるかもしれない」


同じ考えだ


「今の俺たちは、深部まで行って帰る経路を作った」


ローデンが言う


「セイジも今の身体で通れる」


「進化して体格変わったら」


「狭いところ確認し直す」


「それもあるのか」


考えてなかった


狭い横道や岩の隙間、縄で下りた場所もある


もし今より身体が大きくなれば、通れない場所が出る可能性もある


「魔力感覚も」


ミラが言う


「今の記録と比較できなくなるかもしれない」


「すぐ慣れればいいけど」


「分からない」


進化後の状態は未確認だ


なら、今のまま行く理由はある


エナだけは少し考えていた


「条件」


「何」


「今日は入らない」


「うん」


「最低一日は休む」


「分かった」


「次の探索前にもう一度確認」


「分かった」


「深部で震えが出たら、その時点で戻る」


「分かった」


「強い魔力変動が続いたら」


「戻る」


先に答えた


エナがうなずく


「それなら」


決まった


次の探索は今の俺のまま行く


LEVEL30


ハイホブゴブリンメイジ


進化候補は保留


目的は一つ


あの大きな反応に近づき、魔力流が集まる先を確認する


原因を決めるためじゃない


まず見るため


それから考える


その日は第二水場で準備に使った


足りなくなった布、縄、水、救護用品、小さな道具、灯りを全部確認する


俺の空間収納だけには集めず、前と同じようにダリオ、ローデン、エナ、ミラへ分けて持つ


ルッカは追跡と移動を邪魔しないよう、荷物を増やしすぎない


俺も必要なものだけだ


準備の途中、他のゴブリンが一体来た


前に会った個体かどうかは分からない


水を飲み、棚に置かれていた壊れかけの小さな道具を見て、別の木片を置いた


交換なのか、たまたまなのかは分からない


俺は声をかけなかった


向こうも俺を見るだけで、少しして去った


「また来た」


ルッカが言う


「前のやつ」


「分からない」


「似てる」


「似てても決めない」


ルッカは少し考え、


「うん」


と答えた


それでいい


第二水場に来るゴブリンが増えたようには感じる


でも誰が何度来たかまで全部分かっているわけじゃない


必要な時に来る


それくらいでいい


準備が終わった後、俺は一人で水場の端に座った


研究をするつもりはない


エナにも止められている


ただ水を見る


流れて、溜まり、少しあふれて排水へ流れる


前に《水球》と《土成形》を同時に使って調整したことを思い出す


異なるものを同時に動かす


今はもっとできる


火と風は一つの構造へまとめられる


複合魔法


魔法を構成要素へ分け、必要な部分を変え、再配置して一つに組み直す


そこまで来た


でも、昨日考えたことは少し違う


既にある魔法をどう変えるかではなく、必要な作用は何か


そこから考える


まだ考え方だけで、何も作っていない


作る必要も今はない


大迷宮で困っているわけじゃない


今ある魔法で戦える


それでいい


「何もしないって言った」


後ろからエナ


「してない」


「考えてる」


「考えるのも駄目なのか」


「疲れるなら」


「これは疲れない」


エナが隣へ座った


珍しい


「進化しないの」


「今は」


「怖い」


「進化が」


「うん」


俺は少し考える


「怖くないって言ったら嘘かな」


今まで二回やっている


死んではいない


むしろ強くなった


でも毎回、身体が変わった


自分なのに、自分じゃない感覚が少しある


最初は特にそうだった


「でも嫌じゃない」


「なら」


「今じゃないだけ」


エナは水を見る


「大迷宮が終わったら」


「その時考える」


「人間になりたい」


突然だった


俺は少し驚いた


昔、かなり前、人間の身体に戻れたらと考えたことはある


転生してゴブリンになり、最初はそればかり気にしていた


人間に戻れる方法が何かあるかもしれない


そう思っていた


今も、完全にどうでもいいわけではない


「分からない」


俺は答えた


「なれる方法があるかも分からないし」


「なれたら」


「それも分からない」


自分でも少し笑う


分からないばかりだ


でも本当にそうだ


「今の身体が嫌いかって言われたら、前ほど嫌じゃない」


腕を見る


緑の肌


人間とは違う手


魔力を流す


《火弾》《治癒》《水球》


全部この身体で覚えた


ルッカと森を歩き、岩陰拠点を作り、第二水場へ通い、大迷宮の深部まで来た


「慣れた」


「それだけ?」


「それだけじゃないかも」


でも今ここで答えを出す必要はない


エナもそれ以上聞かなかった


しばらく水の音を聞く


「今日は休む」


エナが立ち上がる


「はい」


「研究しない」


「はい」


「夜更かししない」


「子どもじゃないぞ」


「するから」


反論できない


その日は早めに岩陰拠点へ戻った


ルッカも一緒だ


食べて、片づけて、寝る


進化はしない


STATUSも見ない


LEVEL30であることも、進化候補が表示されたことも確認済みだ


今はそれで十分


次の朝、身体は軽かった


さらに一日休んだ後、もう一度全員で第二水場へ集まる


エナが状態を確認する


ルッカ、ダリオ、ローデン、ミラは問題なし


俺も手の震え、頭痛、疲労はなく、魔力も回復している


「行ける」


エナが言った


その一言で決まる


俺たちは大迷宮へ向かった


同じ六人


同じ役割


ただし、前と一つだけ違う


俺はLEVEL30になっている


でも進化していない


身体は同じ


魔力感覚も同じ


だから、前に感じたものと比べられる


大迷宮へ入り、浅い場所から中へ、さらに深く進む


目印と安全確保地点を全部たどる


以前より早い


でも急がない


途中の確認は省かない


深くなるにつれて、以前と同じように魔力が濃く感じられる場所や変化の大きい場所が増えていく


袋状の安全確保地点も問題なし


そこからさらに奥へ進む


魔物の反応は前より少ない


ただ、外向きの痕跡は増えていた


「新しい」


ルッカが言う


「何体」


「いくつか」


「大型」


「一つある」


「また」


「うん」


ミラが記録する


俺は魔力を見る


流れは前と似ている


奥や下へ向かうものがあり、戻るものもある


ただ、


「強い」


「前より?」


ミラが聞く


「少し」


「全体?」


「この辺は」


変化は大きくない


でも奥へ向かう流れが前より分かりやすい


次の安全地点で休憩し、さらに進む


魔物が少ない広い空間


前に巨大な魔物をやり過ごした場所だ


今はいない


痕跡だけが浅い側へ続いている


「まだ戻ってない」


ルッカが言う


「あの大きいやつ」


「同じか分からない」


「そうだった」


また間違えそうになる


前に見た個体が戻っていないとは限らない


同じ種類が別にいるかもしれない


言えるのは、今この空間に大型が居着いている痕跡がないこと


それだけだ


俺たちは裂け目状の通路へ着いた


ここから先は、まだ入っていない


「状態」


ダリオが言う


エナは全員問題なし


ローデンは入口が前と同じ


ルッカは匂いが奥


ミラは戻る時間もあると確認する


俺も《魔力探査》を使う


近くに大型反応はない


奥には大きな魔力反応があり、かなり近い


そして、その周辺へ魔力が流れている


「行ける」


ダリオがうなずいた


俺たちは裂け目状の通路へ入った


幅は広く、天井も高い


でも両側の壁が内側へ傾いていて、上へ行くほど狭くなっている


床は比較的平ら


最初の数十歩は問題ない


俺は探査を前へ伸ばす


魔力が濃い


前より濃い


いや


場所が変わったからだ


同じ地点じゃない


比較はできない


「流れが強い」


ミラが聞く


「かなり」


左右の壁や床下から、奥へ向かう流れを感じる


戻る流れもあるが弱い


ここでは明らかに奥向きが多い


「一つに集まってる?」


「一点かどうかは、まだ分からない」


俺はさらに探る


複数の流れが同じ方向へ向かっている


その先には大きな反応があり、距離が近づいてきた


輪郭はまだ曖昧だ


ただ、前までのような広がった反応だけではなく、中心らしい強い部分がある


「セイジ」


エナの声


「大丈夫」


「顔」


「集中してるだけ」


「手」


見せる


震えなし


「続ける」


「うん」


道が緩やかに下る


その先で壁の形が変わった


左右に細い亀裂があり、そこから魔力が漏れるように感じる


「ローデン」


「見てる」


亀裂は構造的にすぐ危険というわけではないらしい


「すぐ崩れる感じはない」


「魔力、そこから来てる」


俺が言う


ミラが近づく


「流れてる?」


「うん、奥へ」


細い流れが何本もある


まるで小さな水路が大きな川へ合流するみたいだ


もちろん、本当にそういう構造かは分からない


でも見え方は近い


さらに進むと、別の亀裂があり、その次にも続いている


「増えてる」


俺が言う


「何が」


ルッカが聞く


「魔力が入ってくる場所」


壁や床、天井付近など、いろいろなところから奥へ向かっている


「匂いも」


ルッカが言った


「強くなった」


「大きいの?」


「うん」


ダリオが前を見る


「近いな」


誰も急がない


むしろ速度を落とし、一歩進んでは魔力、探査、痕跡を確認していく


途中で新しい傷が床にあった


大きく、深い


ルッカが見る


「奥向き」


「珍しいな」


今まで外向きが多かった


「新しい」


「最近奥へ行った大型がいる?」


「一つ」


それも残す


全部が逃げているわけではない


奥へ向かうものもいる


その先で通路が少し広がった


左右へ小さな空間があり、中央はそのまま下へ続いている


俺は止まった


魔力がかなり強い


「ここ」


ミラが見る


「何」


「前に感じた揺れに近い」


まだ揺れてはいない


ただ、魔力が溜まっているような感覚がある


「大きな変動が来る?」


ダリオが聞く


「分からない」


「予兆?」


「それも分からない」


でも嫌な感じはある


俺は探査範囲を自分の周囲と前方だけに狭める


広げすぎない


エナも俺の近くへ来る


「無理しない」


「分かってる」


ルッカが前へ鼻を向ける


「何かいる」


俺も反応を拾う


一体


大きい


動いていない


かなり近い


「いる」


「大きさ」


「大型」


「前の巨大なのより」


「小さいと思う」


足音はない


こちらへ来ない


ダリオが少し前へ出る


「見えるところまで」


全員ゆっくり進む


曲がり角の先に、大型魔物が横たわっていた


死んでいるように見える


でも俺は攻撃しない


探査すると、弱い反応がまだある


生きている


「生きてる」


エナが小声で言った


どうやら見ても分かるらしい


呼吸は遅く、身体は傷だらけで外皮も裂けている


「戦った傷?」


俺が聞く


エナは首を振る


「分からない、でも古い傷と新しい傷がある」


ルッカが匂いを取る


「怖がってない」


「弱ってる?」


「たぶん」


近づくことを考えた瞬間、ダリオが止める


「必要ない」


その通りだ


治療する


そう考えた瞬間もあった


でも相手は大型魔物


近づけば襲う可能性がある


《治癒》を使う理由もない


今の目的は奥だ


その魔物を避けて通れる道があるか


ローデンが左を見る


細い隙間


「通れる」


「刺激しないで行く」


一人ずつ、静かに、魔物から距離を取って進む


俺が通る時、目が開いた


大きな目がこちらを見る


俺は止まる


魔物も動かない


互いに見る


攻撃しない


俺はゆっくり歩き、通り過ぎた


後ろから来たルッカも無事に抜ける


全員が離れてから、俺は息を吐いた


「怖かった」


「顔」


ルッカが言う


「何」


「怖い顔してた」


「そりゃ怖いだろ」


「魔物も」


「分かるのか」


「分からない」


なんだそれ


少しだけ笑う


でも声は小さく


さらに下った先で、突然周囲の魔力が動いた


「来た」


俺は足を止める


前とは違う


強い


でも押し寄せるというより、引かれる


壁や床、空気、俺の周りにある魔力まで、一気に深い側へ向かう


俺自身の魔力が持っていかれるわけではない


でも周囲が動く


「何」


ダリオが聞く


「奥へ流れてる」


「強い?」


「かなり」


俺は探査を絞り、中心を追う


奥


下


その先にある大きな反応が一瞬強くなる


次に流れが戻った


今度は逆だ


奥から周囲へ押し返すように魔力が広がる


「下がれ」


ダリオが叫ぶ


俺たちは壁際へ寄る


俺の魔力構造がざらつく


手は震えていない


でも魔法を出したら乱れそうな感覚がある


数呼吸


それで終わった


周囲は濃いまま、流れだけが少し落ち着く


「大丈夫?」


エナ


「大丈夫」


今度はすぐ答える


手の震えなし


呼吸は少し速い


頭痛なし


「続けられる」


「少し休む」


エナが言う


反論しない


すぐ近くの壁際をローデンが確認し、俺たちは座った


誰も話さない


今の変動は、前に見たものより方向が分かりやすかった


奥へ引き、奥から戻る


一度だけだ


「今の」


ミラが紙を出す


「流れ、かなりはっきりしてた」


「うん」


「奥へ集まって、戻った」


「そう見えた」


「どこまで」


「分からない」


俺は奥を見る


「でも、大きな反応の方向」


それは重なっている


「関係ある?」


ダリオが聞く


「可能性は高いと思う」


初めてそこまで言った


今までより近い


流れを直接追えた


奥へ集まり、その方向で大きな反応が強くなり、その後戻る


偶然かもしれない


でも関連を疑う理由は十分ある


「次の変動来たら」


エナが言う


「戻る」


「うん」


「今は」


「休んでから判断」


ダリオが答える


少し休み、水を飲んで呼吸と手を確認する


問題なし


「行ける」


エナが言った


ダリオが全員を見る


「短く」


さらに奥へ進む


道はもうかなり下っている


魔力の濃さは、これまで確認した場所の中でも特に強い


ただ、さっきの変動後は比較的静かだ


ルッカが鼻を動かす


「匂い」


「強い?」


「大きいのも、でも違うのもある」


「何」


「分からない」


俺も同じだ


大きい魔力反応があり、その周囲に別の広がりもある


場所そのものが魔力を持っているような感覚で、一個体だけでは説明しにくい


進み、曲がり、また下る


その先で前方が明るく見えた


火じゃない


普通の光でもない


薄く、青白いようにも緑にも見える何か


「何だ」


俺が小さく言う


ミラも見る


「魔力光」


「そんなのある?」


「濃い場所で見えることはあるって資料には」


「ここまで?」


「分からない」


近づく


通路の先に大きな空間がある


まだ中には入らない


入口だけ


そこから、空間の中央に何か大きなものが見えた


かなり遠い


岩ではない


建物でもない


形が不自然で、周囲の岩盤とは違う


その周りを淡い光が流れている


いや


光というより魔力だ


俺にはそう分かる


複数の流れが集まり、離れ、また戻っている


「セイジ」


ミラの声が少し震えた


「見える?」


「うん」


《魔力探査》を使う


広げすぎず、中央へだけ


大きい


今まで感じていた広がった反応の一部


いや


中心に近いもの


ここからでも強い


ただ、あの遠くの大きな魔力反応とは完全には重ならない


もっと奥


さらに先にも強い反応がある


「一つじゃない」


俺は言った


「何が」


ダリオ


「大きな魔力」


中央の構造らしいもの


その周囲に集まる魔力


さらに奥には、別の大きな反応がある


「二つ?」


「今はそう見える」


ミラが空間を見る


「中央のあれ」


「何か知ってる?」


俺が聞く


ミラはすぐ答えなかった


資料を思い出している顔だ


「似た記述はある」


「何」


「でも、ここで決められない」


それでいい


「近づけば」


「確認できるかもしれない」


ダリオが周囲を見る


「今日は」


俺は大空間を見る


広い


中央までかなり距離がある


入れば戻る時間が増える


さらに奥の反応もある


「入らない」


俺から言った


ダリオがうなずく


「正解」


「明日じゃないぞ」


エナが言う


「分かってる」


「一度戻る」


「うん」


ローデンが入口を確認する


「次、ここから」


目印を置き、ミラが位置を記録する


ルッカは匂いを取る


「奥、大きい」


「中央のやつ?」


「分からない、もっと向こう」


俺と同じだ


中央の構造らしいものとは別に、さらに奥に大きな存在がいる可能性はある


でもまだ見ていない


「戻ろう」


俺は言った


大空間へ背を向ける


惜しくはない


むしろ、ここで止まれることに安心した


今日分かった


魔力流の先に何かがある


中央の構造らしいもの


さらに奥の大きな反応


今まで一つに見えていたものが、少し分かれた


まだ名前はない


正体も分からない


原因も分からない


でも次に見る場所は決まった


帰る


休む


記録を整理する


ミラの資料も確認する


それから戻る


道を引き返しながら、俺は一度もSTATUSを開かなかった


LEVEL30


進化候補


今は関係ない


俺が知りたいのは、もっと単純だ


あの場所は何なのか


そして、そのさらに奥にある大きな反応は何なのか


そこまで見てから、次を考えればいい

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