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ダンジョン作りにはSayがいる!!‐この王道ダンジョンメイクには「何か」が足りないらしいのです。‐  作者: 西井シノ @『Eスポーツ活劇~電子競技部の奮闘歴~』書籍発売中
{共生編}☆☆☆☆

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ゴースト編 3

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顔を合わせる両種族。

しばらくの沈黙が場を包む。


・・・・


「んで?」


ランチが一言、つぎの言葉を催促する。


「あ、あぁ。・・・それでダンジョンの再奥地、旧巨人牢を目指してる。でも王国軍の騎士が鎧装備のまま洞窟へ向かってきてるっていう噂を耳にしたんだ。騎士隊の奴らより後に入ればダンジョンを追い返される可能性がある。あるいは試験そのものが中止にされかねない。かと言って先に入るならば、少なくともモンスターたちの警戒心が波及しない程度まで先行して進まなければいけない。むしろ直ぐに距離をとれるなら、洞窟の入り口にモンスターたちをおびき寄せることが出来る可能性だってある。けれどその場合、彼らに追いつかれたら危険だ。最近の王国軍は騎士隊の奴らでさえ、民間人から金目のものを巻き上げていると聞く。」




「状況的にも難しい試験だけど、オルテガはこういうイレギュラーすら見越していたのかもしれない。事前の情報収集も試験の一環だ。その中でこの時間を指定したのは、僕自らに他ならない。でも合格すれば、僕たちは魔法学校の特別寮に入寮出来る。」


「魔術学院か?」


「特別寮の生徒はウェスティリアを魔法学校と呼ぶらしいんだ。別の組織として扱うことで、何かあったときの責任を特別寮が単独で負うためなんだって。それもこれも、全部噂だけどね。だから命を懸けるには不相応かもしれない。僕らは噂ばかりを追ってここまで来た。西塔の3階、教授用トイレにある壊れた5つの時計。あれで試験にエントリーする時間を申告するんだ。僕は15時半の時計をひっくり返した。時計によれば試験を受ける先発者が二人、少しおいて後続が一人だった。あるいは挑戦者はもう一人増えているかもしれないが、特別寮はある意味そういった情報を収集する能力が求められるんじゃないかって思うんだ。諜報部隊的な素質。逆にそういった熱意や情報が無いと、特別寮のことを忘れてしまうんだ。」


「忘れるだ?」


「あぁ。学校の都市伝説と同じだよ。一時の流行が廃るように、興味の無い生徒はみんな特別寮の存在を忘れていく。熱意が無いもの、情報を持たないものは、特別寮なんてどうでもよくなっていくんだ。こんな大事な!母校の秘密なのに!!」


「噂じゃないっての。」


「分かってるよニワミ。」


ヒートアップしたベッチの話を軌道修正するように腕を組んだニワミが割って入る。

頭にクエスチョンマークを浮かべるランチ。

それをフォローするようにベッチは話を続けた。


「ニワミは直接、学院の先生からこの試験があることを聞いたんだ。でもその先生は同じ時間、高等科の教室で僕らに授業をしていた。とにかく、1層を経由してもいいし地下牢の階段から2層を経由してもいい。僕たちは巨人牢へ、自分たちが来たことを示す証拠を残し、聳え立つ巨人牢の絶壁を登って地上へ戻れば噂の試験はクリアなんだ。」


「ふーん。結構大変そうなんだな。特に、そのボロボロの身体じゃあ。」


「大変なんて百も承知だ。でもやりたいんだ。やるしかないんだ。・・・僕には何もなかった。放牧していた家畜が感染病で大量死したころ。貧しさと空腹から双子の兄が罪を犯した。何もしてない僕も同じ目で見られた。でも僕には罪を犯す勇気も、スラムの連中を退ける力も無かった。むしろ兄は、スラム街では人気者になれたんだ。犯罪で手に入れた小さな世界の名声を手に入れた。」


「オイラの村でも、悪戯のウメェー奴は人気だっだな。特に長老の家からおやつをくすねて来る奴は好きだったな。」


「そうなんだよランチ。でも僕には犯罪は無理だった。だから負けじと僕だって、孤児院でなんとか勉強をしてウェスティリアへ入学した。でも、人間はそう簡単には変われない。故郷を変えられる力も、誰かにとって必要とされるような特別な素質も僕には何もなかった。でも今は、特別な何かに近づいている。特別な存在に近づいている。選ばれた者だけがたどり着ける場所。ウェスティリア魔術学院の特別寮。その寮の名前は・・・名前はッ、名前がっ・・・!!」


「ドライアド。」


「そう!ドライアド―‐――」



バチャン。



ベッチの視界からランチの姿が消える。

滴る地下水。

貯まる泥水。

ここは洞窟、廃れた土の地下牢。

顔面を泥だらけにし、何かに躓いたランチが顔をあげる。


「う、うう。不運だ。」


「なんだ鎧か?」


ランチの足元を松明の火が照らす。

バラバラになった鉄の足。


「古くなった…鎧の足甲ね。」


冷静に観察するニワミ。


カタタ・・・


「ヒィ!!、――なにっ?!」


甲高い鉄同士が当たる音。

ヒューっと冷たい風が3者の耳元をすり抜けた。


「いま何か動いた?」


カタカタタ・・・!!


「ほ、ほら!!」


「風の音だって。」


「いいんや、おかしいんだな。ここはオイラしか知らないはず。」


ランチは真剣な眼差しで壁を見つめる。

そこはすでに牢屋の中。

足枷の鉄球は辺りのものより遥かに大きく、鉄格子はより太い。

何か。

旧き先人たちが、そこにあった特例を警戒していたかのように。


「スーパーランチ様になるための鎧が。オイラが集めた鎧が、無いんだな。」


その囚人はランチたちを見ていた。

未だ死にきれぬ亡霊として。


「おぉああッ!!」

「キャア!!」


ベッチの踏み出した一歩を鉄兜が浚う。

こけたベッチを追うように、手甲を腰にぶつけたニワミが大きく転ぶ。


「ガァッ――!!」


「ランチッ!!」


ランチの苦痛を堪える声。

垂れる血液。

牢屋を照らす蠟燭が一斉に青炎を吹き出してから暖色に灯る。


「ポルター…ガイスト・・・?」


震えるニワミの声がその正体を晒す。

浮かぶ鎧の各部位。

ランチの太ももには刺さった片手剣が、ゆっくりと鎧へ近づいてく。


「いたたたたたた!!!!!」


剣の柄をつかむ手。

そこへ連なり繋がる腕。

繋がり肩から胸、胴、膝、左足、右足、右腕、右手。


―――カタカタカタカタ・・・・!!


各部位集合。

最後に、揃った鎧が鉄兜を拾う。


『ハァー・・・大腿動脈の損傷は致命的。出血死までの時間は数分から十数分程度と非常に短い。しかし悪しきモンスターは死して然るべき。サぁ、若き学徒よ。アナタ方は…どうしましょうか?』


禍々しい空気。

魔障の霧。

鉄仮面の隙間から、赤い瞳がキラリと光る。



「一体全体、なんなんだコイツは!?」


ベッチの声が喉に張り付く。


















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