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真実の『家族』に気が付いた王妃の時戻り ~王妃エリスは賭け続ける~  作者: 野菜ばたけ
【第六章】第六節:噂好きたちの夜会にて(第八賭兆し:対貴族たち)

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第60話 ある社交場での話 ~噂好きな夫人視点~



 「お聞きになりました? 王妃様のお話」


 誰かがそんな事を言う。



 社交場は幾つもあるけれど、中でも中立派の一人が主催し、とりわけ派閥も身分も関係なく、より多くの夫人や令嬢、当主や子息が参加を公言する定期夜会。

 そこには多くの噂や話題が集まる。


 あまりにその数が多いので、基本的には「こんな話もある」という、軽くそれぞれの話題に触れる程度。

 ここに出席する貴族たちは、皆ここで情報を仕入れて個人的に調べたり、別の社交場での話の種にしていた。


 だからこの場で重要なのは、如何に様々な話題や噂を知っていて皆に話す事ができるのかという事。

 聞き手もすべてを真に受けない代わりに、多く話題を持っている貴族が重宝され、そういう人の元に人が多く集まる。



 基本的にはこの夜会に限定した話ではあるが、数が重視される上に、軽い話を提供するだけで身分にかかわらず中心になれる。

 しかし一概に「完全にこの夜会に限定した話」という訳でもない。


 ここで地位や影響力の高い貴族に顔と名前を覚えられ、別の夜会でそのやんわりとした功績が人脈作りとして花開く、というような事もある。


 中小貴族にとっては、上級貴族と懇意にする足掛かりを手に入れる事ができるかもしれないまたとない機会だ。

 上級貴族たちにとっても、今どのような話が下の爵位の者たちの間で話題になっているのか、自分たちの交友関係や視野では見え切らないところに手が伸びる。



 それぞれにとって、利のある場がここにはある。


 だからこそ、『人としての礼を欠かない限りにおいて、身分を不問とする』という条件付きでの参加であっても、上級貴族の参加率は高く、それに伴い下級貴族の客足も多い。



 そんな場において、この日は普段とは少し違った事が起きている。


「『王妃様』というと、新しい慈善事業に関するお話の事でしょうか」

「そうです、それ。どうやら王妃様は従来通りの一孤児院や一貧民街の炊き出し活動などという小規模な物には留まらない事をご計画なのだとか」

「私も聞きましたわ。一体どのような事をなさるご予定なのか」


 そう話すのは、令嬢や婦人たちの集まる一角だ。


 どうしても情報収集というのは、女性は女性同士、男性は男性同士で行うのが主流であり、この手の話題は自らも少なからず慈善事業を行う必要がある夫人や令嬢――すなわち女性たちの方が関心が高い。


 女性は噂話や話題、流行を社交の武器にする事が多いのに比べ、男性は領地や立場などの実利的な力を社交の武器とする事が多い事も、おそらく関係はしているのだろうが。


「旦那様辺りは『王妃様の新しいご施策』にあまり興味がない様子ですが、何故あんなに悠長にしている事ができるのか」

「我が家も似たような物ですわ。夫ばかりか息子も同じで『そんな事が国政に関わるというのですか』と」

「あぁ、貴女のところの三人の子どもは男児ばかりですものね。我が家などは家のお茶の時間などに、娘とあれやこれやとその手の話に花を咲かせる事もできますが」

「そうなのです。だから息子にも、早く結婚なさいと言っているのだけど」


 婚約者はいるけれど、ずっと我が家にいる訳ではないでしょう?

 やはりこういう話をいつでもできる子がいると、生活に彩りが出ると思うの。


 そんなふうに日頃のちょっとした悩みを話すその夫人は、「しかし」と小さくため息を吐く。


「我が家は、ほら。王族とも懇意ではないし、スイズ公爵家とも伝手がないでしょう? 話し相手がいたとしても、大した話はできなかったかもしれないわ」


 自らの交友関係を残念がる彼女は、ダンドール公爵派派閥の家の夫人だ。

 王家とスイズ公爵家、どちらとも繋がりを持てないのはある種仕方のない事である。


 それは主だって話をしていたもう一人の夫人も似たような物だった。

 二人して小さくため息を吐き、しかしすぐに「でもだからこそ」と顔を上げる。


「だからこそ、今日はここに勇んで来たのです! 何か新しい情報が聞けないかしらと!」


 近頃、社交場には王妃様に関する話題が増えた。

 それは特に女性間に限った話ではあるけれど、彼女の発案した妊婦用ドレスを発端に、一つのドレスのデザイン革命が起きたのだ。


 そんな、最近特に話題性を上げた王妃様の次なる行動に、今、注目が集まっている。


「どなたか知らない? 貴女のお宅は、たしか王国派派閥だったと思うけど」

「それが、私も他の皆様と大差ないのです。聞こえてくるのは、王妃様が新しい事をされようと意欲的に動いていらっしゃるという事だけでして」

「あらそうなの……。しかし王国派からもそう聞こえてきているという事なら、おそらく新しい慈善事業の話は本当なのね」

「……今のお話だと、王妃様ご自身が動いていらっしゃるという事なのでしょうか。一個人が動くだけで準備が進むのであれば、それ程大きな何かではないような気もしますけど」

「あっ、それなら」


 彼女たちの会話の中に、新たな声が入ってきた。


 皆の視線がそちらに向かう。

 そこに居たのは、男爵令嬢だ。

 いつも話の輪に入れてもらってはいるものの、滅多に発言しない子で、着ているドレスも時代遅れ。

 サイズもピッタリではないところを見ると、もしかしたら誰かのおさがりなのかもしれない。


 そんな彼女が声を上げた事に、驚いた夫人や令嬢も少なからずいたと思う。

 そんな彼女たちの驚きという名の圧に押されて、件の男爵令嬢は「あ、いえ……」と言葉を引っ込めようとした。


 しかしそれを逃がす他の面々ではない。


「どうぞ仰って? この夜会での会話の成否には、誰だって責任を持たないのだもの。もし言った事が間違っていても、誰も貴方を咎めないわ」


 かけられたその言葉に、令嬢は些かの逡巡を要した。

 しかしすぐに覚悟を決めたように、「ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが」という前置きの後に再び話し出す。



「先日、王妃様が一人の文官をご自分の専属に引き上げたというお話を聞いた事はありませんか?」


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