233. わたしの新学期準備①
わたしは、あの日の出来事を思い出し、苦虫を噛み潰したような顔になって
『ゔぅ……。』
と唸る。
みほは、「失言した」という表情になり、
『あ……亜衣ちゃんも思い出したくなかったよね。』
と言った後、
『亜衣ちゃんが元気に学校へ戻って来てくれて、本当に良かった。』
と軽く抱きつき、すぐに離れた。
お母さんが、
『そろそろ時間だから、職員室へ行きましょうか。』
とわたしへ声を掛ける。
ゆりとみほは、
『じゃあ、またね!』
と手を振り、教室のある方向へ向かって行った。
わたしも二人へ手を振り返してから、お母さんのもとへ向かった。
⸻
職員室の前では、担任の先生が待っていた。
『大坂さん、久しぶりですね。体の調子は良くなりましたか?』
と心配そうにわたしを見る。
わたしは、
『はい。ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした。』
と頭を下げた。
担任の先生は、
『それでは、進路指導室へ向かいましょう。』
と、わたしとお母さんへ声を掛ける。
わたしとお母さんは頷き、先生の案内で進路指導室へ入った。
兄の学校の進路指導室とは、結構違うなぁ……。
進学校だからだろうか。
工業高校のように求人票がたくさん貼られているわけではなく、全体的に静かな雰囲気だ。
⸻
担任の先生は、
『どうぞ、こちらへお掛けください。』
と席を勧める。
わたしとお母さんは、
『失礼します。』
と頭を下げ、席へ腰を掛けた。
担任の先生は資料へ目を通しながら、
『亜衣さんの復学についてですが、以前お電話でお話ししたとおり、四月から復学し、高校二年生をもう一度やり直す形でよろしいでしょうか。』
と確認する。
わたしとお母さんは、
『はい。よろしくお願いします。』
と返事をした。
先生は続けて、
『元々の同級生とは学年が変わり、現在の一年生と一緒に勉強することになりますが、大丈夫ですか?』
と、わたしへ尋ねる。
わたしは、
『はい。最初は抵抗がありましたが、今は大丈夫です。』
と頷いた。
先生も頷き、
『亜衣さんご本人も納得されているようで安心しました。
せっかくですので、進学先についてもお話を聞かせてください。』
と言う。
わたしとお母さんは、
『はい。よろしくお願いします。』
と返事をした。
先生は手元の資料を見ながら、
『もともと亜衣さんは、県外の国立大学を第一希望にされていましたが、その考えは今も変わりませんか?』
と尋ねる。
わたしは少し考えてから答えた。
『それなんですが、入院中に両親とも話をしました。
今も服を着る時などは誰かに手伝ってもらっている状態ですし、この状態があとどれくらい続くのかも分かりません。
なので、地元の国立大学や、通信制大学も選択肢として考えるようになりました。』
先生は、わたしの話を手帳へメモしながら頷く。
『分かりました。
もともとの亜衣さんの成績であれば、学部にもよりますが十分に目指せると思います。
この内容は、来年度の担任へもしっかり引き継いでおきます。』
そう言って先生は手帳を閉じた。
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