206. 兄が見ている世界 —大晦日とお正月①—
兄がわたしへ
『ペアリング購入の記憶は見せたけど、これで満足?』
と、やれやれという気持ちを隠すことなく声を掛けてくる。
わたしは、
『わたしにも、まり姉の半分くらいの優しさが欲しいんだけど!』
と言った後、
『しかも、ただまり姉とお前がイチャついてる記憶を見せられただけじゃねぇか! 二人とも小さい頃からの顔見知りだから、ある意味いたたまれない気持ちの方が強いわ! 何が「満足?」だ!? 不満だよ!!』
と文句を返す。
兄は苦笑しながら、
『亜衣ちゃんが見たいって言ったから見せたのに……。次はどうしろと?』
『ありさが出てきてないじゃん。去年はもう会ってないの?』
と聞くと、
兄は当たり前のように『会ったよ。大晦日とお正月は、まりちゃんと三人で一緒に過ごしたよ。』
と頷いた。
わたしは、羨ましいような妬ましいような声で、
『わたしが病院のベッドで一人寂しく除夜の鐘を聞いている最中、お前らは「3・2・1!」とか言ってジャンプして空中で年を越したとか言うんじゃないだろうな!』
と八つ当たりを始める。
兄はいつもの調子で、
『俺、夜の9時くらいには寝落ちしてて、年を越す直前にまりちゃんに起こされたからしてない。ありちゃんだけ飛び跳ねてたような気がする。』
それを聞いたわたしは、
『それ面白そうじゃん! その記憶を見せてよ!』
兄は、ため息をつきながら
『はいはい。』
と返事をすると、12月31日の記憶を見せてくれた。
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今回も兄は、じいちゃんの車を借りてまり姉を迎えに行き、その後ありさを迎えに行っている。
まり姉が、
『ありちゃん、久しぶりだけど元気してた?』
と声を掛ける。
ありさは泣きそうな顔で、
『私は元気だけど、車も決めて払える分は払って、あとはローンを組んだから、財布も通帳も今瀕死の状態だよー。』
と肩を落とした。
まり姉は笑いながら、
『大阪や京都へ旅行に行くって約束してたんだから、頑張って旅費を稼ぐためにも、就職祝いを貰いに親戚回りしなきゃね。』とありさへ伝える。
ありさは、
『お兄ちゃん達も、おじいちゃんやおばあちゃんからしか貰ってないから、私もそんな期待できないよー。』
とぐったりしている。
まり姉が真顔になり、
『変なバイトはダメだから!』
するとありさは、
『し・ま・せ・ん!』
と真面目に返し、
『わたしは将来結婚する人としかそういう事しないから!』
と断言した。
まり姉は笑いながら、
『それは私もだけど、ありちゃん、おっぱいは色んな人に揉まれまくってるじゃん!』
ありさは頬を膨らませ、
『全部女の子だからセーフなの! しかも私が触らせたんじゃなくて、急に触られただけだしー!』
と言った瞬間、
ガタンッ!
車が段差を越えて大きく揺れる。
ありさが、
『ぎゃーっ!』
と悲鳴を上げ、
『あっくん、私のお尻に優しい運転してよー。後部座席ペラペラでダイレクトに衝撃がくるんだから。』
と涙目になる。
まり姉は笑いながら、
『ありちゃんのお尻なら大丈夫だって! しっかりとしたいい物持ってるんだから!』
ありさは、
『まりちゃんー!』
とジト目で抗議する。
兄が苦笑し、
『ありちゃん、ごめんね。』
『まりちゃんもありちゃんも、この辺までにしててね。今日の宿泊代は俺が出すから。』
『あっくん、ありがとー。』
と喜ぶありさ。
しかし兄は続けて、
『大阪、京都旅行は三人で割り勘ね。』
その一言で、ありさは、
『ですよねー……。』
と、がっくり肩を落とした。
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ありさが、思い出したかのように
『今日泊まるホテルって、あっくんがまりちゃんに告白したホテルなんだよね? よく大晦日に予約取れたね!』
と感心する。
兄は、
『本当は、まりちゃんとありちゃんで一部屋、俺一人で一部屋予約したかったんだけど、部屋が空いてなくて三人で一部屋になったんだよね。』
ありさは、
『私は全然いいよ。小学生の頃は一緒に昼寝やお風呂も入った仲だし。
あーでも、夜中に二人でイチャイチャしないでよね。流石の私でもその場には居たくないよ。』
まり姉は、
『高校卒業するまでは、お互いそういう事はしないから! 私の親とも約束してるし!』
するとありさは呆れたように、
『クリスマスイブに告白してホテル泊まって……? 殊勝なことですこと。』
まり姉も負けじと、
『ありちゃんだって結婚する人としかしないんでしょ!』
ありさは肩をすくめ、
『だって将来結婚する前提で付き合ってて、両方の保護者も了承してるじゃん。』
まり姉が、
『だから、卒業までは……』
と言い切る前に、
ありさがニヤリと笑い、
『卒業後はーって聞こえるのは、私の気のせいなのかなー。』
その一言で、まり姉は顔を真っ赤に染める。
兄は苦笑しながら車をコンビニの駐車場に停めた。
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