第38話 揺らぐ心 ― 影に映る自分
光と闇の奔流がぶつかり合い、森が震えた。
木々は裂け、地面は抉れ、戦場はもはや廃墟のようだ。
影の修繕士の瞳が赤く輝き、僕をまっすぐ見据える。
「お前も……同じだ」
「なに……?」
「命を削り……守るためと称し……死へ向かう。その姿は我と同じ」
言葉が胸を抉った。
思い出す。
村を守るために何度も無理をして、膝をつきそうになった日。
王都の橋を修繕したとき、命が削れる感覚に怯えた瞬間。
(……僕は……本当に違うのか?)
影の修繕士の声が、まるで心の奥を見透かすように響いた。
「繋ぐ力? 所詮は言い訳。己を削る行為に変わりはない」
胸が締め付けられ、光が揺らぐ。
修繕の糸が細く途切れかけた。
「リオン!」
ルシアの声が、必死に響く。
「あなたの修繕は違う! 昨日だって、私たちを立ち上がらせてくれた!」
「そうよ!」
セリーヌが叫んだ。
「奪うためじゃない、希望を繋ぐための力。それを一番知っているのは、村の人たちじゃない!」
仲間たちの声に、揺らいでいた心が少しずつ戻っていく。
「……僕は……」
荒い呼吸の中で、胸に手を当てる。
浮かんだのは、笑顔でパンを分け合う村人たち、焚き火を囲んで笑った夜、手を握って泣いてくれた子どもたちの姿。
「僕は……違う!」
光が再び強く輝き出す。
「僕の修繕は、命を繋ぐ! 誰かのために立ち上がる力なんだ!」
その瞬間、影の修繕士の瞳が微かに揺れた。
まるで心の奥に眠る“何か”が反応したかのように。
「……否定……できぬ……?」
無機質な声に、かすかな迷いが混じる。
「お前……まさか……!」
僕は気づいた。
影の修繕士はただの兵器ではない。
その奥には、かつて人であった“心”が残っている。
「リオン! 今の揺らぎを突け!」
ロイが剣を構えて叫ぶ。
「……うん! でも斬るだけじゃダメだ。あの人を……繋ぎ直さなきゃ!」
僕は光を両手に集め、再び影の修繕士へ向き合った。
闇に映る自分の姿を――必ず乗り越えるために。




