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真実の『家族』に気が付いた王妃の時戻り ~王妃エリスは賭け続ける~  作者: 野菜ばたけ
【第六章】第七節:王妃様参加の夜会にて(第八賭・表:対貴族たち)~噂好きな夫人視点~

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第64話 王妃様は未来でも見えているのか ~噂好きな夫人視点~



「ですから、もし善意で私の慈善活動に、この国のために寄付をしてくださる方には、贈答品をお渡ししようと考えています。――例えば、こちらのように」


 言いながら、彼女は髪飾りを示してみせた。

 宝石があしらわれたその品は、王妃が単体で付けるには些かささやか過ぎる。

 それでも他の装飾と一緒に飾れば、十分他と見劣りしない、それこそ王妃様程の格を持つ方が付けていても決して恥ずかしくはないものだった。


 ――そう思う理由は、小ぶりなダイヤのわりに光彩が強く見えるからだろうか。


「こちらの品は、今回のために特注で作らせたものなのです。ダイヤに特殊なカットをしているだけではなく、このようにダイヤの中に我が国の紋章を閉じ込めておりますの」


 言いながら、彼女は後ろに控えていたメイドから、髪飾りを一つ受け取った。


 差し出されたそれを見てみると、たしかに小ぶりなダイヤの中にはこの国の紋章が繊細にも刻まれている。


「まぁ……! 美しい仕事だわ」

「えぇ。今回私が抱えるに至った技士にしか作る事の出来ない、一点ものですわ」


 私には、宝石の細工の事はよく分からないけど、これだけ自信満々に断言するのだから、おそらく本当に他にはできない仕事なのだろう。

 つまり、模造品は出回らない。


「ダイヤモンドは、硬い鉱石。この髪飾りには、『この鉱石に固く守られた紋章は傷付かない』、この国の平和な繁栄を願って作られたものでもあるのです。それを身に付ける事で国を思う気持ちを示すと共に、私に協力して国に寄与していただいた皆様の証とする。これはそういう試みですの」


 なる程。

 寄付自体は王妃様の名で纏めて行われるけど、その実績はこうして返された贈答品を身に付ける事で周りに示す事ができる。

 それなら王妃様を通して寄付をする意味はある。

 ……いや、むしろその方が見え方はいい。


 おそらく本心から国のためを思って、考え、行動し、こうして私たちをお誘いくださっている王妃様に協力する。

 それは正に、国への忠誠を示す行いだ。


 男性には、直接的に仕事に従事する事で国に貢献する事が出来ていたけど、女性にはそれができなかった。

 これはそんな、夫を支えるという形で間接的に国への忠誠を示す他なく、それもまた自身の実感としても他者への認知としても、限りなく薄かった私たちのこれまでを、明確に変えるような試みだ。


 女性にとっての、一種の転換期。

 それが今来ているのではないか。

 私はそう感じずにはいられない。


 しかも。


「こちらの品は、一定以下の寄付をしてくださった方への贈答品です。より多額のご協力をいただいた方にはもうワングレード上の贈答品をご用意しております」


 それはつまり、寄付した金額の差で生まれる序列によって弱き者が虐げられないように配慮しながらも、金銭に余裕のある方――上級貴族の方などには特別待遇を約束する。

 そういう事だろう。


 なんという細やかな配慮。

 なんという思慮の深さ。


 この人には、一体どこまで未来が見えているのだろう。

 そう思わずにはいられない。


「最後に、国の経済を回し貧困層も買い物がしやすくするために、この催しに出店くださる店には物価を安くするように働きかけ、その安くした分を私からの補助金と、皆さまからいただいた寄付で補填する事、そして『王妃への協力の証』をお渡しする事を計画しています。こちらは平民と貧民の為の慈善の一部です。その他、同日に貧民街で炊き出しも計画しているのですが、こちらはまだ適任者が見つかっておらず――」

「では、わたくしが!」


 誰よりも早くそう声を上げていた。

 おそらく私が声を上げていなければ、他の方がすぐさま声を上げていただろう。


 王妃様は、嬉しそうにふわりと微笑まれた。


「嬉しいですわ。よろしくお願いしますね、ティーディルディ侯爵夫人」

「っ! はい!!」


 その後、何人かの夫人や令嬢が、私に炊き出しの協力を申し出てくれた。

 その中には、あの事実の正否を問わない噂話蔓延る夜会で話した事のある――しかし表ではこれまで関わってこなかった、子爵や男爵家の夫人や令嬢も含まれている。


 彼女たちも、王妃様の志に胸を打たれたのだろうか。

 それともあの夜会で繋いだ薄い縁を、この際に少しでも太くしようという考えなのか。

 

 ……いえ、どちらでもいいわ。

 寄付だけで体裁を保てるこの場で、自ら動こうと声を上げてくれた。

 派閥に関係なく、集まってくれた。

 それだけで素晴らしい事なのだから。




 ――彼女たちは、まだ知らない。


 この祭りの肝は、王妃が最後に言い流した出店である事を。

 そして、こうして炊き出しに名乗りを上げた面々を他から選別する事であった事を。


 これは王妃が、国王派でもダンドール公爵派でもなく、それらの垣根を超えた自分だけの第三勢力を作るための布石。

 それを知るのは、まだ王妃エリスただ一人である。




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