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歌謡曲雑感  作者: 前田智
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加藤和彦の世界

正確には「帰ってきたヨッパライ」が最初の出会いだったとは思いますが、なんにせよ出たのが私の生まれた頃です。当然大流行した歌ですから、さわりくらいは歌っていました。が、加藤和彦の歌という認識はなかったです。「天国良いとこ一度はおいで」ですよ。まあそのうち行きますけど。

 ご本人の企画もののCDにエピソードタイトル通りのものがありますが、私にとっては加藤和彦は小学生時の化粧品CM、「お帰りなさい、秋」が原体験であり、フォークルとかミカバンドはわかりませんで、後から彼の作品を追う過程で知ったものでしかありません。勿論、「帰ってきたヨッパライ」や「あの素晴らしい愛をもう一度」や、「タイムマシンにおねがい」が悪いという事は微塵もありません。ただどうしても、安井かずみを抜きにしては語れない、と言うだけです。もちろん北山修さんや松山猛さんの詞が良くない訳はありません。加藤和彦の歌ううたと考えると、それ以上が思いつかないと申しますか、とは言っても阿久悠さんの「純情」も素晴らしいのでそこは阿久悠だから、で片付けさせていただいて、話は竹内まりや「不思議なピーチパイ」でも飯島真理「愛、おぼえていますか」でも稲垣潤一「ブルージーンピエロ」でもなく、1991年のご本人のアルバム『ボレロ・カリフォルニア』に飛びます。当時就職したてで、前年初頭に自宅が火事になって落ち込んでいた頃に、当時の職場があった町のレコード屋で見つけたのが、このアルバムでした。ちょっと変わった横尾忠則さんのジャケットを纏い、基本的には昔のCMソング+α程度の知識しかない身で、加藤和彦のそれまでの歩みなどわかりもしなかった自分が、よくこのCDを手に取ったものだと、やっぱり出会いというのは奇妙なモノなのですよ。まだ当然、ヨーロッパ三部作も『あの頃、マリーローランサン』も、前作『マルタの鷹』でもなく、いきなり、今となっては最終作となったこれですよ。購入した当初は、もっと別のCD買っとくんだった(ブルーハーツ(真島昌利)とかいろいろあったんですよ、当時。)などと罰当たりな事を思ったこともあったのですが、それでもせっかく購入したんだから、と半ばやけになって聴いてたのですが、聴き続けるとどんどん深みにはまっていきました。一曲目「ジャスト・ア・シンフォニー」から「百合の時代」まで、全10曲の全てを安井かずみ詞、本人曲で創り上げていますが、このお二人、不可分であろうとしか思えません。互いが互いを高めあうというより、いかに自分を快適にするか、そうすることが自らの当然である、とそんな気を張らない自然さがあります。もっともこのアルバム、聴いた当初から安井さん自身の加藤和彦に対する長いスパンの遺書なのではないかと思える部分が垣間見えました。気遣いながらも、その後起こるであろう哀しみの予兆を語っていると申しますか、何か変な表現ですが、失われてなお続く哀しみを想う歌詞が、今にして思えばちりばめられています。・・・と、そういうことを言いたいのではなく、後付けの知識が混ざってしまうのが自分の悪いところですね。ともかくは話を私の多分小6の頃に戻しましょう。当時、前述の「お帰りなさい、秋」のCMを知った頃の話ですが、私の住んでいた地域で「ミュージックトマト」というテレビ番組を放映したのです。恐らく2週くらい。その番組は偶然、夜何時くらいだったか。憶えているのは加藤さんが「ルムバ・アメリカン」を生で?披露したことと、2週目でRCサクセションの「トランジスタラジオ」が紹介されたこと。3週目からは、何故か影も形も見えなくなって、もしかして勘違いだったかしらん、と思っていたのですが、現在になってググってみると、そういう番組があったことはわかったのですが詳細は不明、という何とももやもやする結果になっております。いずれこの番組が何年も引っ掛かっていたのも、私が加藤和彦を特別に思う一因であろうと思います。

ちなみに『マルタの鷹』収録の「ディッセンバーソング」が大好きデス。これも葬送歌に狙っています。

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