209. 兄が見ている世界 —大晦日とお正月④—
ちょうどそのタイミングで、イルミネーションが一斉に点灯し始めた。
ありさは目をキラキラと輝かせ、思わず口元を手で覆う。
『わー……綺麗!』
まり姉も周囲を見渡しながら、
『私たちの地元だと、イ〇ンのちょっとしたスペースに電飾が巻きついた木が何本かあるくらいだったから、全然違うね!』
と感心した。
すると、ありさがニヤリと笑う。
『このイルミネーションをクリスマスイブに、まりちゃんとあっくんは見たんだよね。それなのに何もなかったの?』
まり姉は少し照れながら、
『何もなかったから! ほら、写真撮ってあげるからスマホ貸して!』
と、ありさからスマホを受け取り、ライトアップされた景色を背景に写真を撮り始めた。
撮り終えると、ありさが笑顔になる。
『せっかく三人で来てるんだから、今度は三人で撮ろうよ!』
近くにいたテーマパークのスタッフへスマホを渡し、写真撮影をお願いする。
三人は笑顔で並び、思い出の一枚を撮ってもらった。
写真を確認しながら、ありさがしみじみと呟く。
『まりちゃんとあっくんに出会えて、本当に良かったよ。時間が許す限り、ずっと一緒にいたいよ。』
まり姉と兄は顔を見合わせ、静かに頷いた。
やがてありさが手を叩く。
『さあ、そろそろ晩ご飯だね! お昼も軽くしか食べてないから、いっぱい食べよう!』
そう言って二人の手を引き、ホテルへ戻っていく。
⸻
ホテルへ戻り、館内のレストランへ入る。
落ち着いた照明が店内を優しく照らし、窓の外にはイルミネーションが輝いている。
ガラス越しに映る光が店内にも広がり、幻想的な雰囲気を作り出していた。
中央には豪華なビュッフェカウンター。
シェフたちが目の前で温かな料理を仕上げている。
香ばしく焼き上げられたローストビーフ。
時間をかけて煮込まれたデミグラスソースの料理。
魚介を使った温製料理やパスタ、色鮮やかな前菜、新鮮なサラダ。
さらにチーズや生ハム、焼きたてのパン、スープ、季節のデザートまで所狭しと並んでいる。
料理から立ち上る湯気と香りが食欲を誘い、グラスの触れ合う小さな音と穏やかな会話が、年末の夜らしい落ち着いた空間を演出していた。
ありさは目をぱあっと輝かせる。
『わあー……。』
思わず声が漏れた。
『これって、残さなかったら好きな物を好きなだけ食べていいんだよね?』
兄が笑顔で頷く。
『うん。そのはずだよ。』
『どれから食べようか迷っちゃうよ!』
少し悩んだあと、満面の笑みでまり姉の手を掴んだ。
『さあ、まりちゃん行くよ! 私とあっくんの前なんだから、今日は気にせずいっぱい食べなよ! アホになっても大丈夫だから!』
そう言って二人は料理を取りに向かう。
⸻
一人残された兄は、数種類のスープを少しずつ器によそい、飲み物も用意して席へ戻る。
二人が戻ってくるのを、穏やかな表情で待っていた。
しばらくして戻ってきたありさのお皿には、これでもかというほど料理が盛り付けられている。
『あっくん、本当にこれだけで足りるの?』
少し心配そうな表情を向ける。
兄は優しく笑った。
『まりちゃんやありちゃんが、美味しそうにたくさん食べてくれれば俺は満足だから。遠慮せずいっぱい食べてよ。』
ありさは胸を張る。
『任せてよ! 特にまりちゃんは、美味しそうにいっぱい食べるから、見てるだけでも絶対満足できるから!』
兄は笑って頷いた。
『知ってるよ。ありちゃんも遠慮しないでたくさん食べてね。次に旅行へ行く頃には、俺ももっと食べられるようになってるはずだから。』
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