7.兄が見ている世界 —朝の勤め—
離れの玄関を開けて、母屋に向かう途中、庭の木を剪定しているおじさんを見かけた。
兄は笑顔で、
『おはようございます。いつもありがとうございます。』
『あの人だれ? 今までこの家に住んでて一度も見たことないんですけど… 何あの着物?時代劇でもやってるの?』
母屋に入ると、着物姿で家の中を掃除してくれているおばさんがいた。
兄は相変わらず笑顔で、挨拶をしていた。
『おはようございます。いつもありがとうございます。』
そして仏間に入り、手早く本家のご先祖様のご位牌に手を合わせてると、深く深呼吸をして、分家の方々をお祀りする仏壇へ向かい、お茶とご飯をお供えし、線香を焚いた後は、畳に正座し、深くお辞儀をした後、しっかりと聞こえる声で、分家の方々に対する感謝の気持ちを伝え、数珠を持ちお経を読み上げ始めました。
お経を読み上げた後、再度深くお辞儀を行い仏間を後にしようとした際に祖父の部屋の奥、わたしが昔入ろうとして注意された、あの部屋の方向から暗くて嫌な気持ちになる何かの気配を感じてしまいました。
仏間から出ると複数の見慣れない人達が私達を取り囲み、『今日は亜衣様もご一緒なのですね。
これからは、お二人で朝夕のお勤めをなさるのですか?』
『皆様、おはようございます。いつもありがとうございます。』
『亜衣は現在、とある事情で大怪我をしてしまい、申し訳ありませんが、勤めは出来ない状態なのです。亜衣の状況次第では、また一緒に来ることもあるかと思いますので、その時は宜しくお願いいたします。』
『あの方が、自称でも大坂家の家督を継ごうとする者が現れたにも関わらず、我々に全く挨拶にも来ないと大変ご立腹で、気性が荒いものを集めていましたが、篤志様でもあの方を宥めるのは難しかったようですね』
『私が未熟だったことが、全て悪いのです。皆様がご不快な気持ちにならないよう、次に家督を継ぐものと言われている限りは、私に出来る精一杯の勤めをさせて頂けたらと考えておりますので、宜しくお願いいたします。』
兄がそう言うと、満足そうに周囲を取り囲んでいた方々は、元居た場所に戻って行ったようでした。
次は、バケツと雑巾 線香 ライター 花を準備して、お墓へ向かいます。
ここでは、すれ違う人、全員に挨拶をする訳でなく、顔見知った相手とのみ 挨拶と感謝の気持ちを伝えているようです。
そしてお墓へ到着すると、仏間と同じように本家のお墓へは、軽くお参りを行い。
分家のお墓へ向かいます。
兄が水を汲んでくると、雑巾を使い 丁寧に吹き上げるとお花を変え線香をお供えした後、深く深呼吸を行い、深く一礼 感謝の気持ちを述べ、お経を読み、再度深く一礼し、帰宅しようとした時に夢でみた白い服をきた黒髪の長い女の人が立っていました。
『やっときましたか、今回は亜衣様に対する警告です。次はどうなるか、覚悟して下さい。』
と言われました。
すると兄が、『この度は亜衣が、大変ご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。今は怪我で動く事が出来ない状態なのですが、今後、亜衣が本当に家督を継ぐつもりがあるようでしたら、一緒に勤めを行うようにいたしますので、どうがご機嫌をお静め頂きたく存じます。』
そう伝えると、白い服を着た、黒髪の長い女の人は立ち去って行きました。
わたしは、背筋がゾクゾクして、泣きそうになるのを我慢しその場を必死で堪え、早く自宅に戻るようか兄を促しました。
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