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真実の『家族』に気が付いた王妃の時戻り ~王妃エリスは賭け続ける~  作者: 野菜ばたけ
【第六章】第五節:後宮にて(第八賭準備:対エインフィリア公爵夫人)

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第58話 一見すると平和な打ち合わせ



 あの一言でどれほど側妃の行動をけん制できるかは分からないが、効果がなければ改めて断るという工程があるだけだ。


 そもそも自分第一主義的な考え方をするような相手の行動を、常に傍にいる訳でもないのに、刻一刻と変わっていく状況の中で完全に予測し事前策を講じるのは難しい。


 あの男に関しては信頼の欠片もない上に、陛下の言動について予測し策を講じる時間があるくらいなら、子どもたちの事を考えたい。

 だから賭けと呼べるほどの賭けもせず、そのための準備もしない事にした。



 それに、どうせ子どもたち以外の事に手を取られるのなら、周り回って確実に子どもたちにとっていい結果になる方に注力したい。


「ようこそ、エインフィリア公爵夫人」


 部屋を定刻通りに訪れた女性にそう声をかけて、私は正面の席を勧めた。


「ご機嫌麗しゅう、王妃様」

「先日お披露目したドレスの方は、どうやら好評なようですね」

「はい。当初の予定通り私の主催したお茶会で妊婦ドレスの改良版――カッチリとした夜会ドレスとは違う、美しい体の線を演出しながらもゆったりとしたドレスをお披露目したところ、皆さまからの評判がよく」


 ルリゼが紅茶を入れている。

 そのかすかな音の向こう側に子どもたちとアンの遊ぶ楽しげな声を感じながら、私は「そう」と安堵交じりに笑った。



 私が先取りした、妊婦ドレス。

 時戻り前の流行に倣い、私はアレについてエインフィリア公爵夫人に一つの提言を予めしておいていたのだ。



 ――あのドレスは、必ず妊婦のこれからの流行になっていくでしょう。

 しかしそれだけでは、勿体ない。


 誰もが求めていた『美しく着飾りたいけれど、もう少し楽に着る事のできるドレス』。

 それを、あの妊婦ドレスを参考にして作りましょう。

 私たちは妊婦に対してだけではなく、すべての女性の衣服改革と流行革命を起こすのです。


 と。



「決めた通り、『ごく内輪での夜会や昼の社交場において着るのがよいドレス』としての流布を始めました。早速私の派閥の中でも特に懇意にしている子たちにだけお渡ししたところ、彼女たちからも好評で、皆さんそれぞれに自分を主とした社交場でそのドレスを着てよさを喧伝しています。そのためドレスに関する噂も、予定通り私の派閥――中立派派閥から緩やかに広まっていっている状況ですわ」

「それなら、他の派閥に広がる頃には生産も追いつき、中立派の方々には一足早く一着目のドレスが行き渡りそうね」

「はい」


 計画がうまく行っているからか、それとも自分や自分の派閥が優位に立てている事への余裕からか、彼女は非常に機嫌がいい。

 時戻り前も含めそれ程多くの交流がない私にも分かる程度で、だ。


 普段なら間違いなく感情はひた隠し社交に興じるだろう事を考えると、少なからず彼女の信用を買う事に成功したのか。

 はたまた私を利用して、自分の派閥を大きくする事に成功しているから油断しているのか。


 ……どちらであっても、構わない。


 この女は確かに有用だけど、時戻り前には子どもたちを殺す手助けをした女だ。

 あちらがどういうつもりでも、私がこの女を手放しで信用する事は、一生ない。


 私がそう思った時だった。


 その警戒心の正しさを証明するかのように、ユアリア・エインフィリアが密かに爆弾を落とす。


「それにしても、よかったのですか? ご自分の派閥――王国派の方々を優遇しなくても。私を通して中立派を優遇してくださったのだとしても、ダンドール公爵派の方々と横並びにする必要はないと思いますが」


 一見すると、先程までと変わらない優美で、いかにも機嫌のよさそうな笑みを浮かべているユアリア。

 しかしその実この言葉は、私を試し、周りを試す行いだ。



 彼女はきっと私の周りの人間関係を探りたいのだろう。


 例えば、私が自派閥の人間をどう思っているのか。

 正しく状況を理解しているのか、何かしらの対策を取るつもりがあるのか。


 そして、傍に侍るメイドや、彼女を通して見える陛下との関係性。

 そこに付け入る隙は存在するのか。



 特に後者は、ルリゼに今のやり取りを聞かせているこの状況に対するけん制も含まれているのだと思う。


 ルリゼは、陛下のメイドだった。

 それは国内で地位がある者たちの間では最早常識だし、そこにはいい意味も悪い意味もある。


 陛下との間に良好な関係性を築けていれば、彼女の存在は私と陛下を最短で繋ぐ目。

 すなわち『私に何かあればすべて陛下に筒抜けになる』という牽制になるし、関係性が悪ければ途端にスパイにもなり得る。


 彼女は、私とルリゼの前で「何故『国王派』という名の陛下の派閥を優遇しないのか」と告げた。

 そこから見える私の言同、ルリゼの反応を見て、私たちの関係性を見透かそうとしたのだろう。



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