第45話いいこと
優乃さんを想いながら、料理を続ける。
気づけば、和洋折衷のおかずがダイニングテーブルを埋め尽くしていた。
仕方ないので、タッパーに詰める。
……やばい。作りすぎた。
こんな時は、兄貴とともねえに電話をかけるのが1番だ。案の定、2人とも喜んで来てくれた。
「相変わらず、すごいな……」
兄貴がぽかんと口を開ける。
褒められてるのか、呆れられてるのか。
「やったあ! 今晩、おかず、作らなくてすむから、助かる~!」
ともねえは、隣で飛びはねている。
床が抜けそうだ。それは勘弁してほしい。
俺が、床をじっと見ていると、
「あ! 閃いた!」
ともねえの動きが、急に止まった。
「……何を?」
ともねえの『いいこと』は、だいたい、俺の『悪いこと』だ。
胸騒ぎが、ざわわ……と広がる。
「クリスマスイブに、ホームパーティーしよう!」
思ったよりも、ちゃんと『いいこと』だった。たまには、本当に『いいこと』言うんだな。
「……それ、クリスマスじゃダメなの?」
兄貴が冷静に尋ねる。
確かに。クリスマスイブは、優乃さんときちんと話をしたい。
みんなで集まるなら、クリスマスだろうな。
「だって、相手は、鉄壁のガードの女だよ? 同じシチュエーションだと、また、鉄壁のガードを展開してくると思うんだよね」
ともねえが、すごく冴えたこと言ってる。
中身……いつもと同じ人だよな……。
「……一理あるな」
兄貴まで、すんなり納得。
どうしたんだ。ともねえ。
「でも、私たち同席のもと、篝の手料理を食べれば、あら、不思議! ガードに隙が生まれて、チャンス到来……って、なると思うんだよね」
「なるほど……」
3人いれば、文殊の知恵だな。完璧じゃん。
あとは、俺が、頑張るだけだ。
「私たち、適当なところでいなくなるか、優乃を送るように誘導するから。どう?」
お。いいねえ。
その作戦、乗った!
「……わかった」
力強く頷く。
今度こそ、ビシッとかっこよく!
――決めてみせる!
「決まり~! 優乃にも、言っとくね~!」
「ちょっ……!」
ともねえが、タッパーを片手に去っていく。
ドタバタと……嵐みたいな人だな。
そこは、通常営業なんだ。
「俺も、当日は手伝うから」
「兄貴……」
「メニューは任せる。じゃね」
兄貴も、大量のタッパーを持って、帰っていく。なんだかんだ、弟想いのいい兄だ。
「……頑張ろう」
残ったタッパーを冷蔵庫にしまう。
再び、ソファに座って、本を開く。
優乃さんと一緒に、幸せになれるように。




