231. わたしのお付きの人探し⑩
絹さんと話をしながら歩いていると、家が見えてきた。
わたしは銀さんと絹さんへ笑顔を向け、
『銀さん、絹さん、もうすぐ家ですね! 今朝に続いて、夕方もわたしに付いてきていただき、ありがとうございます。』
と頭を下げた。
銀さんは少し困ったような表情になり、
『亜衣様。確かに家は見えておりますが、到着するまでは気を抜かれませんようお願いいたします。』
と言って、すっと横を向く。
わたしも首を傾げながら銀さんの視線の先を見る。
すると、道端の茂みから黒い服の女がこちらを凝視し、わたしを追い掛けてきていた。
『ぎゃーー!!』
わたしは思わず叫び、
『何であの人、ずっとわたしに付いてくるの!?』
と頭を抱えて、その場にしゃがみ込む。
絹さんはすぐにわたしへ寄り添い、銀さんは黒い服の女が近付いて来られないよう警戒していた。
絹さんは真剣な表情でわたしを見る。
『亜衣様は、ご自身の意思で次期当主になられると決断なさいました。
この程度の者に付きまとわれたくらいで、不安そうなお顔をなさってはいけません。
もちろん警戒は必要です。
ですが、周囲には常に笑顔で、余裕を見せてください。
次期当主様が不安そうなお顔をされていたら、分家の者たちは、どうすればよいのでしょうか。』
わたしは思わず、
『え……?』
と首を傾げる。
絹さんは優しく微笑み、
『亜衣様が何も間違ったことをしておらず、やましいことも無いのであれば、堂々としていればよいのです。』
と語りかけてくれた。
わたしは小さく頷き、
『でも……ずっと付きまとわれるのは怖いです。』
と素直な気持ちを伝える。
絹さんは安心させるように微笑み、
『そのために、私たち分家の者がおります。』
と言った後、
『もちろん、気を抜いてよいという意味ではございませんよ。』
と付け加えた。
わたしは大きく深呼吸をして立ち上がる。
そして胸を張り、堂々と歩いて自宅の敷地へ入った。
やはり黒い服の女は敷地へ入って来られないようだ。
わたしは銀さんと絹さんへ向き直り、
『銀さん、絹さん、本日はありがとうございました。おかげで今日のお務めを無事に終えることができました。』
と頭を下げた。
二人も丁寧に頭を下げ、母屋へ戻っていく。
何とか終わった……。
これから毎日こんな感じなのかーー。
そう思って小さくため息をつく。
でも、少しは会話もできたし、今日は及第点かな♪
そう思うと、自然と笑顔になり、離れの自宅へ入った。
玄関では兄が待っていた。
『亜衣ちゃん、満足そうな顔してるってことは、うまくいったのかな?』
と尋ねられる。
わたしは笑顔で、
『あっくんから教えてもらった会話方法、結構役に立ったよ。』
と答える。
兄は呆れたように、
『会話方法じゃなくて、聞き方だけどね。』
と言い返した後、軽く深呼吸をして、
『まあ、いいや。俺は今日、まりちゃんの家に泊まるから。』
と言って家を出て行く。
わたしは、
『はーい。いってらっしゃい!』
と兄を見送った。
あっくん、本当に毎日充実してそうでいいなぁ……。
去年までは、バカで非モテの陰キャだと思ってたんだけどなぁ……。
そんなことを考えながら、小さくため息をつく。
『よし! 晩ご飯食べて、お風呂入ろっと♪』
わたしは靴を脱ぎ、自分の部屋へ向かった。
部屋へ戻ると、晩ご飯まで少し勉強をする。
しばらくすると、
『亜衣! 晩ご飯よ!』
と、お母さんの声が聞こえてきた。
『うん! 今行く!』
と返事をして居間へ向かい、家族と晩ご飯を食べる。
食事を終えると、お風呂へ向かった。
『お母さん、圧迫衣を脱ぐの手伝って!』
と脱衣所で声を掛ける。
一人でお風呂に入り、お母さんに保湿剤を塗ってもらい、圧迫衣を着せてもらっている時だった。
……あれ?
パンツが無い。
着替えの中に、パンツだけ入っていない。
『お母さん、わたしのパンツは?』
と尋ねると、
『亜衣ちゃん、お布団をクリーニングに出すのって、思ってたより大変だったの。
だから、お母さんが安心できるまではオムツを履いてなさい。』
そう言い残して、お母さんは脱衣所を出て行った。
わたしは大きくため息をつく。
十七歳になって、オムツ生活とは……。
そう思いながら、お母さんが用意してくれたオムツを履き、パジャマに着替えて脱衣所を後にした。
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