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帰れる道1

第57回 帰れる道1


それから何日か、森には雨が降り続いた


最初の一日は弱い雨だったが、次の日も、その次も完全には止まず、岩陰拠点の外へ出るたびに湿った空気と濡れた土の匂いがまとわりついた


ようやく雨が上がった朝、俺とルッカが第二水場へ向かう途中でも、森はいつもとかなり違っていた


葉から水滴が落ち、踏んだ地面が柔らかく沈む


細い枝は水を含んで垂れ、普段なら乾いている窪みにまで水が溜まっている


「滑るな」


俺が言うと、前を歩いていたルッカが振り返った


「ゆっくり」


「分かってる」


返事をした直後、足を滑らせた


転ぶほどではなかったが、ルッカが無言でこっちを見る


「今のは地面が悪い」


「ゆっくり」


「はい」


雨上がりの森でルッカに言い訳をしても勝てそうにない


第二水場へ着くと、すでに何人か集まっていた


いつもより空気が重い


雨のせいだけではない


ダリオとローデンが森へ続く方向を見ながら話していて、ミラはハルナ側から来た人たちに何か聞いている


エナは濡れた布や荷物を確認していた


「何かあった?」


俺が聞くと、ダリオがこちらを見る


「道が一つ使えない」


「道?」


ルッカの表情が変わった


ダリオが森を指す


「昨日までは通れたらしい、今朝見に行った奴が戻ってきた、途中の斜面が崩れてる」


ルッカはすぐ森へ向かおうとしたが、ダリオが止めた


「一人で行くな」


「見るだけ」


「地面がまだ緩い」


ルッカは少し不満そうだったが止まった


俺も森を見る


第二水場から採取や往来に使っている道はいくつかある


一つ使えなくなっただけなら、別の道を使えばいいようにも思える


「他の道?」


俺が聞く


ダリオは首を振った


「それだけなら問題は小さい」


ミラが話へ加わる


「向こう側に人がいるみたい」


「向こう?」


「崩れた場所の先」


ハルナ側から来ていた人が説明し始めた


長くなると分からないところが増えるので、ミラが途中で短く言い直してくれる


雨が弱くなった頃に森へ入った人がいる


採取して戻る予定だった


別方向から第二水場へ向かっていた人もいるらしい


さらにフェルナの方角から来ていた少人数も、この道を使う可能性がある


誰がどこにいるか、まだ全部は分からない


「戻れない?」


「崩れ方による」


ダリオが答える


「まず見る」


俺は頷いた


まだ誰かが完全に取り残されていると決まったわけではない


別の道へ回っているかもしれない


崩れた場所を避けて、すでに戻っている者もいるかもしれない


それでも確認は必要だ


ルッカが森へ目を向ける


「行く」


今度はダリオも止めなかった


「全員で近くまで行く、危なければ戻る」


俺たちは必要な物を持つ


ローデンは縄と簡単な工具


エナは救護用品


ミラは聞き取った人数や方向をもう一度確認する


俺も空間収納に入れてある物を確かめた


縄


清潔な布


小さな容器


小型の道具


救護に使う物


それから、それぞれが途中で必要になるかもしれない物の一部を預かる


入れられるものだけだ


大きな木材までは試していないし、今ここで無理に確かめる理由もない


「これも」


ローデンから小さな工具を渡される


「分かった」


「すぐ出せるようにしとけ」


「うん」


最近は種類が増えても、何を入れたか以前より把握しやすい


それでも急ぐ時に迷わないよう、一度頭の中で確認する


縄


布


小さな道具


救護用品


必要なら出す


それでいい


森へ入ると、ルッカが先頭になった


普段使う道なのに、雨の後は別の場所みたいだった


水が流れた跡


崩れた土


新しく倒れた枝


いつも見えていた地面の印が消えている場所もある


しばらく進んだところで、ルッカが急に止まった


「ここから駄目」


目の前の道は、一見すると通れそうだった


だがルッカは地面を指す


土が斜めにずれている


少し先では木の根が半分露出していた


「崩れる?」


俺が聞く


「かも」


ダリオも確認する


「使うな」


迷わない


俺は土魔法で固められないか考えたが、すぐには手を出さなかった


この範囲全部がどこまで緩んでいるのか分からない


表面だけ固めて、その下が崩れたら意味がない


「土魔法?」


ローデンが俺を見る


「できるけど、どこまで悪いか分からない」


「なら触るな」


「うん」


前なら、とりあえず《土締め》を使っていたかもしれない


今は違う


分からない場所へ、分かったつもりで魔法を使わない


少し迂回しながら進むと、ようやく崩れた場所が見えた


斜面の一部が滑り落ちている


木が数本倒れ、土と枝が道を塞いでいた


山が消えたような大崩落ではない


ただ、いつもの道として歩くには十分危ない


崩れた土の上にはまだ水が染み出している


「向こう」


ルッカが言う


崩落の反対側


かなり離れているが、人影が見えた


一人ではない


こちらに気づいたらしく、手を上げる者がいる


ミラが声を張る


「動かないで!」


返事が飛んでくる


俺には全部聞き取れない


ミラが耳を澄ませる


「三人いる、荷物もあるって」


「怪我?」


エナが聞く


ミラが声を返す


少しやり取りしてから、


「大きな怪我はなさそう、でも濡れて疲れてる」


と教える


三人


まず確認できた


だがそれで終わりではなかった


ルッカが別の方向を見る


「まだ跡ある」


「人?」


「こっち」


崩落地点から少し離れた森側


足跡らしい


俺にはほとんど分からない


ルッカは地面を追い、ダリオもついていく


俺たちは危険な場所へ入りすぎない距離で待つ


しばらくして二人が戻ってきた


「別の人間の跡だ」


ダリオが言う


「向こう側?」


「崩れた先へ続いてる」


ミラが朝に聞いた話を確認する


ハルナ側から来ている人とは別に、フェルナ方向から第二水場へ向かっていた少人数がいる可能性がある


どこにいるかはまだ見えていない


「探す?」


俺が聞く


「探す、ただし順番だ」


ダリオが崩落を見る


「まず、見えてる三人を安全な場所へ動かす方法を考える、そのあと他を確認する」


ローデンが崩れた地面を見ている


「真ん中を越えるのは駄目だ」


「作れる?」


俺が聞く


「今ここを直すのは時間がかかる、別の場所から回った方が早い」


ルッカも頷く


「細い道ある」


「安全?」


「見る」


ルッカが行こうとすると、ダリオが俺を見る


「セイジ、ルッカと行け」


「分かった」


全部やらなくていい


でも必要な場所では動く


俺とルッカは崩落から少し離れ、迂回できそうな方向を確認した


《魔力感知》も薄く広げる


雨上がりの森は気配が散らばっている


小さな反応


遠い反応


それだけで種類までは分からない


ただ、近くに危険そうな大きな反応がないかを見ながら進む


ルッカが細い場所へ入った


俺も続く


道と呼ぶには狭い


木の根を越え、少し下がり、また上る


何人も荷物を持って通るには難しそうだ


「ここ、人通れる?」


「一人ずつ」


「荷物は?」


ルッカが首を傾げる


「大きいの無理」


戻ってローデンへ伝える


「人、一人ずつ、荷物大きいの無理」


「足場を少し作れば使えるかもしれん」


ローデンが縄を受け取ろうと手を出した


俺は空間収納からすぐ取り出す


「これ?」


「それだ」


続けて小さな工具も出す


「これも?」


「使う」


必要な物を探して止まる時間がほとんどない


それだけでもかなり助かる


俺たちは細い迂回路へ戻った


ローデンが木の根と地面を見て、縄を固定する場所を決める


俺は《土成形》で足を置く部分を少し広げる


全部を作り変えない


必要な幅だけ


柔らかすぎる場所には《土締め》を使うが、ローデンとルッカが確認した部分だけにする


「そこ、もう少し」


ローデンに言われる


「こっち?」


「そう」


少しだけ土を動かす


「次?」


「そこは触るな、根が支えてる」


俺にはただの邪魔な根に見える


でも勝手に消さない


少し前なら危なかった


「風いけるか?」


「何に?」


「向こうの濡れた葉、揺らして水落とせ、通る時顔にかかる」


それくらいならできる


弱い《風圧》


枝を折らない程度に揺らし、水滴を落とす


地味だ


でも、今日はそういう魔法ばかり使う


しばらく作業していると、崩落の向こうから別の声が聞こえた


ミラが呼んでいる


俺たちは戻る


「別の人たち見つかった!」


どこだ


崩落から少し離れた高い場所


木々の隙間に二人いる


フェルナ方向から来ていた者らしい


こちらへ向かう途中で道が崩れ、動けなくなっていた


「全部で五人?」


俺が聞く


ミラが頷く


「今見つかってる人は五人」


今見つかっている


その言い方が大事だ


他にいないと決まったわけではない


「ゴブリン」


ルッカが突然言った


「どこ?」


指された方を見る


崩落のさらに奥


三つの影がある


ゴブリンだ


三体


雨で濡れた枝の間からこちらを見ている


以前何度か接触した三体と同じ可能性はある


だが距離がある


見た目だけで断定はできない


「向こう側?」


「うん」


人間とは別の場所だ


三体も崩落を避けて動いているように見える


一体がこちらへ向かって腕を動かした


何かを指している


「何?」


俺には分からない


一体が森の右側を指す


次に自分たちが少しそちらへ動く


戻る


また指す


前に俺たちが「来る」「行く」を伝えようとした時に似ている


「道?」


俺が言う


ルッカはすぐ動いた


「見る」


「一人で行くな」


今度は俺が止める


ルッカが俺を見る


「俺も行く」


二人で、三体が示した方向をこちら側から確認する


すぐには繋がらない


少し回り込む必要がある


途中でルッカが足を止めた


地面を見る


「通った跡ある」


「三人?」


「分からない」


人かもしれない


動物かもしれない


三体自身かもしれない


それでも細い経路があることは確認できた


ダリオとローデンにも見てもらう


「使えるか?」


ダリオが聞く


ルッカは、


「一部だけ」


と答える


ローデンも地面を見る


「全部は無理だ、途中で足場がいる」


三体が示したから使うのではない


こちらで確かめて、使える部分だけ使う


前の救助と同じだった


「三人、道知ってる?」


俺が言う


ミラが首を傾げる


「そうかもしれないね」


「かも」


「うん、まだそこまで」


三体は向こう側にいる


人間五人も別々の場所にいる


荷物もある


この全員を一度に第二水場まで戻すのは難しい


ダリオが人数を確認する


「まず集める」


「どこ?」


崩落から少し離れた高い場所を指す


水が流れ込まず、地面も比較的安定している


「一度あそこへ集める、そこから戻る道を決める」


エナが言う


「濡れてる人を先に休ませたい、足元が悪いところを何度も歩かせない方がいい」


「そうする」


ダリオが決める


俺は五人へどう伝えるか考える


ミラがいるが、こちら側と向こう側で離れている


声が届く場所と届かない場所がある


俺も使える人間語で補助する


「三人、先に行く!」


崩落近くの三人へ声を出す


自分で指を三本上げる


次に一時的に集まる場所を指す


「こっち!」


ミラが細かい説明を続ける


もう二人には、


「ここ待つ!」


動かないよう伝える


「道、まだ危ない!」


全部綺麗な人間語ではない


でも意図は伝わる


一人が手を上げて返した


迂回路の整備を続ける


ローデンが固定場所を決め、俺が土を補う


ルッカが先を確認する


ダリオが人を通す順番を考える


エナは一時地点で使う布や水を準備する


ミラは五人の状態や荷物を聞き取る


俺は必要な場所を行き来する


前みたいに全部へ首を突っ込んで走っているわけではない


呼ばれたところへ行く


土が必要なら土


水なら水


縄なら空間収納


分からなければ聞く


それだけだ


最初の三人を細い道へ誘導する時、俺は先に通ろうとした


ルッカに止められる


「私、先」


「危ない?」


「道見る」


「ああ」


俺は人間側へ向く


「ルッカについて行く」


ミラも同じように伝える


一人ずつ


急がない


濡れた地面を踏み外さないように進む


途中で一人の足が滑った


縄を掴む


ローデンが支える


俺も腕を伸ばしたが、ダリオに、


「そこ動くな、足場崩れる」


と止められた


俺まで動けば危ない


その場から動かず、土だけを少し締める


踏んでいる場所を安定させる


「ゆっくり」


エナの声


人間は体勢を戻す


一人


二人


三人


時間はかかったが、最初の三人が一時地点へ着いた


エナがすぐ状態を見る


「怪我は?」


「ない」


「冷えてる?」


「少し」


俺は空間収納から清潔な布を出す


濡れた顔や手を拭くために渡す


持ってきていた小さな容器も出す


水を用意する


食べる物については、本人たちが携行していたものを確認し、濡れていない分を少し口にしてもらう


第二水場から食料を持ち出してきたわけではない


必要な分を、それぞれが持っていた物から使う


「次、二人」


ダリオが言う


今度は高い場所にいる二人だ


そこへ向かう途中、三体のゴブリンがまた動いた


一体が細い道を進む


別の一体が少し後ろ


三体目は周囲を見る


人間側の二人も警戒している


俺は間に入りすぎない


「攻撃しない」


誰に向けた言葉なのか分からない


それでも人間側には聞こえた


「でも、距離」


ダリオも人間たちへ距離を取るよう指示する


三体は人間のすぐ近くへは寄らない


ただ、細い道の先へ進む


一体がぬかるんだ場所を避けて横へ曲がる


ルッカがそれを見る


同じ場所を確認し、


「こっち」


と俺たちへ知らせる


結果的に三体が通った場所が役に立つ


でも安全だと決めたのはルッカだ


人間二人も移動を始める


三体は少し先


人間は後ろ


その間にルッカ


俺とダリオがさらに後ろ


初めて、ゴブリンと人間が同じ方向へまとまって動いている


仲間だからではない


同じ場所へ戻る必要があるだけだ


それで十分だった


「止まって」


先頭のルッカが急に言った


全員が止まる


俺も《魔力感知》へ意識を向ける


近い


森の右側


複数


「何かいる」


「数は?」


ダリオが聞く


「何匹か、近い」


ルッカも同じ方向を見ている


三体のゴブリンも武器を持ち直した


危険生物が姿を見せた


四足


雨で濡れた毛


一体


その後ろに二体


さらに木の陰に一体


全部同じ種類かは分からない


こちらへ向かっている


「戻る?」


俺が聞く


ダリオが周囲を見る


後ろは細い道


人間がいる


横はぬかるみ


前には危険生物


「ここで短く止める、追うな」


目的は戦うことではない


道を空けることだ


俺は《火弾》を作る


一つ


二つ


三つ


この前より、作ること自体には迷いが少ない


ただ今日は、火だけへ集中していられない


足場も見ないといけない


人間の位置


ルッカ


三体のゴブリン


逃げ道


全部が近い


「左から来る!」


ダリオの声


一発を左へ


放つ


命中


一体が倒れる


残り二発


正面から一体


その後ろにもいる


二発を別々へ撃つ


一発は正面


命中


もう一発は木の脇から出た個体へ


外れはしない


当たり、倒れる


四体目が止まる


逃げるかと思ったが、こちらへ向きを変えた


俺は次の《火弾》を作る


「セイジ、足元!」


ローデンの声


俺が立っている横から水が流れ、土が削れている


このまま動けば足場が崩れるかもしれない


火弾を維持したまま《土締め》へ意識を切り替えようとして、やめる


無理に同時に全部やらない


まず《火弾》


四体目が近づく


放つ


命中


倒れた


そこで火を消す


すぐ《土締め》


削れ始めた場所だけを締める


「そこまで!」


ローデンの声で止める


「人、動かす!」


ダリオが叫ぶ


戦闘は終わり


追わない


周囲を《魔力感知》で確認する


遠い反応はある


近くにはすぐ来そうな大きなものはない


「今、行く!」


俺が人間側へ言う


「道、まだ危ない、ゆっくり!」


二人が動く


三体のゴブリンも先へ行く


そのうち一体が少し振り返り、人間側を見る


意味は分からない


俺たちは一時地点まで全員を移動させた


五人


三体のゴブリン


俺たち


荷物の一部


全部ではない


崩落の向こうにはまだ持ち出せていない荷物も残っている


人を優先した


荷物は後だ


一時地点へ着くと、エナが人間たちを確認する


負傷は大きくない


ただ雨で濡れ、移動で疲れている


三体のゴブリンは人間から距離を取った場所へ座った


人間側も近づかない


でも逃げもしない


俺は共有する必要がある物を空間収納から出す


縄


布


小型の道具


救護用品


使い終われば戻すものもある


誰が使うか決めていなくても、必要な人へ渡す


俺一人のための収納というより、今日はみんなの荷物の一部を持っている感じだった


ただ、どこまで入るかはまだ分からない


無理に詰め込んだわけでもない


今まで入れて使えている範囲の物を運んだだけだ


「水」


エナに言われ、《水球》で必要な分を出す


少しずつ


一気に多く作らない


今日は朝から何度も魔法を使っている


土


風


火


水


《魔力感知》


使うたびに目的を切り替える


前ならもっと頭が重くなっていた気がする


疲れてはいる


でも、まだ続けられる


「セイジ、大丈夫?」


ミラに聞かれる


「大丈夫、でも疲れた」


「まだ帰れてないからね」


「うん」


その通りだ


一時地点まで集めただけ


ここは帰る場所ではない


夕方が近い


空が少し暗くなり始めている


ダリオとルッカが次の道を確認しに行き、ローデンも途中まで同行する


三体のゴブリンのうち一体も、少し離れて同じ方向を見ている


俺は休みながら待った


しばらくして、三人が戻ってくる


表情がよくない


「どうした?」


俺が立つ


ルッカが先に答えた


「道、駄目」


「さっきの道?」


首を振る


「帰る方」


ダリオが続ける


「予定してた迂回路の一部も塞がってる」


雨で流れた土と倒木


完全に通れないわけではないが、今いる人数をそのまま通すには危険らしい


ローデンが地面へ簡単な形を描く


「ここまでは行ける、問題は最後だ」


俺は図を見る


全部は分からない


でも、第二水場へ戻るにはもう一つ越えないといけない場所があることだけは分かった


「今日、帰れる?」


俺が聞く


ダリオはすぐには答えなかった


空を見る


「帰す」


短い


「暗くなる前に動く、無理なら途中で止める」


エナが人間たちを見る


「疲れてる人を先にした方がいい」


「そうする」


三体のゴブリンもこちらの様子を見ている


話が通じているかは分からない


俺は水場の方向を指す


「帰る」


次に今いる場所を指す


首を振る


「ここ、まだ」


三体のうち一体が森の方を見る


短く声を出す


意味は分からない


それでも、三体もこの場所へ留まりたいわけではないように見えた


俺はSTATUSをまだ確認していないことに気づいた


戦闘があった


魔法もかなり使った


でも戦闘中に見る必要はない


今なら少し時間がある


俺はSTATUSを開く


NAME セイジ


RACE ホブゴブリンメイジ


LEVEL 18


HP D


MP C-


筋力 E


耐久 D


敏捷 D


器用 D+


精神 D+


魔力 D+


SKILL

《魔力感知》

《魔力制御》


TITLE

なし


「十八」


前に確認した時はLEVEL16だった


今は18


途中のどこで変わったのかは分からない


倒したどの個体で変わったのかも分からない


MPはC-


精神はD+


そこも前に確認した状態から変わっていた


朝から長く魔法を使い、切り替え続けたことと関係があるのかもしれない


でも、それも今は分からない


分かるのは、確認した今の状態だけだ


「上がった?」


ルッカが戻ってきていた


「十八」


「また上がった」


「うん」


俺はSTATUSを閉じる


嬉しくないわけではない


でも、今は数字を眺めている場合ではない


まだ全員帰っていない


俺は周囲を見る


ハルナ側から来た人


フェルナ方向から来た人


ルッカ


エナ


ダリオ


ローデン


ミラ


少し離れた三体のゴブリン


誰がどっち側かなんて、今はどうでもよかった


ここにいる


帰れていない


なら帰す


それだけでいい


「次、何する?」


俺が聞く


ダリオが最後の区間を指す


「道を作る」


ローデンが続ける


「完全に直す必要はない、今日通れるだけでいい」


ルッカは別方向を見る


「先、見る」


エナは疲れている人を座らせる


ミラは人間側へ説明を始める


俺は自分の手を見る


土を動かせる


固められる


風も使える


必要なら戦える


でも全部一人で決める必要はない


「俺、どこ?」


ローデンが答える


「俺と来い」


「分かった」


三体のゴブリンの一体が立ち上がった


残り二体も続く


人間側に少し緊張が走る


だが誰も武器を抜かない


三体はルッカの方を見る


ルッカが森を指す


「行く?」


意味が通じたかは分からない


一体が先へ進む


ルッカも距離を空けて続く


人間たちはそれを見る


今朝なら、こんな並びになるとは思わなかった


でも、もう驚いている時間もない


日が落ちる前に、帰れる道を作らないといけない


俺はローデンについて歩き出す


後ろではエナが人の状態を確認し、ミラが説明を続け、ダリオが移動する人数と順番を考えている


一時地点に荷物をまとめ、人を休ませる


ここは安全な場所ではある


でも、帰る場所ではない


第二水場へ戻る人もいる


ハルナへ戻る人もいる


フェルナの方へ行く人もいる


三体のゴブリンがどこへ戻るのか、俺は知らない


それでも今は、ここから先へ進まなければ誰も帰れない


雨で壊れた道なら、今日通れる分だけ作ればいい


明日のことは、今日全員が帰ってから考える


俺はまだ湿った森の先を見た


「帰ろう」


誰に向けた言葉かは、自分でも分からなかった

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