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居場所を守る1

第32回 居場所を守る1


朝、第二水場へ着いたとき、昨日とは違う音がしていた


槌で木を叩く音、土を踏み固める音、人の話し声、水の流れる音


それらが全部混じっている


「なんか工事現場みたいやな」


「こうじ?」


ルッカが聞く


「物作ってる場所ってこと」


「家?」


「家にはせんで」


昨日決めた通り、第二水場を囲うわけではない


高い壁も作らない


逃げる道は空ける


森側から真っ直ぐ突っ込まれにくくするだけで、そのための簡単な障害物を作っている


俺たちが着く前から、ローデンはすでに作業を始めていた


倒木を短く切ったもの、太い枝、縄、石


使えるものを周囲から集めている


「おはよう」


俺が声をかける


ローデンは手を止めずに返事をする


「遅い」


「まだ朝やろ」


「俺はもっと早く来た」


「それ基準にされたら困るねん」


近くではダリオが地面へ線を引いている


昨日も見た、人間側への退避路、森側から魔物が来た場合の接近方向、障害物を置く位置、何も置かない場所


細かく決めている


エナは少し離れた簡易屋根の下で布や薬草を整理していた


怪我人が出た場合に、一時的に見る場所にするらしい


本格的な治療所ではない


あくまで傷の確認、止血、応急処置をして、必要なら村へ戻す


そのための場所だ


ミラは村人二人と話しながら、木の板へ何かを書いている


「何してんの?」


俺が聞く


「逃げる方向」


「文字で?」


「文字と印」


見せてもらう


俺にはまだ全部読めないが、矢印みたいな印は分かる


人間側、村方向


そちらへ向かう印


「これ、第二水場に来る人に見せる」


「ええな」


「知らないと、危ない」


「せやな」


人が増えた


だから決め事が必要になった


最初、俺とルッカしかいなかった岩陰拠点では、何か決めても二人で分かればよかった


第二水場は違う


村人が来る


俺たちも来る


エナたちも来る


たまに知らない人も来る


全員が同じことを知っていないと、危ないときに困る


「セイジ」


ダリオに呼ばれる


「はい」


「土を使う場所を見ろ」


「今行く」


地面を見る


ローデンが置こうとしている倒木の下は少し柔らかい


雨が降れば沈みそうだ


「ここ締める?」


「全部固めるな」


「なんで?」


「水が流れなくなる」


「ああ」


俺の魔法だけで平らにして、固くして、完璧な地面にすればいいわけではない


水場だ


雨も降る


水が逃げる場所もいる


「足の下だけ?」


ローデンが指す


「こことここ」


「了解」


魔力を集める


昨日までなら、少量、弱く、そう意識していた


今日は少し違う


《魔力制御》


必要な量


この範囲


ここまで


《土締め》


狭い範囲だけ土が締まる


ローデンが足で踏む


「もう少し」


「こっち?」


「ああ」


少しだけ追加する


止める


「これでいい」


「楽やなこれ」


「何がだ」


「前やったら、もうちょい広く固めてたと思う」


必要以上に魔力を使わない


必要以上に地面を変えない


昨日覚えたSKILL、《魔力制御》


まだ新しい


でも使い方は不思議と分かる


新しい能力が突然追加されたというより、今までやってきたことが整理された感じだ


《魔力操作》で何度も出力を変えた


失敗した


強すぎた


弱すぎた


それが今は、ここまで、という感覚に変わった


「セイジ」


ルッカが呼ぶ


振り返る


倒木の上へ座っている


「何してんの?」


「待ってる」


「何を?」


「肉」


「朝食ったやろ」


「作業したら腹減る」


「まだ何もしてへんやん」


ルッカは黙った


「図星やめろ」


近くにいた村人が笑う


俺もつられて笑った


昨日、ここで戦った


その場所で今日は人が笑っている


水を汲む人がいる


荷物を置いて休んでいる人がいる


ローデンが木を組み、エナが薬草を整理し、ミラが文字を書き、ダリオが道を見て、ルッカが肉を要求し、俺は土を固める


こういうのが第二水場の日常になってきた


「ほんまに人増えたな」


俺が言う


ダリオが周囲を見る


「だから危ない」


「嬉しいのに危ないって面倒やな」


「場所ってのはそういうもんだ」


「人がおらんかったら守らんでええ?」


「そもそも使う意味がない」


「確かに」


誰も来ない第二水場なら、壊れてもしばらく使えなくなっても、困るのは俺たちくらいだった


今は違う


ここを目印にしている人がいる


ここで水を飲む人がいる


森へ入る前に集まる人がいる


帰りに休む人がいる


だから危険も増えるし、守る意味も増える


午前中、作業は順調だった


森側の二方向に倒木を使った簡易障害物を置く


完全には塞がない


動物や人が通れないほどにはしない


ただ真っ直ぐ走り抜けにくくする


その間の地面も少し変える


《土成形》


低い盛り上がりを作る


大きな壁ではない


足場を選ばせる程度


「これでええ?」


ローデンが見る


「もう少し低く」


「低い方がええん?」


「人が逃げるとき転ぶ」


「なるほど」


俺は少し戻す


以前なら、防御なら高い方がいい、厚い方がいい、そう思ったかもしれない


今は人が逃げる邪魔をしないことが最優先だ


昼前、第二水場へ来ていた村人が五人ほどになっていた


全員が作業しているわけではない


水を汲みに来た人、森の浅い範囲へ行く前に休んでいる人、荷物を持っている人、少し話を聞きに来ただけの人


「店みたいになってきたな」


俺が言う


ミラが首を傾げる


「店?」


「物売ってへんけど、人集まるやん」


「店にする?」


「せんでええ」


「なんで?」


「大変そう」


前世で店を持った経験はない


でも人が集まる場所を管理するのが簡単でないことくらいは分かる


今は水場、休憩所、集合場所


それで十分だ


ルッカが村人から何かもらっている


見覚えのある色


「ちょっと待て」


近づく


干し果物


「交換したん?」


「した」


「何と?」


ルッカが自分の袋を見せる


干し肉が少し減っている


「ほんまに肉出したん?」


「甘い」


「そこまで気に入ったんか」


村人が笑っている


ルッカも嬉しそうだ


以前話した、肉と甘い物を交換するという冗談みたいだったことが、普通に起きている


「なんか平和やな」


俺が言う


「昨日戦ったけど」


ミラが返す


「言わんでええねん」


でも本当だ


昨日戦った


今日も危険がなくなったわけではない


だから《魔力感知》は時々使う


近くに弱い反応


遠い


今のところ問題なし


作業へ戻る


ローデンと一緒に倒木を縄で固定する


俺は力仕事では役に立ちにくい


筋力F


相変わらずだ


だから土で足元を作る


倒木が転がりにくい形に土を整える


《土成形》


少し


《土締め》


必要な場所だけ


「そこ上手くなったな」


ローデンが言う


「土?」


「ああ」


「SKILL変わったからな」


「昨日の話か」


「せや」


「でも力は弱い」


「それ今言う必要ある?」


「これ持て」


渡された木材は太い


「無理やって」


「二人で持つ」


「ああ」


反対側をローデンが持つ


それなら運べる


「結局頼るんやな」


「前に自分でそう決めたやろ」


「そうやった」


一人で全部できなくていい


今はそれが自然になっている


昼を少し過ぎた頃、エナが食事にしようと言った


作業を止める


第二水場の利用者も、何人かそのまま一緒に休む


硬いパン、干し肉、木の実、俺たちの保存食、ルッカの干し果物


全部少しずつ


「みんなの場所やな」


俺が言う


ミラが聞く


「ここ?」


「せや」


前にも言った


でも今日は、前よりその言葉がしっくりくる


俺とルッカが作った場所ではない


人間だけの場所でもない


誰か一人の家でもない


来た人が使う


直す


少しずつ物が増える


危ないから守り方を考える


「みんなの場所」


ミラも言う


ルッカが肉を食べながら、


「肉の場所」


「まだ言うてんの?」


「甘い場所も」


「増えたな」


笑う


食事を終え、もう少しだけ作業をする予定だった


そのとき、昨日の夜に感じた嫌な感覚を思い出した


森の遠く


何かが一つではなく、まとまって動いているような感覚


あれは疲れたせいだと思った


正式に《魔力感知》を使って確認したわけでもない


だから朝には気にしなくなっていた


でも今


同じ方向


いや、少し違う


森の奥側


何かある


俺は手を止めた


「……待って」


昨日と同じ言葉


ダリオがすぐ反応する


「何だ」


《魔力感知》


意識を広げる


近くには村人と仲間の反応


その向こう


森


さらに遠い場所


複数


「おる」


「何が」


「分からん」


集中する


一つじゃない


かなり多い


反応が重なっている


動いている


速い


昨日の五体とは違う


数も、強さも


「複数」


「いくつ」


「分からん、多い」


「強さ」


「強い」


一つ一つが全部大型とは限らない


でも、まとまった反応としてはっきり強い


しかも動いている


「まとまってる」


俺は地面を指す


「バラバラちゃう、一緒に動いてる」


ダリオの顔が変わる


「方向」


俺は目を閉じる


反応の移動


森の奥から浅い方


そして、


「……こっち」


第二水場


少なくとも近い方向へ来ている


完全に第二水場を狙っているとは言えない


でも進路上にある


「ルッカ」


ダリオが呼ぶ


ルッカはもう立っていた


「見てくる」


「一人で奥へ入るな」


「うん」


走る


第二水場から見える範囲を少し越えたところまで


足跡を確認するためだ


俺は感知を続ける


反応は消えない


動いている


数はまだ分からない


でも五より多い


十


そこまでいるかもしれない


正確には数えられない


「これ、昨日の逃げた二体とか?」


俺が言う


ダリオは首を振る


「決めつけるな」


「せやな」


昨日逃げた個体が混じっている可能性はある


でも分からない


「村人下げる?」


ミラが聞く


「まだ待て」


ダリオはルッカが戻る方向を見る


数分


長く感じる


ルッカが戻ってくる


呼吸が少し速い


「いっぱい」


「何だ」


「走るやつ」


「昨日と同じか」


「違う」


「どんな」


ルッカは言葉を探す


四本足


体が低い


前側が太い


群れ


走る


止まりにくい


突っ込む


そんな説明


「もっと奥にいる?」


俺が聞く


「うん」


まただ


中層寄り


普段ならこんな浅いところまで群れで出てくるものではないらしい


「数は」


「いっぱい」


「セイジと同じか」


「数えられない」


ダリオが即座に動いた


「全員戻す」


声が通る


「戦えない者は村方向へ退避!」


空気が変わる


さっきまで飯を食っていた人たちが立つ


何が起きているか分からない人もいる


ミラがすぐ説明する


短く、分かりやすく


森から危険な群れ


村方向へ戻る


走りすぎない


押さない


荷物は必要最低限


「ミラ」


ダリオが呼ぶ


「村へ知らせろ」


「分かった」


「戻ってくるな」


一瞬、ミラが止まる


でも頷く


「うん」


村人二人と一緒に、人間側経路へ走る


ローデンは障害物を見る


「まだ途中だ」


「使えるものだけ使え」


ダリオ


「分かった」


作りかけ


完成していない


倒木二本


低い土の盛り上がり


縄


それでも、ないよりはいい


「エナ」


「ここ」


簡易屋根の後ろ、人間側寄り


治療用の荷物をまとめる


「怪我人が出たらここ、でも危なくなったら下がる」


「分かった」


残っていた村人も次々村方向へ移動する


一人が荷物を取りに戻ろうとする


「置いて!」


ミラが遠くから叫ぶ


ダリオも、


「後だ!」


荷物より人


当然


でも急なときは、持ってきたものが気になる


分かる


「反応、近づいてる」


俺が言う


《魔力感知》


強い


複数


まとまっている


今までよりはっきり分かる


方向


移動


群れ全体の位置


「速い?」


「速い」


「どれくらい」


「昨日のやつより……群れ全体で来てるから、止まらん感じ」


説明が下手


でも止まりそうにない


走る


そのまま浅い森へ


「逃げるなら今だな」


ダリオが言う


俺を見る


「セイジ」


「ん?」


「お前も一度村側へ下がっていい」


一瞬、言葉の意味が入ってこなかった


「俺も?」


「ああ」


「でも」


「ここで全員残る必要はない」


反論しようとして止まる


ダリオの言うことは正しい


俺が絶対に残らなければならない理由はない


村方向へ下がる


そこから守る方法もあるかもしれない


第二水場を捨てて人を守る


それも判断だ


「ルッカも?」


俺が聞く


「ルッカは道を知ってる、必要なら残ってもらう」


「俺は?」


「魔法は役に立つ」


ダリオはそこで言葉を切る


「だが、お前は村人じゃない」


その言葉に胸が少し痛む


でも嫌な意味ではない


「村のために命を張れとは言えない」


そういう意味だった


俺は村人ではない


ハルナ村に住んでいない


自由に入れるわけでもない


正式な用事があるときだけ


条件付き


それが今の関係


だから村を守るために残れとは言えない


「逃げてもええってこと?」


「逃げろとは言ってない」


「選べ?」


「ああ」


逃げる


その言葉を考える


最初に人間を見たとき、俺は逃げた


あのときは生きることが全部だった


逃げることは悪くなかった


今でも悪いと思わない


勝てないなら逃げる


危険なら離れる


それでいい


前にも、経験値のためだけに戦わないと決めた


必要がないなら避ける


三体の魔物と遭遇したときも、逃げられるなら逃げようとした


谷からの帰路でも、まず回避路を探した


だから逃げること自体は怖くない


恥ずかしくもない


生きるためなら何度でも逃げる


今も村側へ下がれば、俺はたぶん安全に近づく


群れが第二水場へ来ても、人がいなければわざわざここで戦う必要はない


設備は壊れるかもしれない


簡易屋根


長椅子


水場周り


障害物


でも、また作れる


そう考える


なのに足が動かない


第二水場を見る


ルッカが初めて見つけた場所


エナが水を確認した


ローデンが屋根を作った


ミラと地図を広げた


ダリオと安全経路を考えた


村人が休んだ


昨日、魔物から人を守った


今日、ルッカが干し果物を交換した


俺たちが「みんなの場所」と言った場所


ここが壊れるだけなら作り直せる


でも群れがここを通る


そのまま人間側経路へ抜ける


その先には村がある


俺は少し前に初めて入った


全部の人に歓迎されたわけではない


怖がられた


子供を家へ入れた人もいた


それでも普通に挨拶した人がいる


地図を見た人がいる


食べ物をくれた人がいる


その場所へ、この群れが向かうかもしれない


「……嫌やな」


口から出た


ダリオが見る


「何がだ」


「逃げるんは別にええ」


俺は第二水場を見る


「でも、逃げて生き残っても」


言葉を探す


「守りたい場所なくなってたら、嫌や」


自分で言って、しっくりきた


そうだ


死にたいわけじゃない


格好つけたいわけでもない


英雄になりたいわけでもない


俺が一人で全部守るつもりもない


ただ、帰ってきたときここがなくなっているのが嫌だ


村へ行ったら人が傷ついているのが嫌だ


岩陰拠点まで何かが来るのも嫌だ


「ここ、みんなの場所やから」


ダリオは何も言わない


数秒


それから、


「分かった」


短い


止めもしない


褒めもしない


それでいい


「残る」


俺が言う


「俺も」


ルッカ


「お前は聞く前に決めてるやろ」


「セイジ残る」


「それ理由にすんな」


「森の道、分かる」


「……そっちなら分かる」


ダリオが息を吐く


「勘違いするなよ」


「何を?」


「お前らだけで守るんじゃない」


ローデンが倒木の位置を変えている


エナが治療場所を整えている


ミラは村へ走った


ダリオは前線に残る


「俺たちもいる」


その言葉が妙に嬉しかった


守ってやる、ではない


守ってもらう、でもない


一緒に守る


「せやな」


俺は頷く


「何したらええ?」


「まず障害物」


ローデンが答える


「時間がない」


「土使う」


俺はすぐ動く


森側


群れが来る方向


今ある倒木の足元


《土成形》


少し盛る


《土締め》


固定


高い壁は作らない


一か所


二か所


「次!」


ローデンが指す


「ここ」


「了解」


魔力を使う


LEVEL9


MP D-


以前より余裕はある


でも無限じゃない


《魔力制御》


必要な量


止める


使いすぎない


これから戦う可能性が高い


今全部使ったら意味がない


「反応どうだ」


ダリオ


俺は一度魔法を止め、


《魔力感知》


切り替える


以前より速い


「近い」


複数


まとまっている


かなり強い


「あと……」


距離を言葉にできない


「もうすぐ見える範囲」


ルッカも森を見る


耳


鼻


地面


「来る」


ダリオが声を上げる


「配置!」


残っているのは、俺、ルッカ、ダリオ、ローデン、エナ、それから村人二人


戦える人間だけだ


ただし村人二人は前へ出さない


障害物の後ろ


必要なら下がる


エナも後方


ローデンは障害物の近く


ダリオが前


ルッカは横


俺は少し下がって全体を見る


「セイジ」


「はい」


「火は最初から強くするな」


「威嚇?」


「ああ」


「群れの進路をずらす」


「分かった」


倒すことが最初の目的ではない


群れを第二水場から逸らす


人間側経路へ入れない


それで済むなら、その方がいい


俺は火の魔力を集める


小さく


でも見える


音も出る


近づきたくないと思わせる程度


「ルッカ、どっちへ逸らす?」


右は人間側に近い


左は森の奥へ戻す方向


「左」


「了解」


地面も左へ抜けやすいよう、右側だけ少し高くしてある


完全な罠ではない


選ばせる


安全な方へ


群れを第二水場から離す方向へ


《魔力感知》


近い


近い


かなり近い


そして音


遠くから地面を打つ複数の足音


「聞こえる」


ローデンが言う


俺にも聞こえる


枝が折れる


葉が揺れる


一体ではない


昨日の五体とも違う


もっと重い


「多いな」


俺の喉が乾く


「怖い?」


ルッカが聞く


「怖いに決まってるやろ」


「逃げる?」


「今さら?」


「聞いただけ」


「逃げへん」


怖い


それと残るは両立する


怖くなくなったわけではない


むしろ守りたいものが増えた分、前より怖い


誰かが怪我するのも、場所が壊れるのも嫌だ


「来た!」


ルッカ


最初の一体が木々の間から出る


低い体


太い肩


頭部に短い角のような突起


四本足


その後ろ


二体


三体


さらにもっと


「多っ」


数えられない


群れ


ルッカが言った通り、突進することに向いた体で止まる気配がない


先頭がこちらを見る


第二水場


人


障害物


それでも速度を落とさない


「威嚇!」


ダリオ


「《火弾》!」


先頭の前方


地面へ


直接当てない


火が弾ける


土が焦げる


先頭の一体が驚いて横へずれる


後続も少し乱れる


「もう一発左じゃない、右!」


ダリオ


右側


人間側へ寄せない


俺は右前方へ小さな火弾


「《火弾》!」


地面へ


火


音


群れの一部が左へ寄る


「ええ感じ!」


でも全部ではない


後ろから押される


先頭が進路を変えても、後続がそのまま来る


一体が倒木へぶつかる


音


縄が張る


「持つか?」


ローデンが叫ぶ


倒木がずれる


でも完全には外れない


「今!」


俺は《風圧》


広くしない


先頭二体


左側へ


「《風圧》!」


風


二体の向きがずれる


一体はそのまま左へ走り抜け、森へ


もう一体は後続とぶつかる


「二体逸れた!」


ルッカが叫ぶ


「追うな!」


ダリオ


当然だ


目的は倒すことではない


逸れたならそれでいい


でも残りが来る


一体が障害物を越える


「ローデン!」


ダリオ


ローデンが太い棒で進路をずらす


完全に止めるのではない


横から叩き、足を変えさせる


俺は地面


《土成形》


前脚が置かれる場所を少し崩す


転ぶ


「ルッカ!」


ルッカが横から槍


深追いしない


立ち上がる前に進路を森側へ向ける


「行け!」


俺も《風圧》


小さく、一方向


魔物が横へ流れる


そのまま逃げる


「三!」


逸らした数


でも後ろにはまだいる


「これ全部こんな感じでいける?」


俺が叫ぶ


「無理だ!」


ダリオ


そらそうや


群れが大きすぎる


そして全てが逃げるわけでもない


火を見て、風を受けて、むしろ怒る個体もいる


一体がダリオへ突っ込む


ダリオが避ける


横から武器


魔物が転ぶ


起きる


また来る


ルッカも一体と向き合う


「セイジ前!」


俺の正面


二体


「多いって!」


火


強くしすぎない


一体へ


《火弾》


肩


当たる


止まらない


風


狭く


《風圧》


顔を横へ


進路がずれ、倒木へぶつかる


もう一体


地面


《土成形》


足を取る


転ぶ


「今なら逸らせる!」


ローデンが叫ぶ


俺は《風圧》


森側


一体は逃げる


もう一体は立ち上がって、また来た


「こいつ諦めへんな!」


ダリオが前へ出る


武器


俺の火


ルッカの動き


誰が決めたか分からない


最後には動かなくなる


「これ俺の経験値とか分からんな」


そんなことが頭をよぎる


すぐ消す


今どうでもいい


誰が倒したか分からない


なら俺が倒したことにはしない


次


次


群れが来る


第一波、という言葉が浮かぶ


先頭の集団


でも後ろにまだ反応がある


「まだおる!」


俺が叫ぶ


《魔力感知》


森の奥


強い反応


複数


近づいている


今目の前の個体だけじゃない


「どれくらい」


ダリオ


「分からん、でも終わってへん!」


障害物が一つ壊れる


倒木を固定していた縄が切れる


木が転がり、簡易屋根の端へ当たる


「うわ!」


屋根の支柱が傾く


布の一部が外れる


「屋根!」


俺が見る


「見るな!」


ローデン


「人が先だ!」


「分かってる!」


第二水場の設備


壊れた


胸が痛む


でも完全には崩れていない


あとで直せる


今は人


「エナ!」


後ろで村人一人が転んでいる


怪我か


エナがすぐ行く


「足!」


「動ける?」


会話が聞こえる


大きな怪我ではなさそう


でも前へ出られない


「下がらせる!」


エナ


「頼む!」


ダリオ


役割


それぞれ


俺が《治癒》へ行く必要はない


エナが見ている


今は前


俺は魔力を火へ


いや、風


目の前の一体が人間側へ向こうとしている


「そっち行くな!」


《風圧》


狭い


強め


進路を変える


土


足元


《土締め》


固める


滑る


ルッカが横から追い返す


「戻った!」


森側へ


「よし!」


何体倒したか


何体逃げたか


分からなくなってくる


でも第二水場を越えた個体は、今のところいない


人間側経路へ抜けたものもない


「まだいける?」


ダリオが俺を見る


「いける!」


本当だ


MP D-


《魔力制御》


以前ならもっと疲れていたかもしれない


今は必要な量だけ使えている


無駄が減っている


でも余裕があるわけではない


汗


息


足


疲れている


それでも動ける


「第二波来る」


ルッカが言う


「もう波って認識でええん?」


「来る」


聞こえる


また足音


さっきより重い


《魔力感知》


強い


一つ一つの反応に、前より強いものが混じっている


「さっきより強いのおる」


俺が言う


ダリオの顔が険しくなる


「大きいか」


「反応だけじゃ分からん」


言った直後、木々の間に影が見えた


大きい


前に見た大型魔物ほどではない


でも今までの群れの個体より明らかに大きい


一体


その後ろにも数体


「……でか」


最大個体


群れの中で一番肩が高い


角も太い


前脚が大きい


走れば作りかけの障害物なんて簡単に壊しそうだ


「あれ通したらあかんな」


俺が言う


「分かってる」


ダリオ


「退路確認!」


後ろを見る


村方向


空いている


逃げられる


まだ今なら下がれる


俺も


ルッカも


ダリオも


ローデンも


エナも


走れば間に合うかもしれない


「どうする」


ダリオが俺たちを見る


逃げる選択肢はまだある


第二水場を捨てる


それでもいい


生きることが最優先なら正しい


俺は大きな個体を見る


その後ろの群れ


その向こう


人間側経路


さらに先にはハルナ村


後ろには壊れかけた簡易屋根、長椅子、水場


昨日までみんなが笑っていた場所


「俺は残る」


迷いはなかった


ダリオが頷く


「俺もだ」


ルッカ


「残る」


ローデンが倒木を持ち上げる


「作ったばかりで壊されるのは気に入らん」


「理由そこ?」


「十分だろ」


エナは治療用の荷物を握る


「怪我人がいるなら残る」


俺は見る


「エナは下がってもええんちゃう?」


「セイジが決めない」


「はい」


その言い方、強い


遠く、村方向からミラの声が聞こえる


戻ってきてはいない


でも誰かに情報を伝えている


走る人影


村へ知らせた


役割をしている


俺たちは一人で残ったわけではない


六人


場所は離れていても、それぞれやることをしている


「一緒やな」


俺が言う


ダリオ


「何がだ」


「守るん」


「ああ」


大きな個体が足を踏み出す


その後ろの群れも動く


防衛線までもう近い


俺は魔力を集める


土


風


火


必要なものを必要な順番で


《魔力制御》


使える


《魔力感知》


群れの動きも追える


LEVEL9


今の俺にできること全部


でも全部一人でやる必要はない


「ルッカ、進路!」


「左、少し高い」


「ダリオ!」


「中央を止める!」


「ローデン!」


「右の倒木はまだ使える!」


「エナ!」


「後ろは任せて!」


役割が決まる


俺は前を見る


怖い


めちゃくちゃ怖い


でも帰ったあと、ここがなくなる方がもっと嫌だ


だから残る


最大個体が頭を低くした


突進の姿勢


後ろの群れも続く


地面が揺れる


「来るで!」


俺は両足を踏ん張った


誰も下がらなかった

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