217. 兄が見ている世界 —大晦日とお正月⑫—
まり姉とありさ、兄の三人は、出店を見て回る。
まり姉の両手にはイカ焼きが握られ、口はすでにもぐもぐと動いている。
まり姉は、ありさと兄へジェスチャーで「これを何個」と伝えていた。
(この人、本当によく食べるなー。)
と、わたしは思う。
ありさと兄の両手も、出店で買った食べ物でいっぱいだ。
まり姉は満足そうに先頭を歩き、駐車場へ向かう。
三人は車へ乗り込み、兄がエンジンをかけて帰路についた。
ありさは、出店で買ったポテトを食べようとした瞬間、まり姉に手を軽く叩かれる。
『あ、いた……。』
ありさがまり姉を見ると、
まり姉は自信満々に、
『それ、私が買ってもらったポテト!』
と胸を張る。
(食い意地やば……。)
わたしは少し引いてしまう。
もうこの人、まり姉じゃなくて「アホ姉」になってる。
ありさは、
『こんだけあるんだから、一つくらいいいじゃん!』
と訴えるが、
まり姉はぷいっと横を向いてしまう。
見かねた兄が、
『まりちゃん、ありちゃんと仲良く食べてほしいな。』
と声を掛けると、
まり姉は渋々といった表情でポテトを差し出した。
こうして二人は仲良く食べ始める。
しばらくして、ありさが思い出したように口を開く。
『二人のおみくじ、すごかったねー。
将来の夢を叶える人達は違うなーって思ったよ。
小さい頃から結婚するって言ってたもんねー。』
そう話した後、小さな声で、
『私の将来の夢は実現しなかったなー。』
とつぶやく。
兄は軽くため息をつき、
『ありちゃん、諦める必要はないよ。
まりちゃんも俺も、ありちゃんが小さい頃に話してた将来の夢、ちゃんと覚えてるから。』
と微笑む。
ありさの表情がぱっと明るくなる。
兄は続けて、
『まりちゃんが大学でしっかり勉強して、優秀な人材も探してきてくれるはずだから。』
と言うと、
まり姉は食べながら何度も頷いた。
ありさは嬉しそうに、
『ありがと!』
と笑う。
まり姉は、食べ物を飲み込んだ後、
『まだあの夢、諦めてなかったんだね。』
とありさを見る。
ありさは、
『女の子だったら夢見る人も多いと思うんだけどなー。』
と首をかしげる。
まり姉は、
『私は特に興味なかったけどなー。
ゆりも興味なかったと思うし。』
と答え、
兄も、
『亜衣ちゃんも、あまり興味なさそうだったけどなー。』
と少し考えながら続けた。
(女の子なら夢見る人も多いもの?
でも、わたしも、まり姉も、ゆりも興味ないし……。
一体何なんだろう?)
わたしは首をひねる。
ありさは、
『時代なのかなー。
最近の若い人は、あんまり興味がない人も多いって聞くし。』
とつぶやく。
まり姉と兄は顔を見合わせて首を傾げ、
兄が、
『視聴率は、今より昔の方が良かったかもだけどね。』
と返す。
ありさはさらに不思議そうな表情になった。
まり姉は真剣な顔で、
『実現できるようになったら、まずはその大きなおっぱいから何とかするから!』
と宣言する。
『なんか、もったいないなー。』つぶやいた。
ありさはますます首を傾げ、
『私の将来の夢、何だと思ってるの?』
と二人へ尋ねた。
まり姉と兄は声を揃えて、
『仮〇〇イダーでしょ!』
と迷いなく答える。
『違うわ!!』
ありさのツッコミが車内に響く。
驚いたまり姉は、
『だって、小さい頃から将来の夢は仮〇〇イダーになることって言ってたじゃん!
変身ポーズを決めたり、クリスマスにベルトを買ってもらって自慢してたし!』
と反論する。
ありさは頭を抱え、
『昔のことを知りすぎてる友達っていうのも考えものだね……。』
と苦笑いした後、
『私の夢は、綺麗で可愛いお嫁さんだよ!』
と高らかに宣言した。
わたしは、
(ありさは、まり姉にイケメンで優秀な大学生を紹介してもらえるって思ってたのに、
まり姉達は改造手術の話だと思ってたのか……。)
と少し怖くなってしまった。
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