第38話ふわモコ大人買い
薄暗い照明。
色とりどりの魚が泳ぐ大きな水槽。
隣には、深緑色のニットワンピースを着た優乃さん。
端から見たら、ザ! リア充!
「いろんなお魚がいるね~」
「……そうですね」
優乃さんが、嬉しそうに水槽を眺める。
よかった。楽しんでるみたいだ。
「見てみて。タツノオトシゴがいるよ」
次に足を止めた水槽は、タツノオトシゴだ。
小さな水槽で、小さな海草に巻き付いている。俺の手にちょうど乗りそうなサイズだ。
「意外と小さいんですね」
「ね~……かわいいなあ~……」
優乃さんが、うっとりしてる。
いいなあ。俺も、そんな目で見られたい。
「アザラシとか、カワウソも見たいよね。あと、ペンギンもいいな」
めっちゃ、はしゃいでる!
誘った時のへんな間、何だったのかな。
気になるけど、ま、いっか。
「全部見ましょう。ゆっくりでいいですから」
「やったあ! じゃあ、まずは、アザラシね!」
優乃さんが、家族連れやカップルを上手に避けながら、子どものように駆け回る。
下手すると、迷子になりそうだ。
「あ……ちょっ……優乃さん!」
そうかと思ったら、ピタっと止まる。
その視線の先には……。
ペンギンの帽子が売られてる……!
ふわふわモコモコだ……!
「かわいいっ……!」
でも、親子連れが買うのを見て、躊躇してる。いや。フリーサイズなんだから、買うしかないでしょ。
「2人分ください」
店員さんに、クレジットカードを差し出す。
これが、借金返した男の、大人買いだ!
「えっ……!?」
「さあ。被りますよ」
帽子を受け取り、優乃さんに被せる。
うん。やっぱり、似合う。
妖精さん冬バージョンの完成だ……!
「もう……」
照れてる優乃さんの隣で、俺も被る。
かわいさ半減!
周りのちびっこたちの視線が痛い。
ペンギン! ごめん!
「か、かわいい……!」
でも、優乃さんだけは、別だ。
きらきらした目で、俺を見てる。
いちゃつくペンギン、実現なるか……!?
よし……今日は、頑張るぞ!




