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真実の『家族』に気が付いた王妃の時戻り ~王妃エリスは賭け続ける~  作者: 野菜ばたけ
【第六章】第九節:王都にて(第九賭:対国)

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第73話 透けて見えた犯人の姿



 この女は、子どもたちにこそ関係のない人物だけど、まるで自分のストレスを解消するかのように、嬉々として私を貶めた。

 側妃ミーナよりも下どころか、王族でもない彼女たちよりも下なのだと、そう周りに視覚的に知らしめた者たちだ。


 無視や嘲笑は常にだったけど、食べ物や飲み物をかけたりもされていた。

 それを黙って受け入れてしまっていた自分も悪かったとは思うけど、それ以上に数々の嫌がらせの結果下がった地位は、周りに《《私の子どもたちごと》》軽んじていいのだという認識を植え付けた。


 今の私は、それが許せない。

 そして同じ事をさせてはならないのだ、今度こそ。


 私の尊厳を守る事、それが子どもたちを守る事になる。


「あら? そのような事実は何もないのだけど、一体どこで聞いたのかしら」

「あ、いえ……」

「教えてくださらない? 私が行う国を挙げた慈善事業にそのような妄言を吐くような人間は、国の顔に泥を塗るも同然の存在だもの。きちんと見つけて徹底的に背後関係を洗わないと」

「その……」


 笑顔で問い詰めていく私に、彼女はふいと視線を逸らした。

 その視線の行く先に、おそらく何かを見つけたのだろう。

 その目がキッと鋭くなる。



 彼女の視線の先にいるのが、誰か。

 私はチラリとそちらを盗み見た。


 心当たりがあるのだろう。

 夫人の視線を浴びた令嬢が一人、顔を恐怖に歪ませている。



 ――あらそう、貴女だったのね。

 彼女が見ていた令嬢は、あれほど気弱で物静かではあったけど、協力的に見えていたターム男爵令嬢だ。



「とりあえず、ご心配には及びません。万事うまく行っておりますわ」

「そっ、そうね! それならばよいのです。行きますわよ、皆さま!!」


 そう言って、場違いな乱入者たちが会場に背を向けた。


「じゃあ、私も行ってこようかしら」

「お気をつけて行ってらっしゃいませ!」


 そんな声にお礼を告げて、私はロディスと手を繋ぎ、アンとアンの抱っこしているリリアと共に、歩き出した。


「――あぁ貴方、あそこの令嬢、ターム男爵令嬢だけれど、もし次に妙な真似をしたらその時点で拘束なさい」


 すれ違い様に顔だけは知っている我がスイズ公爵家の騎士にそう告げる。


 彼は一瞬驚いたような顔になったけれど、すぐに職務を思い出したのだろう。

 佇まいを正し「畏まりました」と答えてくれた。


「お母さま、これからどこに行くのですか?」

「スタンプラリーというものをしているの。そこに行ってみましょう」

「楽しいですか?」

「えぇきっと。それよりもロディス、どうかしら初めての城の外は」

「! そうだった! あのね、お母さま!」


 ロディスが楽しそうに話す。

 楽しそうな彼の姿が嬉しくて、私の心も勝手に踊る。


 ただ目的地に向けて歩くだけなのに楽しいなんて、今までになかった事だった。

 すべてはロディスとリリアのお陰だ。


 二人と一緒にいられるだけで、私の世界は色づくのである。



 ◆ ◆ ◆



 はぐれるといけないので、しっかりと手を繋ぎながら歩く王都の町中。

 完全なお忍びにするにはあまりに人が多く、警備上の問題もあるので、周りは騎士たちが固めている。


 けれど今日は、少なからず貴族たちの姿もある。

 他も似たようなものだしあの会場にいた護衛から人を選んで連れてきているので、彼らは皆スイズ公爵家の騎士たちだ。


 一目で私たちが王族だと分かる事はないだろう。

 ――少なくとも、私たちの顔を最初からよく知りでもしていない限りは。


「お母さま! 皆楽しそう!」

「そうね」


 嬉しそうなロディスの言葉に、私も微笑む。



 活気のある町だ。

 人の笑顔も多い。


 あちこちから呼び込みの声が聞こえてきて、しきりにモノやサービスの売買が行われている。



 見る限り、トラブルと呼べるような事はない――と思ったら、誰かが荒げた声が聞こえた、そちらに目をやると、すぐに王城騎士服を着た者たちが駆け寄り、仲裁に入っている。


 この慈善事業の評判がいいと知った陛下が申し出てきた騎士たちの貸し出しは、当初は私の身の回りの護衛に留まっていたけど、断り代わりに町内の見回りや荒事仲裁をお願いしていた。


 何人くらい動員されているのかは私の知るところではないけれど、意識して辺りを見回してみるとチラホラと制服姿が視界に入る。



 そもそも王城騎士服って視覚的にとても目立つのだけど、そういう人たちが町中を歩いている・仲裁しているという現状は、それ自体が諍いの抑止になっているのかもしれない。


 私が陛下にそれとなく「立場が強い貴族や王族ではなく、平民や貧民――立場の弱い者のための慈善をする事こそが、この国を更なる発展に導くのです」というようなニュアンスの事を何度も口にしておいたので、もしかしたら陛下直々に、騎士たちにも「身分に関係なく事の正義を損なうことなく事を解決せよ」と言うような指示があったのかもしれない。


 私がちょうど見かけたのは、貴族と商人の諍いだった。

 よくよく話を聞いたその騎士は「商人の方が正しい事を言っています。彼らも商売なのですから、安くしては生きていけません」と言い、貴族の怒りを収めていた。


 でも。


 ――すべてが滞りなく、何の問題もなく済むわけではないのでしょうね。

 その証拠に、先程のアレだわ。


 人知れず、そう内心で独り言ちる。



 叶うなら、せめてロディスとリリアがいない時に事が起こってくれれば。


 そう思いはするものの、こればかりは私が願ったところで叶うような事でもないだろう。

 そう。

 たとえあの時の神に願ったところで、叶うとは……。



 ――お願いします、時の神ウール。

 もし何か起きるのだとしたら、せめてその時を遅らせてください。



 その願いが叶うかどうかは、すべてが終わった後で分かる事だ。




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