230. わたしのお付きの人探し⑨
わたしは何と言っていいのか分からず、右手で頭を抱え、
『あ……、うう……。』
と悩む。
絹さんが、
『亜衣様、どうされましたか?』
と心配そうにわたしの顔を見る。
わたしは咄嗟に、
『あっくんは、どのように変わったんですか?』
と首を傾げた。
絹さんは少し寂しそうな表情で、
『篤志様は、どのように辛い場面でも努力されるようになりました。』
と答える。
『努力ですか……? それは、どのような場面ですか?』
とわたしは尋ねる。
絹さんは静かに話し始めた。
『勉学についてはもちろんですが、日々のお務めも欠かしたことがありませんでした。
どのように考え、どのように行動すれば、より効率的に成果を得られるのか。
常にそのことを考え、当主様に付き、熱心に学ばれておりました。
分家の者の一人として誇らしい気持ちもありましたが、その反面、少し悲しい気持ちもございました。』
絹さんの声は少し暗かった。
わたしは思わず、
『常に論理的に考え、合理的に行動しろ……か。』
と兄を一言で言い表す。
……まさに、その通りだよな。
絹さんは頷きながら、
『まさに、その通りです。
篤志様は常に、そのように行動されていたと思います。』
と言う。
わたしも頷き、
『やっぱり、そうですよね。』
と答えた。
そうしないと、中学生の頃、わたしより少ない勉強時間で、わたしより良い成績を取れるわけがない。
毎日早寝早起きしてたのに、いったいいつ勉強してたんだよ!
と、今でも心の底から思う。
高校は偏差値こそ高くない学校へ進学したが、成績は三年間ずっと学年一位。
さらに資格取得にも積極的で、知識を得ることに対しては貪欲だった。
今となっては、この家を一日でも早く出て、完全に自立した生活を送りたい。
そんな思いで行動していたことが分かる。
絹さんは少し笑顔になり、
『分家の者たちの間では、篤志様が次期当主になられれば大阪家は安泰だ、とよく話しておりました。』
と言った。
しかし、その笑顔はすぐに寂しそうな表情へ変わる。
『ですが、結局は仮契約のまま十五年を過ごされ、先日、その契約も破棄なされました。』
わたしが次期当主になっちゃったからなぁ……。
でも、今のわたしは知っている。
兄は、次期当主になりたくなかった。
だから十五年近く、あえて仮契約のままで過ごした。
そして、お父さんには都合よく解釈できる程度の情報だけを流した。
何となくしか知らないお母さんに、お父さんが尋ねる。
お互い中途半端な情報しか持っていないのに、じいちゃんにも兄にも聞けない。
そんな中、兄は九割が嘘で、一割だけ本当のことを書いたメモをゴミ箱へ捨てた。
そのメモを真に受けたお父さんが、わたしに次期当主の契約を結ばせたんだ。
本当だったのは、契約の結び方だけ。
わたしは、深く長いため息をついた。
ご意見 ご感想 よろしくお願いします。




