226. わたしのお付きの人探し⑤
兄から尋ねられたわたしは、
『まーまー、座りなよ!』と座るように勧める。
だが兄は、
『座る所も無いし、何かあった時にワンテンポ遅れるから、立ったままでいいよ。』
と断った。
わたしは軽く眉間にしわを寄せ、荷物を端へ寄せる。
『座るスペースは確保したよ! 座って!』
と再び勧める。
兄は軽くため息をついて腰を下ろし、
『で、何があったの?』
と尋ねた。
わたしは、
『お母さんから、分家の方たちを見たり会話したりできる能力は男系しか持ってないって聞いたんだけど、どういうこと?』
と尋ねる。
兄は、
『そうらしいね。でも、亜衣ちゃんは女系の能力を持ってるでしょ?』
と言う。
わたしは、
『それだよ! それについて教えてよ!』
と身を乗り出した。
兄は少し考え込み、
『俺もあんまり詳しくは知らないんだけど……』
と言った後、説明を始めた。
『まず、じいちゃんは男系。その息子である俺の父親も男系。そして、その息子の俺も男系だから、分家の方たちとコミュニケーションが取れる。ここまでは分かるよね?』
わたしは頷く。
兄は、それを確認して続けた。
『じいちゃんの娘である亜衣ちゃんのお母さんは、男系女子だから分家の方たちとコミュニケーションが取れる。でも、亜衣ちゃんの代で女系になったから、その能力は受け継がれなかった。ただそれだけの話。
もちろん、亜衣ちゃんに兄や弟がいたとしても、母親が女系なんだから、その子たちも女系だよ。』
わたしは胸を張って言う。
『男系・女系の意味くらい知ってるよ! 単に男だから男系、女だから女系ってわけじゃないことも分かってるから。』
そして続けて、
『男系については分かったから、今度は女系の能力について教えてよ!』
と尋ねた。
兄は再びため息をつき、
『既に亜衣ちゃんがやってるように、相手の了承があれば意識を共有して、その人の能力をコピーできる……ってことかな。』
と答えた。
わたしは、
『今後、他の人と意識を共有したらどうなるの?』
と尋ねる。
兄は首をかしげ、
『それが分かんないんだよね。上書きされて以前の能力が消えるのか、それとも複数の能力を同時に使えるようになるのか……。』
と少し考えた後、
『亜衣ちゃん、試してみてよ。』
と真顔で言った。
わたしは慌てて首を振る。
『いやいや! どうなるか分からないのに試したくないよ! そもそも、あっくん以外で了承してくれる人なんているの?』
兄はさらりと、
『亜衣ちゃんのお父さんとかどう? 次期当主の件で確執ができたって聞いたし、改善されるかもしれないよ。亜衣ちゃんが頼めば断らないと思うよ。』
と言った。
わたしは兄を睨み、
『それはイヤ!』
と即答した。
少し間を置いてから、今度は別のことを尋ねる。
『最後に、あの黒い服の女の人。あの人って何なの? 病院からずっと憑いて来てるよね? じいちゃんにもあっくんにも近寄らないのに、なんでわたしだけなの?』
兄は肩をすくめる。
『あれが何なのかは知らない。でも、亜衣ちゃんのことを気に入ってるのは間違いないと思うよ。』
『気に入るって……。』
と、わたしは頬を膨らませる。
兄は少し真面目な表情になり、
『病院では、あの人に気に入られてた人は亡くなってた印象がある。でも、当主や次期当主は分家の方たちを忘れず、償い続ける存在だから、分家の方たちが一緒にいる限り近づけないのは確かだよ。』
と言った。
そして立ち上がり、
『俺はこれから、まりちゃんとありちゃんに会うから。じゃあねー。』
と部屋を出ようとする。
わたしは慌てて呼び止めた。
『あ……ちょっと! わたしと、まり姉・ありさなら、どっちが大事なの?』
兄は振り返りもせず、
『まりちゃんと、ありちゃん。』
と、表情ひとつ変えずに言い切って部屋を出て行った。
……知ってたけどさ。
もう少し言い方ってあるじゃん。
そう思いながら、わたしは少しだけ落ち込んだ。
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