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追放されたけど、最弱スキル〈修繕〉で辺境スローライフ満喫します  作者: 妙原奇天


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第40話 人の名を呼ぶ ― 闇を裂く修繕

 光の糸が闇を裂き、影の修繕士の胸奥に届く。

 赤い瞳がわずかに揺れ、彼はかすれた声を漏らした。


「……僕は……誰だった……」


 その問いに、僕の中へ断片的な記憶が流れ込む。

 小さな村で弟と笑い合う姿。

 母のために、壊れた椅子を必死に直そうとしていた少年の手。

 ――その手には、確かに“繋ぎたい”という願いが宿っていた。


「……分かった」

 胸が熱くなり、言葉が自然にこぼれた。

「あなたの名は――《アレン》」


 その名を呼んだ瞬間、影の修繕士の体が大きく震えた。

 赤い瞳が揺れ、仮面のような無機質な顔に、人の感情が戻りかけていた。


「アレン……僕の……名前……?」


「ああ!」

 僕は強く頷いた。

「あなたは人間だ! 誰かを守りたいと願った、優しい修繕士だったんだ!」


「やめろォォォォッ!」

 突如、森に轟く絶叫。

 仮面の女魔導師が闇から現れ、杖を振り下ろした。


「その器は私のもの! 影は人に戻らぬ! お前に渡すものか!」


 黒炎が渦を巻き、アレンの体を再び覆い隠そうとする。


「くっ……!」

 僕は光の糸を必死に握り締めた。


「リオン!」

 ルシアが叫び、黒炎に剣を突き立てる。

「持ちこたえろ! お前は一人じゃない!」


 セリーヌも呪文を紡ぎ、光の防壁を張る。

「私たちも繋がってる! だからその糸を切らせない!」


 仲間たちの声に背を押され、僕は全力で叫んだ。

「アレン! 戻ってこい! 君は影じゃない、命を繋ぐ修繕士だ!」


 光が一気に広がり、闇を押し返す。

 黒い鎖が次々と砕け、アレンの体から闇が剥がれ落ちていった。


 炎の中で、アレンの瞳が涙に濡れた。

「……僕は……守りたかっただけなのに……」


「それでいいんだ!」

 僕は手を伸ばし、彼の腕を掴んだ。

「その想いは間違ってない! だから一緒に繋ぎ直そう!」


 光が奔り、最後の鎖が砕け散る。

 闇が消え去った跡に立っていたのは――疲れ切った青年の姿だった。


 仮面の女魔導師が絶叫する。

「馬鹿な……! 人の心が闇に勝つなどありえぬ!」


 だがアレンは震える声で言った。

「……僕は……影じゃない……。リオンのおかげで……思い出せた」


 その言葉に、女魔導師の表情が歪み、怒りに満ちていった。

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