208. 兄が見ている世界 —大晦日とお正月③—
まり姉、ありさ、兄の三人はホテルに入り、チェックインを済ませると部屋へ向かった。
ありさは、
『わー、思ってたより広ーい!』
と、そのままベッドへダイブし、
『ふかふかー。』
と幸せそうな顔になる。
ベッドは三台あり、そのうち二台は並んでいるが、もう一台は少し離れた場所に置かれていた。
兄は、
『俺はこのベッドかなー。』
と言いながら、離れたベッドの近くに荷物を置いた後、
『まりちゃん、ありちゃん。せっかくテーマパーク内のホテルだから、ご飯の時間まで少し回ろうか?』
と声を掛ける。
まり姉とありさは、
『行きたい!』
と声を揃えた。
まり姉は、
『クリスマスは過ぎたけど、イルミネーションかなり綺麗だから、ありちゃんもスマホ持って行ったほうがいいよ!』
と言い、自分もスマホを手に取る。
三人は夕方のテーマパークを歩き始めた。
ありさは辺りを見回しながら、
『私たちが住んでる県のテーマパークって言ったらここなんだけど、実は来るの初めてなんだよねー。』
と嬉しそうに話す。
すると、
『あっ、このアトラクション……って言っていいのかわからないけど、待ち時間ないから入ってみよーよ!』
と、まり姉と兄の手を引いた。
まり姉と兄も笑顔で、
『行ってみよ!』
と後に続く。
中にはトリックアートが並んでいた。
ありさは、
『あー!これ見たことある!右と左で場所を入れ替わると背の高さが変わって見えるやつだ!』
と目を輝かせる。
さらに歩きながら、
『どうなってるの?って思ってたけど、遠近法を上手く利用してるんだねー。背が小さく見える方は見る人から遠くて天井が高いのに、背が高く見える方へ行くには、見る人に近づきながら坂を登るんだ。天井も低くなって……あいたっ!』
と頭を押さえた。
『頭ぶつけちゃったよー。』
兄は、その様子を笑いながらスマホで撮影している。
ありさはすぐに次の展示へ向かい、
『あー!あの絵、見る角度によって見え方が変わるよ!』
とテンションは最高潮だ。
絵へ近付いた後、真横から眺め、
『あっ……絵が立体的っていうか、飛び出してるじゃん!』
と納得したように頷いた。
一通りトリックアートを楽しみ終えると、
ありさは少し大人びた表情になり、
『人生って、知らない方が不思議で楽しいこともあるんだね。』
と呟く。
まり姉と兄は、そんなありさを見て微笑んだ。
次に目に入ったのはプラネタリウムだった。
まり姉は、
『小学校の宿泊学習以来じゃない?見ようよ!』
と提案し、三人で中へ入る。
上映が終わると、
まり姉は、
『あー、綺麗だったね。』
と満足そうに息をつく。
兄も、
『本当、宿泊学習以来だね。昼間プラネタリウムを見て、夜に本物の星を見に行ったの覚えてる?』
と懐かしそうに尋ねる。
まり姉は笑いながら、
『覚えてるよ!ありちゃん、昼間にはしゃぎ過ぎて夜には体力切れで半分寝てたよね。』
と振り返る。
兄も思い出したように、
『寝てるありちゃんに先生が「この星座は?」って聞いたんだよ。本人は寝ぼけて全然聞いてなかったけど。』
と笑う。
まり姉は、
『「ピザ?」「ござ?」って答えて可愛かったよね!』
と笑い出す。
ありさは、
『今の今まで忘れてたのにー!』
と頬を膨らませ、
『その時は眠くて半分夢の中だったのに、急にみんなに笑われて何が何だかわからなかったんだからね。』
と抗議する。
さらに、
『まりちゃんとあっくんが両隣にいたから安心してたのに、答えを教えてくれるどころか、「アザ」とか「インフルエンザ」とか「銀行口座」とか言い始めるんだもん!』
と言う頃には、頬はパンパンに膨らんでいた。
まり姉と兄は顔を見合わせると、それぞれありさの頬へそっと手を添え、
ぷしゅーっ。
空気を抜くように頬を押した。
ありさは吹き出しながら、
『まんま宿泊学習じゃん!!』
と笑う。
兄は優しくありさの頭を撫で、
『七年近く経った今でも、こうして同じことができる仲でいられるのが、本当に嬉しいよ。』
と微笑む。
まり姉も、
『わたしも!』
と言って、ありさと兄へ抱きついた。
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