4.どうなってるの?
あれ……?
わたし、何してたんだっけ。
何か、あった……?
えっと……。
友達と夏祭りに行って。
啓くんと花火を見て。
それで…
火花のひとつが、わたしの浴衣の左腕の部分に落ちた。
その瞬間。
コンパスの針を思いっきり突き刺されたみたいな痛みが走って。
そこで、記憶が途切れてる。
…なんなの、この臭い。
鼻の奥に変な臭いが張りついて、全然消えないし、
ちゃんと息してるはずなのに、苦しい。
どうなってるの?
今、わたしどうなってるの?
「10代後半女性。火炎熱傷。左上肢から左背部に熱傷あり。体表面積およそ20〜25%。深達性Ⅱ度、一部Ⅲ度疑い。意識昏迷。嗄声あり」
…声、デカ。
なんか色々言ってるけど、全然理解できない。
ゆり、みほ、啓くんは?
近くにいないの?
「バイタル。
BP92/58、HR128、RR30。
SpO₂91%、リザーバー10L。
JCS3。気道熱傷疑い」
知らない言葉と数字ばかりが耳に入ってくる。
……寒い。
真夏なのに。
そのまま、何が何だか分からなくなって。
途中で考えるのをやめた。
――――――――
…あれ?寝てた?
お父さんとお母さんがいる。
え。ベッドで寝てるの、もしかして…
わたし?
でも、わたしはここにいる。
…え、何これ。
なんか浮いてるし。
どうなってんの?
もしかして、わたし死んだ?
いや、でも。
ピッ、ピッ、と機械が鳴っている。
ドラマみたいに「ピーッ」って鳴ってない。
…ってことは、生きてる?
マジで、どうなってるの。
「みーつけた」
……え?
誰?
この状態のわたしに、誰か話しかけてる?
「ここだよ、ここ!」
声のした方を見る。
そして、固まった。
……あっくん?
どうやって話しかけてるの?
誰もこっち見えてないのに、あっくんだけが、わたしを見ている。
しかも、めちゃくちゃ恨めしそうな顔で。
「まず、こっち来い。なんで言うこと聞かなかったのか、申し開きを聞こうじゃないか」
…あっくん、怒ってる。
怒鳴ったり、物に当たったりする人じゃない。
でも分かる。
これ、絶対怒ってる。
「…はい」
恐る恐る、わたしはあっくんへ近づいた。
「なんで筒場行ったんだよ」
「だ、だから! 筒場って何か知らなかったんだって! 花火師さんに言われて初めて聞いたし!」
「おい、ミス偏差値。自称頭いい奴が、なんでそんなことも知らないんだよ」
「いや学校で筒場なんて単語聞いたことないし!? そんな言葉覚えるくらいなら英単語覚える方優先するでしょ!」
「俺より偏差値高い高校に入学したことしか誇れるものないんだから、敬意を込めてもう一回言ってやる。ミス偏差値」
「誰がミス偏差値だ!!」
わたしは思いっきり助走をつけて殴りかかった。
…のに。
すり抜けた。
「うわっ!?」
「面倒だな。一回、俺の中入れ」
「…は?」
次の瞬間。
吸い寄せられるように、わたしの体はあっくんの中へ取り込まれていった。
今回もですが、ご意見、ご感想があれば書き込みして頂けたらと思っています。




