12.出撃
本のページに手を当てて、そのまま待つ。
すると、ブレイズがやった時とは違って茶色と桃色の丸が光り出した。
この部分は、治癒魔法と防壁魔法にあたるものだ。
この二つに適性があることは既に分かっているため、できれば他の部分が光ってほしかった。
「はあ、相変わらずこの二つか」
「光り方はかなり良いんじゃないか、才能ある証拠だ」
少し落胆する僕を、マスターが励ます。
治癒には自信があるものの、防壁の方は以前の出来事からすっかり臆病になってしまっている。
「僕の防壁魔法は、ミノタウロスの突進を止められませんでした」
「レンチェル、盾といっても物によって向き不向きがあるのは知っているか」
「どういうことですか」
「ミノタウロスの突進といった物理的な攻撃に対して強い盾もあれば、サラマンダーの炎のようなものに対して強い盾もある。君のそれは、もしかすると魔法に強いものなのかもしれない」
なるほど、確かに今までは物理攻撃に対してしか試す機会が無かったような気もする。
そう考える中、マスターは言葉を続ける。
「それだけじゃない、人によっては盾の形や、出す場所を変えることだってできる。きっと、使いようで何にでもなることができるはずだ」
何にでも、は少し誇張表現な気がするが、この話は今の僕にとってはとても重要だと感じた。
「レンチェル、早速そのテーブルの上に盾を出してみよう」
「よし……防壁!」
さっきまで食事をしていたテーブルを指すマスター。
指示通り、テーブルを狙って魔法を唱える。
どうやるのかは全く分からないが、何となくで気を動かす。
こう、テーブルの上の空間を掴むような感覚だ。
すると、盾が出る感覚はしたが、僕の視界にそれは無かった。
テーブルの上にあってほしいものが、どこにも見当たらない。
「レンチェル、後ろだ」
ブレイズにそう言われ後ろを向くと、少し離れた天井付近に盾が浮いていた。
残念ながら、失敗したようだ。
「お、少しだが遠い場所に出たな。いきなり上手くいくことはなかったが、練習すれば思ったように出すことができるようになるだろう」
まだ未熟だが、自分の選択肢が増えそうなのは素直に嬉しい。
今まで盾というものは自分の前に出して身を守るものだと思っていたが、それは思い込みというものだった。
「ありがとうございます。早速外で練習してきます」
僕がそういうと、マスターは頷いてくれた。
だが、それと同時に
「緊急! ハイバードの群れがそちらに近づいています、対処してください!」
この空間に、少しこもりのある声が響いた。
おそらく、町の外で見張りをしているブルーハウンドのメンバーが、魔法を使ってここまで声を伝えてきたのだろう。
せっかく練習しようと思ったのに、真っ先にやるべき仕事が入ってしまった。
ハイバードというのは、比較的巨大な鳥型のモンスターのことだ。
当然空を飛ぶことができる上、衝撃派を飛ばして攻撃する能力も持っているため、町に入られてしまうと人々に危険がおよぶ。
そこまで攻撃的な性格というわけでもないのだが、かといって人間を目の前にして全く攻撃しないというわけでもない。
何も起こらないとは言い切れないため、早めの対処が必要なのだ。
「僕が行きます」
すぐに声を出す。
ワイバーンの力を借りれば、奴らを追い払うことができるだろう。
多分ワイバーンはこの近くにいる。呼べば来てくれるはずだ。
本音を言うと一人でなんとかしたいが、空を飛ぶ相手ではこうも言ってはいられない。
「なるほど、確かにワイバーンを恐れて逃げてくれる可能性はあるな。よし、頼むぞレンチェル」
「もしワイバーンがいなかったら、その時は俺が行くぜ」
「ああ、頼む」
ブレイズに保険をかけて、装備を取り、そのまま宿舎を飛び出した。
「ちょっと背伸びしすぎな気もするが、この際それもいいかもしれないな」
「あいつもあいつなりに悩んでるんですよ、今は行動することで解決しようとしてるんじゃないですかね」
「無茶をしなければ良いのだが……もうしてるのか」
「俺も行きましょうか」
「いや、今は彼を信じよう。別の場所で問題が起きた時のためにも、君はここにいてほしい」
僕を見送った後で二人が何かを話していたようだが、内容までは分からなかった。




