61.兄が見ている世界 —料理対決②—
『今日は11月7日。
まりちゃんの試験が11月27日。
だから対決日は11月28日でどう?』
と兄は言った。
わたしは、ズルい! と思った。
兄は負けず嫌いだ。
試験前から試験期間中にかけて、まり姉が全く練習できないと分かっていて、この日程を提案している。
そして、まり姉は絶対にこの勝負に乗る。
なぜなら、まり姉も負けず嫌いであり、料理は得意な方だからだ。
それに現時点で、教科書通りに作っただけでこのレベルなら、練習なしでも勝てると思っている。
対策を講じる必要すらない。
そう考えているはずだ。
『料理で作る物は当日くじで決める。
この教科書に載っている料理の中から、それぞれ五つメニューを書く。
それをまきちゃんがシャッフルして、ありちゃんが目隠しをして一枚引く。
残りは捨てて、その引いたメニューを作る。
その後、まりちゃんと俺は、それぞれ買い出しに行く、ただし使っても良いお金は1500円までとする。そして、一時間以内に料理を完成させる。
もし作り方が分からなかった場合は、教科書を見ても良いものとする。』
『で、どうかな?』
まり姉は、
『異議なし。』
と即答した。
既に勝ち確だと思っている顔だ。
こうして、それぞれその日に向けて準備することになり、今日は解散となった。
まり姉とありさが帰宅した後、
兄はまきに言った。
『まきちゃんの試験日程は、まず11月14日に危険物試験だよね?
俺も受けるんだけど……
そして期末試験が12月1日から……
つまり、実際に二人で料理練習ができるのは、11月8日、15日、21日、22日か……
ねえ、まきちゃん。
うちに泊まれる?
そうしたら移動時間が短縮できて、効率が上がりそうなんだけど。』
ちょっと待った。
流石にお泊まりはダメでしょ!
遂に勝ちにこだわり過ぎて、頭がおかしくなったのか?
わたしはビックリした。
流石に、まき、断れよ。
頭おかしいのかボケ!ってキレていいからな!
そう思っていたのだが、
まきは、
『はい。喜んで!』
と答えた。
マジかー。大丈夫か、この二人……
わたしは心配になった。
うちの兄は、ルールに書いてなければセーフと当然のように考える。
塩と砂糖の容器を入れ替えるくらいは平気でする。
麺つゆの瓶に麦茶を入れたりもする。
最終的な味を判断するのはありさだから、危険なものを仕込むことはしないだろうが、
それと、わたしが気になったのは、
兄は、
『メニューはこの教科書から選ぶ』
『作り方が分からなければ教科書を見ていい』
とは言った。
だが、
『どの教科書か』
までは明言していないことだ。
兄が早速、
『今日は色々あって大変だったから、ゆっくり帰って休むとして…… 明日、泊まって一緒に学校行く?』
とぶっ込んだ質問をしてきた。
まきは、
『いいですけど、私、出血が多い方なので、終わってからの方が安心です。』
と答えた。
何が安心なの?
わたしに教えて欲しいんだけど?
と、食い気味に聞きたくなった。
兄は少し残念そうな顔をして、
『そっか……』
と言った後、笑顔になって、
『13日、14日、15日、20日、21日、22日は、うちに泊まれる?』
と聞いた。
まきは、
『一度親と話して、明日返事をしてもいいですか?』
と答えた。
親はまともであってくれ。
わたしは切に願った。
ご意見 ご感想 よろしくお願いします。




