第36話 守る修繕、奪う修繕 ― 初めての激突
森の広場に、光と闇が渦を巻く。
僕と影の修繕士――同じ“修繕”を冠する存在が、対峙していた。
「命令……修繕士リオン、排除」
無機質な声が響くと同時に、影の修繕士が両手を地面に突いた。
ドンッ――!
大地が裂け、砕けた岩が黒い光で無理やり繋ぎ合わされ、巨大な石の獣となって立ち上がる。
「また“奪う修繕”……!」
僕は歯を食いしばり、両手を広げる。
「〈修繕〉――繋がれ!」
光の糸が奔り、倒れかけた木々が蘇り、兵士たちを守る防壁となる。
守る修繕と奪う修繕――ふたつの力が、火花のように激突した。
「リオン殿、後ろは任せてください!」
ルシアが剣を振るい、迫る黒兵を斬り伏せる。
「あなたは影を止めるのに集中して!」
セリーヌが魔法で火球を放ち、敵の牽制を続ける。
僕は仲間の声を背に、影の修繕士と向き合った。
(同じ修繕でも……目的が違う。あいつは繋ぎ直すふりをして、すべてを“縛り支配する”だけだ!)
「お前には……負けない!」
僕は叫び、倒れた橋材を光で繋ぎ合わせて槍に変え、石の獣に突き立てた。
ズガァァァン!
石の獣は粉々に砕け散る。
だが影の修繕士は表情ひとつ変えず、再び手を掲げた。
「破壊確認。再構築開始」
砕けた破片が宙に舞い、今度は兵士の姿を模した黒い人形へと変わっていく。
「くっ……!」
その光景に背筋が冷える。
死をも嘲笑うかのような力だった。
影の修繕士が無感情に告げる。
「修繕……は奪う力。壊れたものを縛り直すために、代償を差し出す。
お前の命も、やがては我の糧となる」
「違う! 僕の修繕は、人を繋ぐための力だ!」
僕は声を張り上げ、胸に手を当てた。
そこには村人や仲間たちの願いが宿っている。
その温かさが僕を支えていた。
「アークレア!」
僕が呼ぶと、森の奥から機神兵が巨体を揺らして現れた。
「主、命令を」
「影を止める! みんなを守るんだ!」
巨腕が振り下ろされ、黒い人形たちを一掃する。
だが影の修繕士は一歩も退かず、こちらをまっすぐ見据えていた。
「次回行動――本格的排除」
無機質な声とともに、闇の気配がさらに濃くなる。




