48.わたしの入院生活②
次の日のお昼ご飯少し前くらいの時間に、お母さんがお見舞いに来た。
お母さんは、わたしに
『あいちゃん、様子はどう?』
と話しかける。
わたしは少し考えて、
『んー、いつも通りかな?』
と答えた。
お母さんは安心したように息を吐いて、
『あいちゃん、元気そうで良かった。
看護師さんから、話しかけても焦点の合ってない目で、“あーーー”とか“うーーー”とか言ってて、口も閉じずによだれも凄かったって聞いたから、精神的にまずいことになってるのかもしれないって心配してたんだけど……ちゃんと私の方を見て、話も理解して返事できてるから安心したー。』
お母さんは心底安心しているようだった。
でも、わたしは不安だった。
兄の中に入っていいと言われて、気軽に入り続けていいんだろうか。
昨日は兄の前で、粗相までしてしまった。
このまま続けてたら、人として終わってしまう気もする。
でも、それくらいしか楽しみが無いんだよなー。
兄の経験を疑似体験できるのは楽しかったし、
色々勉強にもなった。
……次からは、人に見られないよう工夫してやろう。
それでいこう。
文字通り、包み隠さず見せたわけだし。
いや、オムツの中身までは見せてないけど。
見せるつもりも無いけど。
そんなことを考えていると、お母さんが心配そうに
『どうしたの? 何かあった?』
と尋ねてきた。
わたしは、今回の出来事のきっかけにもなった、お父さんについて聞いてみる。
『お父さんだけど、どうしてわたしを当主にしようとしてるの?』
お母さんは一瞬ビクッとして、それからいつもの口調で、
『あいちゃんが優秀で、兄ちゃんより何でも出来るって判断したからじゃないかな?』
と言った。
……違う。
わたしが聞きたいのは、そういうことじゃない。
聞こえの良いことだけ並べているように感じた。
わたしは次の問いを投げる。
『わたしの今回の怪我って、そのことと関係あるんじゃない?』
お母さんは、一瞬黙って考え込んだ後、
『あいちゃんが立ち入り禁止の場所に入っちゃったからだと思うなー。
危険があるから立ち入り禁止になってるんだから、気をつけないとね。』
そりゃ、そうなんだけどさー。
何て言えば、お母さんは本当のことを話してくれる?
……もういいや。
手の内を隠すのはやめよう。
『あっくんも時期当主なんだよね?』
『あの子は、“仮”の時期当主ね。』
と、お母さんは答えた。
『毎日のお務めみたいなの、してると思うんだけど……
わたしは、しなくて良かったの?』
するとお母さんは、
『あの子から何か言われたの?』
と聞き返してきた。
あれ?
質問を質問で返してきた。
……もしかして、核心に近づいてる?
『いや、何も言われてない。ただ気になっただけ。』
『そう。お母さん、詳しいことは何も知らなかったからなー。』
『じゃあ、今は何か知ってたりする?』
『んー……わからないかな?
あっ、そうだった。今日お母さん、用事があったんだ。もう帰るねー。』
そして思い出したように、
『あっそうだ、お父さん、次の日曜日に帰ってくるみたいよ。
あいちゃんが会いたがってたって伝えておくわねー。』
と言った。
……つまり、
次の日曜日にお父さんを連れてくるから、直接聞けってことね。
わたしは、深いため息をついた。
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