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49.わたしの入院生活③

日曜日、お父さんとお母さんがお見舞いに来た。


わたしは、

『お父さん、忙しい中お見舞い来てくれてありがと。

お母さんも、いつもお見舞いありがと』

と、お礼を言う。


お父さんは、お母さんから

“わたしが何かに勘づき始めている”

と聞いているのだろうか。


どこか表情が固い気がした。


そして、お父さんが口を開く。

『お母さんから聞いたよ。

どうして亜衣を時期当主にしようとしたのか、だったな?


それは、お父さんもお母さんも、亜衣の方が相応しいと思っていたからだ。

そうなって欲しいとも思っていた。


亜衣自身も納得して、名前を書いて、血判を押した。

お父さんは、今でもそう思ってる。』


……なるほど。

回りくどい話は無しで行くってことか。

それとも、何か考えがあるのか。


わたしは、お父さんを見ながら言った。

『お父さんは、そう思ってるんだね。』


否定も肯定もしない。

まずは、相手がどう考えているのかを確認する。


その上で、わたしは本題を口にした。


『でも、何も説明が無かった。

そうなることのリスクとか、役目とか。

どうして、そこを説明しなかったの?』


お父さんは少し黙ってから、

『説明が必要なものだなんて、知らなかった。』

と答えた。


わたしは、思わず聞き返す。

『つまり、“あれをすれば時期当主になれる”くらいにしか思ってなかったってこと?』


『……ああ、そうだ。』


わたしは深く息を吐いた。

『そのせいで、わたしがこんな目に遭ってることについては、どう思ってるの?』


すると、お父さんは少し顔をしかめ、

『すまなかったとは思ってる。

だが……あいつは止めなかったのか? って気持ちもある。』

と言った。


『あいつって?』


『篤志だ。』


わたしは眉をひそめる。

『なんで?

どうして、あっくんが関係あるの?』


お父さんは当然のように言った。

『あいつは、仮とはいえ時期当主だ。

だから、“恩恵”があるはずなんだ。』


……恩恵?

わたしは首をかしげる。


『どういうこと?その恩恵って何?』

正直、そんなものを感じたことなんて無い。


すると、お父さんは少し声を強めた。

『当主や時期当主は、分家の人間達から敬われる。

それに、人から危害を加えられたり、何かおかしなことが起きる時は、事前に情報が来るはずなんだ。

……まあ、あいつの両親の最期を見る限り、万能では無いみたいだがな。』


わたしは、さらに疑問が増えた。

『わたしも、その時期当主なんだよね?

じゃあ、どうしてわたしには、その恩恵が無いの?』


『知らん。』

即答だった。


……え?


わたしが呆れていると、お父さんは続ける。


『前からやってたのは、あいつだ。

あいつが何かやったに違いない。

この状態が気に食わなかった、あいつが……』


……うわぁ。

思慮が浅い上に、他責思考かー。


よく今の職に付けたもんだなー。

わたしは、そんなことを思ってしまった。


そして、わたしは確認するように聞いた。

『つまり、お父さんの目的は、

わたしを時期当主にして、その“恩恵”を受けさせたかった。

……それで合ってる?』


『ああ、そうだ。』


お父さんは、迷わず頷く。


『それと、その力を俺のためにも使って欲しかった。』


……は?


わたしは思わず固まった。

『お父さんのためって、どういうこと?』


すると、お父さんは少し熱を帯びた声で言う。

『色んな人が、お義父さんの所へ挨拶に来てるのは知ってるだろ?

あの人は、人を手助けして、導いて、その見返りも得ている。


俺の今の仕事だってそうだ。

本来なら就職なんて出来なかった。


でも、お母さんと婚約していたから、用意して貰えた。』

そして、お父さんは悔しそうに続けた。


『俺も、それだけの力が欲しかった。

だが、その条件が俺には無い。

でも、亜衣にはある。

だから、望んだ。』


……私利私欲!!!!

しかも、“自分は無能です”って自己紹介付きで!


わたし、こんなののために、こんな目に遭ってるの?


笑えないんだけど。


そりゃ、あっくんも

“後は自分達で勝手にやれ”

って思うよね。


関わりたくない。

早くこの家から逃げたい。


そう考えても、おかしくない。


わたしは、深くて長いため息をついた。

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