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205. 兄が見ている世界 —ペアリング購入⑤—

まり姉が、

『そろそろ帰ろうか。』

と言い、


兄は

『うん。』

と頷き、車を走らせた。


お店を出る際に精算機で駐車場料金を支払い、そのまま駐車場を後にする。


運転中、まり姉が優しい口調ながらも少し圧を込めて、

『ねぇ、あっくん。あの写真とかスキャンデータって、誰が送ってくれたの?』

と尋ねた。


兄は上機嫌なまま、

『詮索しないって約束したよね? もしこれ以上詮索したら、まりちゃんの素晴らしさについて布教活動することになっちゃうよ。』

と言った。


その直後、

『いや……これ、本当にいいかも?

でも俺だけの宝物にしたいし……』

と真剣に悩み始める。


まり姉は、

『変なこと考えなくていいから、運転に集中しろ!』

とツッコむ。


しかし兄は、

『この写真をTシャツにプリントしてもらおうかな。

漫画のキャラでもいいし、ポエムの一文だけでもいいよね。』

『俺だけだと、ありちゃんも欲しがるだろうから二着ずつ作るとして……

いや、町内全部に配っても……』

と言ったあと、


『まりちゃん、運転代わって!

俺、やりたいことが出来た。』

と言い始めた。


まり姉は慌てて、

『ごめん! ごめん!

もう詮索しない! 詮索しないから!!

変なこと考えないで!

私、まだ仮免しか取ってないし、免許証も持ってきてないから運転できないから!』

と言う。


わたしは思う。

コイツ、本気でヤバいぞ。

そこそこお金も持ってそうだし、本気になればTシャツを作って町内中へ配るくらい本当にやりかねない。


着る物に全くこだわらないじいちゃんなんて、少なくとも服が伸びるまで着続けるだろうし……


下手をしたら、町内のおじいちゃん、おばあちゃん全員がまり姉Tシャツを着る未来すらあり得る。


……あ。

それはそれで、ちょっと面白いかも。


兄は少しつまらなそうな表情で運転を続けている。


まり姉が頬を膨らませ、

『私はずっと、あっくんの隣にいるんだから、そんなつまんない顔しないでよ。』

と言うと、


兄は信号待ちで車を止め、優しく笑って、

『まりちゃん、ありがとう。

世界一愛してるよ。』

と言いながら、まり姉の頬をそっと撫でた。


まり姉も微笑み、

『私も世界一愛してる。』

と言って、兄の頬へ軽くキスをする。


……あー。

わたしは一体、何を見せつけられてるんだろう。

カップル……

いや、身内がイチャつく姿を延々と見せられる、わたしの身にもなってくれよ。

そう思っているうちに信号が青へ変わり、兄は再び車を走らせた。


まり姉は幸せそうな表情のまま、購入したシェイクを少しずつ飲み続ける。

やがて三つとも飲み干した頃には、今度はモジモジし始めた。


兄は一瞬まり姉へ視線を向けると、近くのコンビニへ車を入れ、

『まりちゃん、少し休憩しようか。』

と言った。


まり姉は、

『うん。』

と頷き、車を降りてトイレへ向かう。


兄もトイレを借りたあと、ブラックコーヒーと、まり姉用に少し苦めのカフェオレを購入する。


ちょうど会計を終えた頃、まり姉と合流した。


まり姉は飲み物を受け取ると、

『あっくん、ありがとう。さあ、もうすぐ家だよ!

到着するまで、気を引き締めて帰ろうね。』

と笑顔で言う。


兄も頷き、二人は再び車へ乗り込み、自宅へ向かった。

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