第23話 暗雲迫る ― 辺境の村の危機
――辺境の小さな村。
修繕士リオンが王都へと旅立ってから数週間。
村は以前よりも整備され、畑には新しい道具が並び、水車小屋も元気に回っていた。
リオンが残していった修繕の恩恵が、人々の暮らしを守っていたのだ。
「リオンさんのおかげで、今年の収穫はきっと豊かになりますね」
「ええ、また帰ってきたら驚くでしょう」
村人たちは笑顔を交わしながらも、心のどこかで彼の不在を寂しく思っていた。
その夜。
村の外れで見張りをしていた青年が、森の中に奇妙な灯りを見た。
「……火? いや、あれは……」
赤黒い光が木々の間を漂い、不気味な影が幾つも揺れている。
次の瞬間、闇から黒い外套の一団が現れた。
「報告通りだな。ここが“修繕士”の出身地か」
「油断するな。奴を縛るには、この村を掌握するのが一番だ」
低い声が夜風に混じり、青年の背筋に冷たい汗が流れた。
翌朝。
村長の家に、見張りの青年が駆け込んだ。
「村長! 昨夜、森に怪しい影を見ました! きっと盗賊か、敵国の兵に違いありません!」
村長は深刻な顔をして頷く。
「……やはり来たか。リオンが王都で名を上げれば、必ずここも狙われると思っておった」
村人たちがざわめき、不安が広がる。
しかし老人は拳を握りしめた。
「だが、守らねばならん。この村は……リオンが命を懸けて守った村じゃ」
一方その頃。
敵国アルヴェリアの仮面の女魔導師は、森の奥で手下を率いていた。
「修繕士リオン。お前を支える拠点を潰せば、いずれ心は折れる。
我らが望むのは、ただ一つ――その力だ」
紅い瞳が妖しく光り、黒い瘴気が森に広がっていく。
その気配は確実に、村へと忍び寄っていた。
◇ ◇ ◇
国境の砦にて。
勝利の後も修繕を続けていた僕は、不意に胸騒ぎを覚えた。
(……村が呼んでいる?)
説明のつかない不安が、強く強く胸を締めつけた。
そしてその直感は、決して間違いではなかった。




