218. 兄が見ている世界 —大晦日とお正月⑬—
ありさは恐る恐る、
『まりちゃん、もし今回の誤解が解けてなかったら、私どうなってたの?』と尋ねる。
まり姉は焼き鳥を飲み込み、
『私一人で改造手術は無理だから、優秀な人たちを集めて、機材も含めて準備ができたらだけど……。』
少し考えた後、笑顔になって続けた。
『ありちゃん、お待たせ! 優秀な人たちを頑張って集めて、最高の場を用意したから行こ!って誘うかな。』
ありさは顔を真っ青にし、
『それで私がおしゃれして、まりちゃんについて行ったら人体改造されるの?』と恐る恐る聞く。
まり姉は少し悩みながら、
『ありちゃんがおしゃれしてたら、「素のありちゃんをみんな待ってるから、おしゃれする必要ないよ」って言うかな?』
わたしは、
ありさ逃げろ! まり姉と兄の二人といたら何をされるか分からないぞ!
と思ってしまう。
ありさは不安そうな表情で、
『まりちゃん、あっくん、他に私のことで勘違いしてることない?』
と確認する。
まり姉と兄は首を傾げ、少し考えた後、
『何が勘違いなのかも分からないからなー。』
と笑う。
ありさは真剣な表情で、
『笑い事じゃないから! この話だって修正してなかったら、私の人生終わってたかもしれないんだよ!』
と訴え、続けて、
『まりちゃん、あっくん、私の好きなものは?』
と質問した。
まり姉は、
『カブトムシ!』
兄は、
『セミ!……もしかしてセミの抜け殻かな?』
と真面目に答える。
ありさは、
『違うよーー!』
と悲しそうな声を上げる。
まり姉は、
『可愛い系の文房具を集めてるのは知ってるけど、それだと普通すぎるし……。』
と首をかしげ、
兄も、
『サ〇〇オのピ〇〇ちゃんのグッズも集めてるけど……。』
と考え込む。
ありさは少し安心したように、
『それだよ! 二人とも知ってるじゃん! 私の誕生日にもプレゼントしてくれたでしょ! 今も大切にしてるんだよー。』
と笑顔になる。
まり姉は、
『やっぱり初対面の印象だよねー。絆創膏と虫かごがよく似合う、かわいい男の子だったし。』
と笑う。
ありさは頭を抱えながら、
『全部お兄ちゃん達のせいだー! ……いや、お父さんとお母さんか!?』
と嘆き、
『髪は短かったし、男の子の服と下着だったし、学校の机にはセミの抜け殻、どんぐり、綺麗な石が入ってたからかな。』
と振り返る。
まり姉は笑いながら、
『それもあるねー。スカートに興味を持って、クラスの女の子のスカートをめくって「動きにくくないの?」「お股スースーしないの?」って聞いたり、「このパンツ私のと違う!」って脱がそうとした時は流石にビックリしたし。
女の子同士でおままごとしようってなった時も、「何が楽しいの? 仮〇〇イダーごっこしよう!」って変身ポーズを決めてたからね。』
と懐かしそうに話す。
ありさは恥ずかしそうに笑い、
『あー、みんながシール交換してる中、私だけ持ってなくて、「このセミの抜け殻じゃダメ?」って聞いたこともあったから勘違いされたのかな?』
と首をかしげる。
まり姉は大きく頷き、
『それだよ! 私が「これ、大切に集めてるシールなんだ」って見せたら、ありちゃんはカブトムシを取り出して、「これ捕まえるの頑張ったんだ!」って満面の笑みだったもん。しかも体じゅう絆創膏だらけだったし。』
と笑う。
話しながら、まり姉は出店で買った食べ物を食べ終えると、今度はコンビニで買ったお菓子を開け始めた。
まり姉、まだ食べるの!?
まり姉と暮らしたら、家にお菓子なんて置いておけないかも。全部食べられそう……。
そんなことを思ってしまう。
ありさは車窓の景色を眺めながら、
『もうすぐ家に着くよ! 楽しい時間ってあっという間だなー。』
としみじみつぶやく。
すると、まり姉は、
『ありちゃん、今日は私の家に泊まりにおいで!』
と笑顔で誘った。
わたしは、
またアホ姉になってる!
と思わず心の中でツッコミを入れる。
兄はそのまま、ありさの家を通り過ぎ、まり姉の家へと車を停めた。
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